しばらくして、私は営業部に呼び出された。
「君たち、お手柄だよ」
「こわもて」で評判の部長に褒められた。
彼女のおかげで、痴漢男の会社と、大口の契約が決まったらしい。
その後、会社から金一封を貰ったので、お世話になった法務部の人も呼んで、祝杯をあげた。
もちろん金一封は、私への口封じでもある。
私は事件の事を、二度と話さなくなった。
後になって、痴漢と営業部の人が不倫関係にある事を、本人が打ち明けてきた。
元々、高校時代に交際していたらしく、同級生だった親友に、カレを略奪されたらしい。
元カレを取り返す事は出来ないけれど、捨てた男の弱味につけこみ、関係を迫った彼女が、とてもたくましく思えた。
「清濁を併せ飲む」と言う格言を、初めて教わった私は、オトコの扱い方に興味を持った。
それまで単なる異性としか思っていたし、つまらない恋愛感情に流されていた自分が「子供」だったと思った。
「使えるオトコ」探しに、苦手だった合コンにも、積極的に参加するようになった。
そして、色んな人と付き合う過程で「使える男」探しが「仕える男」作りに変わって行った。
hunt①完
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