今回、お目当てのプレイを見終えた私は、混雑を避けて露天風呂へ向かった。
二日目から参加している人もいて、今夜は個室もザコ寝するほど混んでいた。
「こんばんは」
知り合いがいないか声をかけてお湯に入ると、初日に一緒だった女の子が、一人で入浴していた。
「こんばんは」
と挨拶を返した彼女は、黙ったまま、私に何かを言いたそう。
「昨夜は、どうだった?」
と訊いても黙ったままなので、私はそれ以上何も言わなかったら、彼女から話かけてきた。
「りなさんは、平気なんですか?」
と訊かれた。
私にとってSMは、性癖であり、ライフワークみたいな物だし、面白いと思っていたから、彼女の問いに何て答えたら良いか分からなかった。
22歳で10数人と関係してきて、自分が何をしたいのか、分からないと言う。
本人の分からない物を、私が知る訳もないし、相談したいみたいだから、私は二人きりになれる場所を探した。
「明日、私と一緒に帰る?」
と訊いたら、居候している夫婦に相談すると言われ、彼女は先に風呂を出て行った。
悩んでいるみたいだし、深刻な相談じゃない事を祈った。
彼女のせいで、長風呂になってしまった私が、ノボセたままザコ寝部屋に戻ると彼女がいた。
「遅かったんですね」
自己中のMらしいイヤミに、イラッとした。
無自覚かも知れないが、彼女は真性のMだと覚った。
「あ、ごめんね」
「待たせちゃったみたいね」
苛立ちを抑えて、敢えて優しく振る舞うと、
「なんで、謝るんですか」
と私に彼女は食い下がってきた。
(ヤバイ)
と、私は焦った。
「りなさんは自分で、謝らない女だって、言ってたじゃないですか!」
挑発するように喧嘩を売って来るので、私はそれ以上謝らなかった。
「だから私、女って苦手なんですよ」
と言う彼女に、
(それは、お互い様)
って思った。
「で、御主人様(彼女が居候している家の夫婦)は、私と帰る事を許可してくれたの?」
と訊いてみた。
「私の好きにしても良い、って言われました」
と彼女は答えた。
私はスグに、夫婦が面倒臭い彼女を、厄介払いしたがっている事を覚った。
彼女を納会に連れてきた意図も、他人に連れて来させた意図も、全て仕組まれた事だと覚った。
私は、完全に油断していたらしい。
いま、彼女を冷たく突き放しても、却って逆効果だし、逃げてストーカーに化けられても、困った事になるだけだった。
仕方なく、私は彼女に付き合ってあげる事にした。
幸いお兄ちゃんは、他でM女を楽しんでいたし、戻って来なければ、修羅場になる事はない、と思った。
彼女も、今夜は部屋(個室)に戻らなくて良いと言われていて、私達は同じ布団で寝る事になった。
女の姿をしていても、MはM。
私は自分の中に湧いてきた不思議な気持ちを、必死に抑えていた。
調教師としてのプライド(矜持)もあった。
私は、寝る前に彼女と一緒に行動した。
お兄ちゃんがプレイを楽しんでいる部屋へ行き、部屋へ戻らないように耳打ちすると、彼女がヤキモチを妬いているのが伝わってきた。
一緒に歯を磨いて、一緒にオシッコも済ませてザコ寝部屋へ戻ると、彼女は人前で服を脱いで、私より先に布団に入ってしまった。
「お姉ちゃん、早く来て」
スッピンの顔で甘えて来る彼女に、危機感を覚えながら、私も布団に入った。
消灯前のザコ寝部屋は、発情した参加者の呻き声や喘ぎ声が漂い、部屋の外からは時おり、男女とも知れない悲鳴も聞こえてきた。
前日、お兄ちゃんとセックスしていたので、私は気にならなかったが、彼女は声に触発されたらしく、火照った身体を私に押し付けてきた。
寝間着の布越しにも、彼女の体温が伝わってきた。
私が寝たふりをしたら、彼女の手が忍び寄って来て、ナイトブラに包まれた私のオッパイを触り始めた。
男の前では、あれほど緊張していた彼女が、大胆に甘えて来た。
「もしかして、男の人が苦手?」
って訊いたら、
「男の人は大好きですよ」
「でも私、女の人も大好きなんです」
と話した彼女は、私の手を掴んで、自分の乳房を触らせた。
気のせいか、母乳も出ないはずのオッパイが、熱くなっているように感じた。
(ダメよ)
と拒みたかったが、却って逆効果になると思い、私は我慢して彼女な挑発に付き合ってあげた。
「お姉ちゃん、気持ち良い」
と喘ぐ彼女の息が胸元を撫でてきた。
パンケーキのように甘い香りを漂わせる彼女の息に、私の女としての理性が揺らいだ。
つづく
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