会社を早引けした私は、一旦家に戻って荷物をまとめた。
クルマで1時間ほどかけて病院に着いた。
週明けのせいか、午後の外来には、マスクを着用した患者が多くいた。
入口で手を殺菌して、面会受付をしてから彼の病室へ行った。
ちょうど、彼の仕事関係の人が面会に来ていて、奥さんが相手をしていたから、私が子供の相手をしてあげた。
子供から大人まで100%マスクを着用している院内は、ニュースで見ていた外国みたいに感じた。
部屋に戻り、ベッドのカーテンを閉めると、子供のマスクを外した。
お父さんに甘える子供の姿が、何とも可愛らしい。
幸せそうな家族の時間は、面会時間終了のアナウンスで終った。
私達が帰るのを、ベッドで見送る彼は、涙ぐんでいるように見えた。
彼の表情に私はキュンとした。
マスクを外して病院のゴミ箱に捨てると、外の新鮮な空気が気持ち良かった。
車内で彼女から、子連れで面会できなくなる事を聞かされた。
子供と患者の安全を考えた感染予防らしいが、何だか切ない気分になった。
買い物に入ったスーパーで、半額になった見切り品を買い込んだ。
子供に食玩を買ってあげたら、凄く喜んでくれた。
安価な物で手懐けられる子供は、可愛いと思った。
玄関で、除菌スプレーを全身に振り掛けて、浴室へ向かった。
ウイルスを室内に入れないよう、3人で服を脱いで、シャワーを浴びた。
お尻の方で違和感を感じた瞬間、アソコからタンポンが抜けた。
「ひぃ!」
私が思わず悲鳴をあげて振り向くと、子供が私のタンポンの紐を持って、驚いていた。
「ごめんなさい」
すぐに母親が反応した。
「大丈夫」
って、私は答えたけど、経血に染まったタンポンを見た彼女の息子は、ショックだったらしい。
私でも、初めてタンポンを使った時は、自分のでも驚いた。
私は急いでトイレの汚物入れに、タンポンを捨てに行き、戻って彼の手を洗った。
「大丈夫?」
子供に心配された(笑)
すぐに弟の事を思い出した。
弟も血を見るのが苦手で、生理になると、いつも以上に私に気を遣っていた。
彼の母親はオロオロしてたけど、私が笑ってるのを見て、安心したみたいだった。
二人が先に出て行った後、私は指を使ってお湯で洗い流した。
古い胎盤の破片が、血に混じって排水口へ流れて行く。
浴室を出て、身体を拭いてから、新しいタンポンを挿入して、バスローブを羽織った。
浴室を洗い流してから出ると、半額で買ったお弁当を温めた匂いがした。
彼女が夕食の支度をしていたら、子供が
「ごめんなさい。痛くない?」
「りなちゃんも入院するの?」
と心配そうな顔で言われた。
どうやら、私がケガをしたと思ってるらしい。
なんとか説明しようと考えたが、男の子に上手く説明する言葉が浮かばず、
「大丈夫だから、心配しないで」
と言うしかなかった。
とんだハプニングになったけど、重苦しい空気だけは払拭できた。
つづく
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