コツ、コツ、とヒールの歩く音がいつも以上に耳に響いてきます。
きっと、私自身、自分の体の状態を一番よくわかっているからこそなのだと思います。
。。恥ずかしい。
顔を上げて歩けません。周りには、楽しそうに歩きながら会話をしているカップルや夫婦がたくさんいます。
なのに、私といったら、、
変態な格好を自ら望んでしながら、ご主人様に監視されながら、1人で歩かされているのです。
歩く時間自体はそんなに長くありませんでした。時間にして10分少々。ですが、私には30分にも、1時間にも感じました。
指定され、到着した場所はホテルでした。
当然、ビジネスホテルではありません。性行為を目的に男女が入っていく、ラブホテルです。
ホテル内に入ると、すぐにご主人様も続けて入ってきました。
「よくがんばったね、えらいよ」
やっぱり変態的なことをなさる方とは思えない、そんな言葉と態度で、ご主人様は私をそっと抱き寄せてくださいました。
初めて感じるご主人様のぬくもり。
身長が180cmほどもあるご主人様にハグをされると、幸福感で身体中が満たされていきました。
あぁ、このぬくもり、、素敵、、ずっとこのままがいいのに、、
私たちは受付を済ませ、エレベーターで6階の部屋へ向かいました。
部屋まで向かうこの緊張感が、私の中の被虐感をより一層強くします。
「緊張しているの?」
エレベーターという密室で、しかも近距離で、囁くようにそう言われた私はうなづくしかありませんでした。
「言葉で言わないとダメだよ」
うなづくだけではなく、言葉を発声してこそ、私の頭の中も被虐感で満たそうとご主人様は思われたのだと思います。
「、、はい、緊張しています」
弱々しく、そう答えました。
「部屋に入ったら、薫さんのことは、薫「さん」とは呼ばないよ。ご主人様と奴隷の関係になるのだから呼び捨てにするよ、いいね?」
部屋に入室したらもう逃げ場はない。
目の前にいる男性は、肉体的にも精神的にも私の「ご主人様」となられる。
一方、私は、自分で何も決定することが許されない、行動はもちろん、思考さえも矯正、躾をされる奴隷に成り下がる。
そんな関係に強制的にさせられるのです。
でも、、
そんな関係にドキドキしている自分がいました。
そんな関係にとてつもない興奮を覚える自分がいました。
「はい、、よろしくお願いします」
そう答えるしかありませんでした。
(続く)
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