先日の続きです。
約束の日‥待ち合わせた場所に向かう電車の中‥自分の中で葛藤します。
でも結局,誘惑に負けてしまったのです。
待ち合わせ場所‥男は待っていました。主人を待つ飼い犬の様にただジッと待っています。
私の容姿等は何も教えていません。
声さえも知らないはずです。
しばらく離れたところから観察してから,意を決して男の前に姿を表しました。
「待たせたかしら?」声を掛けると,
振り向いた顔に驚きと喜びの色が見えました。
「‥美由紀様ですね。半ば諦めていました‥ありがとうございます。」
演技なのか,おどおどとした態度にメールでのやりとりが現実身を感じます。
そして,自分に言い聞かせます。
敬語はダメ‥私はこの男の女主人‥コイツは私に仕えるブタ‥
「どこに行くの!?」「姫様に‥できれば二人きりになれる場所に‥」
「案内しなさい!」
「はい‥あの‥」
「任せるわ。でも約束を破ったら即帰るからね。」
「はい‥もちろん‥でも私もこの辺りは不慣れなもので‥すみません。」
「使えないわね。失格よ。帰るわ。」
男に背を向けると,すがりついてくるのでした。
「申し訳ありません。ちゃんと調べておくべきでした。どうか‥」
ここへ向かう電車の中からも何件ものホテルが見えたのを,男の目には映っていなかったのでしょう。
「どうか‥」
立ち止まり,目を合わせようとしない私に懇願するのでした。
「まったく‥人に聞いてでも探してきなさい。5分だけ待つから。今,27分よ。32分になったら帰るわ。」
「はい‥あの‥」
時計を見ながら走って行く姿に誠実さが感じられたのでした。
待っている間,先ほどまでの不安はもうありませんでした。これからの淫靡な一時を考えると待ち遠しくさえ思えてきます。
時計を見ると既に約束の時間は過ぎていました。
遅いわね‥
離れて男がどんな挙動を見せるのか,見る事にしたのです。面したコーヒーショップで場所が見える窓際の席に座った時,男がシャワーでも浴びた様にシャツを汗で濡らして走ってきました。
辺りを見渡し,時計を見ます。
肩を落として何度も携帯電話を見ながら,また辺りを見回すのでした。
(遅いわよ!失格ね!)
意地悪くメールを送ります。
(申し訳ありません。もうダメでしょうか‥)
(スタ〇よ。遅いから‥飲み終わるまで待ってなさい!)
こちらを振り向き,何度も頭を下げるのでした。
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