先輩に連れて行かれた先は、別棟の洗濯室。
深夜だと言うのに明かりが灯っていた。
中に入ると、OGと三年生がいて、あの男子が一人で洗濯をしていた。
何かと思って見ていたら、男子が女子の下着を洗っていた。
「え?」
私達二年生は、思わず声を漏らした。
合宿で下着を洗濯するのは、一年生の仕事だったはず。
一番短気なユキ(仮名)が、
「何してるの!?」
と、喧嘩腰に男子に詰めよった。
ジャージ姿の男子は驚いた顔で振り返ると、私達を見て顔を背けた。
ユキが掴み掛かろうとした瞬間、
「やめなさい」
とOGに諌められた。
一番恐かった先輩だった。
卒業後、ケバいメイクをするようになって、以前にも増して迫力のある彼女に、私達は一瞬で凍りついた。
「文句があるなら、私に言いなさい」
と、凄みのある声で睨まれて、ユキもひるんだ。
「どうして、男子にこんな事を?」
雑用する彼を嫌がり、最初から警察へ突き出すように訴えていたミナ(仮名)が、震えながら先輩に訊ねた。
スポーツブラとは言え、男子に触られるのは、生理的に気持ち悪かった。
私も先輩に詰め寄った。
先輩は、
「一年生にも練習や休息が必要だから」
と言ったが、OGは、
「面白いから」
と笑いながら吐き捨てた。
「納得できません」
ユキは男子を睨み付けながら、先輩に反抗した。
「いくら何でも、これは酷いです」
と私も言った。
先輩達は、興奮している私達を、嘲るように笑っていた。
するとOGの一人が、スカートの中に手を入れてパンツを脱ぐと、男子の顔に擦り付けて、
「私のも洗いなさい」
と男子に命令した。
他のOGも、次々にパンツを脱ぎ捨て、それを男子に拾わせていた。
(何なの?これ)
唖然として、目の前の出来事が理解できなくなった。
「これも雑用係の仕事よ」
躊躇いもなく言い捨てる三年生に、私達は何も言えなくなった。
(狂ってる)
私以外の二年生も思っていたはず。
それなのに、私達は何も言えなくなっていた。
先輩達が恐かったのもあるが、状況が理解できず、何を止めさせたいのかさえ分からなくなった。
黙々と洗濯を続ける男子に、OGが声をかけた。
「アンタも脱いで、汚れた服を全部洗いなさい」
男子の作業する手が止まった。
一瞬にして、緊張感が張り詰めた。
男子は、振り向くと、私の顔を悲しそうに見つめて来た。
(なんで私を?)
と思っていると、彼は着ていたジャージを脱ぎ始めた。
「いや、バカ、ヘンタイ、」
みんなは、手で顔を覆ったが、身の危険を感じていた私は、彼から目を離さなかった。
異性として意識していなかった事もあるし、覗き魔で盗撮犯の男子に狼狽えたりしたくない意地があった。
ジャージの下には、白いブリーフパンツ。
男子は隠すように手を添えながら、片手で器用に脱ぐと、先輩のパンツを投入した洗濯機に投げ入れた。
OGは奇声をあげ、二年生は悲鳴をあげていた。
騒音が響く中で、彼は小さな声で私に、
「見ないで、」
と囁いた。
好きでもない男子の言葉に、思わず「キュン」としてしまった。
つづく
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