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1

HUNT①

投稿者: ◆0jVt1ao7Gw
削除依頼
2020/11/20 06:06:58 (91nUG6ju)
それはまだ、私が新入社員だった頃の話。

連日、上司のパワハラやセクハラにイライラしていて、怒りの捌け口を探していた時、朝の満員電車でお尻に違和感を感じた。

(また痴漢?)
と思って、途中駅で乗客が乗り降りした時に顔を確認すると、背後にいた男は、痴漢なんてしそうもないイケメンだった。

(勘違いかも知れない)
と思い、再び扉が閉じても、私は元の場所に立ったら、同じ男が背後に立って、私の背中に身体を押し付けてきた。

(苦しい、押すんじゃねぇよ、)
と思いつつ、満員電車だからと、我慢した。

次の日、いつもの扉から乗車すると、同じ男が背後に立った。

(偶然じゃない)
と確信した私は、開かない方の扉の前に立ち、外を眺めていたら、男のカバンを持つ手が、私のお尻をグリグリしてきた。

(痛ぇな!)
と私が思ったのを察したのか、男は反対側の手でお尻を触り始めた。

(間違いない)
と思ったが、朝から痴漢騒ぎで会社に遅れたら、上司に叱られると思い、我慢した。

次の日も、次の日も、痴漢男は、私の背後に立って、どんどん大胆に触ってくるようになった。

キモいオヤジなら、初日に駅員に突き出すところだったけど、私も仕事のストレスで、欲求不満が溜まっていたので、ちょうど良い【マッサージ】と割り切る事にした。

男の指がスカートの上から、私のパンティを確かめるように這うようになると、私も興奮してきて、声を我慢するのも苦しくなった。

興奮した男の鼻息が私の首筋を撫でて行くと、背中が痺れた。

その日、私はパワハラ上司を、会社に告発した。

同じようにセクハラを受けていた先輩と一緒に、法務部の担当のところへ出向き、専務にも事情を話した。

その日上司は、役員に呼び出されたまま、帰ってくる事はなかった。

長年、セクハラに悩んでいた先輩は、付き添った私に泣きながら「ありがとう」と言い、私も気分が晴れた。

次の日も、あの痴漢が私の背後に立ったが、彼の「指使い」は、気持ちよくなくなっていた。

(そろそろ潮時かも?)
と思ったが、駅員や警察に突き出すのはやめた。

男のネックストラップに吊るされた社員証は、大手商社のものだった。


つづく
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2
投稿者:達也
2020/11/20 21:46:11    (j2IZ53yQ)
クソビッチ
3
投稿者: ◆0jVt1ao7Gw
2020/11/21 09:34:29    (O1RJZVkv)
つづき

その日から会社に上司が来なくなったので、私は痴漢男の会社に電話をかけた。

「○○鉄道の○○ですが、」
と切り出すと、すんなり取りついで貰えた。

「はい、○○ですが?」
と電話に出た男に、
「私、毎日○○鉄道車内で、アナタに痴漢されてる者ですが、」
と言うと、男は電話口で慌てた様子で、
「どうして、電話番号を?」
と聞いてきた。
「それは、どうでも良いんですけど、来週も同じ電車を利用するなら、お話したい事があるので、月曜日に、いつもの車両でお待ちしてますね(笑)」
と言うと、
「月曜日は会議だから、」
と言うので、
「おみえにならなかったら、私の方から会社に伺いますが?(笑)」
と言うと、
「何が目的だ!」
「カネか?」
と聞いて来たので、
「それは、貴方の良心におまかせします」
と言った。
私は、お金の話を、わざとはぐらかした。

男が電話口で、「うーん、うーん」と唸りながら狼狽えていたので、
「でしたら、こちらも火曜日にお待ちしてますから、間違いなく来てくださいね?(笑)」
と言うと、私は一方的に電話を切った。

その日は、花の金曜日。

代理の上司が、簡単な挨拶をしただけだったから、職場も平和なムードになった(笑)

(パワハラ上司が辞めるかも?)
なんて噂も、社内に流れていた。

そして終業後、法務部の担当者と一緒に、面談の名目で私達と飲み会をする事になった。

一次会は全員で、二次会は男女別で、セクハラについて、飲みながら話をしてたら、私も酔って口が滑って、痴漢男の話を洩らしてしまった。

「それって、大問題じゃない!」
「もっと詳しく聞かせなさい!」
と、先輩達に迫られた。

秘密にしておく理由も無かったので、経緯を話していたら、法務部の人が、
「どんな風に触られたの?」」
と訊いて来たので、再現するためにカラオケに行った。


※更に続くぞ(笑)
4
投稿者: ◆0jVt1ao7Gw
2020/11/22 18:03:37    (hiFhltz8)
続き(笑)

三次会のカラオケに行ったら、他部署の人も合流して、人数も10人ぐらいになった。

酔っ払ったOLの集団は、かなりパワフル(笑)

早速、大騒ぎになった。

「皆さん、お静かに、これから本題に入ります」
と法務部の人がマイクで騒ぎを鎮めた。

この集まりの主旨は、セクハラ対処法で、社内でどんなハラスメントを受けたか、皆でディスカッションする事になっていた。

トップは私達で、上司からのパワハラとセクハラについて発表。

共感は得たけど、盛り上がりに欠けていたので、私の痴漢体験を話した。

話だけでは分かりにくいという事で、先輩に被害者役をしてもらい、私は痴漢役で再現劇を演じる事になった。
(初プレゼン)(笑)

私が車内での状況を説明しながら、先輩のお尻を撫で回していたら、皆は黙って注目するので、私は緊張した。

「お尻を撫でただけですか?」
と質問され、
「いいえ、男は私のお尻にアレを押し付けてきました」
と答え、先輩のお尻に持っていたマイクを押し当てると、先輩が
「あん、」
と声をあげたので、室内の空気が変わった。

私のスイッチも入った。

「このように男は、ドアに押し付けた私のお尻のワレメに、硬くなったアレを擦り付けてきました」

視線が私の手元や先輩のお尻に集まり、変な気分になった。

「はぁはぁ、」
と先輩の喘ぐ声が洩れると、息をのむ声も聞こえてきた。

「もうムリぃ、」
被害者役の先輩が、ねをあげた。

彼女の情けない声で場が和み、
「私も経験ある」
「私はアレを見せられた」
「私はオッパイを揉まれた」
「精液をかけられた」
などなど、口々に体験談が飛び交った。

法務部の人から護身術を教えて貰って解散した。

帰りは終電近くになり、同じ方向に帰る事になった。

「え?この電車で通ってるの?」
と他部署の人に言われ、相手の事を聞かれた。

イケメンと答えたら、
「顔が見たい!」
と言うので、週明けの月曜日に、駅で待ち合わせをする事になった。

いつもの車両をホームから見て、
「あの人です」
と指を差すと、
「ホント、イケメンだねぇ」
と同意して貰えた。

「明日、話をするんだよね?」
「私も付き添う?」
と言われ、一人では不安だったので
「助かります」
と申し出を受けた。


つづく
5
投稿者: ◆0jVt1ao7Gw
2020/11/23 13:46:18    (zp0LPFGt)
待ちに待った火曜日の朝。

いつもより気合いを入れた身支度を整えて家を出て、駅に向かった。

今日は心強い援軍もいる。

痴漢男に報復する準備は万端だった。

駅で待ち合わせをしていた会社の人と会って、目的の電車に乗り込もうとしたら、痴漢男の方が降りてきた。

想定外の行動に、一瞬戸惑っていたが、私は平静を装って、
「おはようございます、早速ですが、お話はよろしいですか?」
と笑顔で応じた。

「こちらは、私の会社の、」
と同伴していた人を紹介しようとしたら、男の口から
「○○じゃないか?」
と驚いた表情で男は彼女の名前を呼んだ。

彼女も驚いた表情で、
「達也(仮名)くん?」
と聞き返した。

私も驚いて、
「もしかして、二人は知り合いだった?」と訊ねた。

さっきまでの緊張や、私が考えた痴漢男をやっつけるプランが、全部吹き飛んだ。

男は彼女の高校時代の同級生で、彼の奥さんは彼女の親友だった。
(結婚してたんだ)
と、少し残念な気持ちで私のお尻を触っていた手を見たら、結婚指輪が見えた。

(マジで修羅場じゃないか)
と思っていたら、彼女が男の頬を平手打ちした。

「どういうつもりよ!」
と怒鳴り付け、ホームにいた全員が二人に注目した。

(ドラマじゃないんだから、ビンタは無いだろ?)
と思い、その場に居たたまれなくなった私は、ホームの端に二人を連れて行った。

でも、(いくら親友の旦那だからって、元同級生を叩くか?)という疑問が湧いた。

愕然としている男と、感情的に錯乱している彼女の間で、何とか話を戻そうとしていたら、彼女から、
「ごめん、この件は、私に預けて貰えないかな?」
と言われた。

彼女の気迫に圧倒され、思わず私は頷いて、
「はい、お願いします」
と答えてしまった。

次の電車を待つ間、私が二人と距離を置いていたら、痴漢が彼女に
「オマエはかわらないな」
と言い、
「アナタは随分と変わったわね」
と言っていた。

(月曜日に下見した時は、彼女も全然気づいていない様子だった)
(エライ事に彼女を巻き込んだ)
と思っていたら、
「アナタは総務部よね?」
「遅刻は査定に響くから、先に行きなさい」
と言われ、
「私の上司には、午前中は外回りに行く、って伝えておいて」
と言われた。

目の前に女性専用の車両が停まり、私は駅で二人に見送られて、会社に向かった。

この時間、2000人ぐらいの乗客をのせた電車が、5分間隔で走っているから、あの男に私が痴漢されるのも、二人が何年も通勤している電車で会わなかったのも偶然だと思うけど、二人が私を通じて再会したのは、運命だと思った。
6
投稿者: ◆0jVt1ao7Gw
2020/11/25 10:36:09    (nw/9Mlk6)
しばらくして、私は営業部に呼び出された。

「君たち、お手柄だよ」

「こわもて」で評判の部長に褒められた。

彼女のおかげで、痴漢男の会社と、大口の契約が決まったらしい。

その後、会社から金一封を貰ったので、お世話になった法務部の人も呼んで、祝杯をあげた。

もちろん金一封は、私への口封じでもある。

私は事件の事を、二度と話さなくなった。

後になって、痴漢と営業部の人が不倫関係にある事を、本人が打ち明けてきた。

元々、高校時代に交際していたらしく、同級生だった親友に、カレを略奪されたらしい。

元カレを取り返す事は出来ないけれど、捨てた男の弱味につけこみ、関係を迫った彼女が、とてもたくましく思えた。

「清濁を併せ飲む」と言う格言を、初めて教わった私は、オトコの扱い方に興味を持った。

それまで単なる異性としか思っていたし、つまらない恋愛感情に流されていた自分が「子供」だったと思った。

「使えるオトコ」探しに、苦手だった合コンにも、積極的に参加するようになった。

そして、色んな人と付き合う過程で「使える男」探しが「仕える男」作りに変わって行った。


hunt①完
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