「ママ、どうしたんだろ?」
サトコ(仮名)が独り言を呟いた。
どうやら気づいていないらしい。
彼女にとって、女の客は厄介者。
恐らく同居しているサトコにしても、邪魔者にしか思っていないのだろう。
仕事で忙しい夫の寵愛を受けられる時間は短いし、夫婦でSMをしているのも、夫の愛情を自分の肉体に刻み込みたいのだろう。
養母という仮面を、我慢して被っているM女。
健気なオンナに育てたSの旦那の人柄もわかる。
「パパって、優しい人でしょ?」
と、サトコに訊いた。
サトコは私の問いに、戸惑いを見せたが、
「確かに厳しい人だけど、優しい人だと思います」
と答えた。
サトコが養父に恋をしているのも覚った。
初めは、他人の自分を養って貰った恩返しか、親孝行のつもりで、SMの道に入ったのだろう。
歪な家族ゴッコも興味深い。
サトコの部屋で、一緒のベッドに入って、家族の話を語り合う。
壮絶な人生を送ってきたサトコの身の上話は、ドラマチックで興味深い。
笑って、泣いて、いつの間にか寝ていた。
翌日、目が覚めると、二人でシャワーを浴びに浴室へ行った。
まるで旅館の大浴場みたいに広い風呂場に、朝の陽射しが差し込み、幻想的な景色に見えた。
サトコの白い肌に、シャワーの水しぶきが跳び跳ねると、美しい芸術作品でも見ている気分になった。
脱衣所で襦袢を羽織り廊下へ出ると、
養父の秘書らしき男性と会った。
「おはようございます」
と笑顔で挨拶をするが、相手は私達の姿を見て、戸惑っているみたいだった。
サトコも私も、下着姿。
しかも襦袢の薄い布地からは、身体が透けて丸見えになっていた。
我ながら大胆な姿を、ヨソの家で披露したけど、そんな自分に興奮を覚えていた。
家の中は、浮世離れしている私達と違って、緊迫していた中東情勢に、殺気立った雰囲気になっていた。
休日だと言うのに、朝から色んな人が訪れては、深刻な会話が廊下の方から聞こえて来た。
私達は、サトコの部屋で養母と三人で着物を選んでいた。
お互いに似合いそうな着物をあてながら、下着姿で旦那が来るのを待っていたが、忙しそうだったので、着付けを始めた。
サトコは成人式で着た振り袖を着て、私達は少し派手目な留め袖を着てみた。
年長者の養母に髪とメイクを仕上げてもらい、朝食をとりに広間へ行くと、私達の姿を見た訪問者達から驚きの声が漏れた。
「キレイ」
と言う言葉が心地よくて、気分も良くなった。
養父も私達が、お客に誉められている様子を見て、ご満悦の様子だった。
食事を終えた私達は、仕事の邪魔になりそうなので、外出する事にした。
この日は成人の日。
晴れ着姿の女三人で、私のクルマに乗り込み、私が運転して、屋敷を出た。
養母も今日は、昨夜と一転して、私達の前で大人の振る舞いを見せていた。
近くの成人式会場で、看板の前に立って記念撮影していると、新成人の男の子達にナンパされた。
つづく
※元投稿はこちら >>