ご主人様がお帰りになりません。
もう一週間になります。
今回は与えられた生活費も使い果たしてしまいました。
キャッシュカードもクレジットカードもご主人様がお持ちなので
私も夫も何も買うことが出来ません。
三日間、家では水道水だけでしのいでいるのです。
私は犬です。
空腹に耐えかねて会社でお弁当を恵んでもらいました。
「またご主人様は雲隠れかい?」
今まで何度か同じことがあり、社長が社員に声を掛けてくれました。
みんなもう慣れっこで、私が犬になるのを面白がります。
余ったご飯やおかずを床に放り投げられ、それをいただくのですが、
すぐには食べられません。
全裸で四つん這いに伏せ、あるいはお座りのポーズをします。
「お手」「お回り」「ちんちん」と一人一人に命じられるまま芸をします。
私ははぁはぁ舌を出し、お尻を振り、ワンワンと啼き声を出して、媚びます。
恵んでいただくのですから相手に喜んでもらわなければなりません。
「よしっ」と言っていただいてやっと食べられるのです。
しかも床に落ちた食べかけの卵焼き、調味料にまみれたグチャグチャのご飯、
クチャクチャに噛んだ筋だけのお肉。
好き嫌いは許されません。
犬ですから手は使わず、舌で床を舐めるようにすくい取りガツガツ食べました。
筒井様がドンブリとかご馳走なんて言うものですからまた空腹感増します。
今日もご主人様が戻らなければ明日も犬にならなければなりません。
人間を辞めています。
せめてSMクラブでアルバイト出来ればいいのですが。
アルバイト料は全部取られてしまいますが、少なくともクラブのスタッフルーム
にはお菓子があるのでそれを食べることが出来ます。
ロングプレイのお客さんに当たれば出前を取ってくれる人もいます。
だけど、わたしの方から勤務を希望することは出来ないのです。
それより何よりお店に行く電車賃すら無いのです。
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