「空き巣に入られたのに、何も盗まれていない。」
数日前からそんな噂が流れ始め、当然貴女の耳にも届いていた。
何も取られていないのならなぜ空き巣だとわかるのか不思議に思っていたが、目の当たりにすると否が応でも納得することになる。
確かに締めたはずの鍵が開いていた。
洗い物は全て片づけたはずなのにシンクにグラスが置かれている。
隠す気のなさそうな、私物の場所の変化。
さらには、節約の為と洗濯用に溜めておいた昨夜の残り湯が一滴残らずなくなっている。
奇妙な空き巣。
これが空き巣に入られたのに、何も盗まれていない…ということなのか、と。
しかしそれはその日だけでは終わらなかった。
相変わらず何も盗まれていない。
強いて言うなら無断使用。
どこの誰かもわからない空き巣が、貴女の家に堂々と入り込み、普段から使用する貴女の私物を勝手に使っている。
そしてそれを知らせるように、何一つ隠さないでそのままにしていく。
管理会社…?警察…?誰かに相談するかと当然考えるも。
被害は…?鍵の交換だけで本当に対策になるのか…?
私物が自由にされるということは、覗かれている、聞かれている、知られているのと同義。
下手な行動で刺激すれば、空き巣の逆上させる可能性も。
あらゆる思考が脳内を巡り、結果行動できずにいる中。
徐々に違う感覚が芽生え始める。
空き巣が自分に執着する理由。
直接的な被害を与えてくるわけではない…。
使うだけ…。
無断使用のグラス…残り湯…、少し開いたランジェリーボックス。
時には、ごみ箱の中に明らかに生臭い液体が注がれたティッシュペーパーが捨てられていることも。
空き巣は自分に興奮しているのか…?
怖さよりも空き巣の心理、行動が気に始める貴女。
同時に湧き上がる少しの興奮…。
そして堪らなくなってしまった貴女は、夜な夜な自らの指先で快楽を貪り下着を汚してしまう。
聞かれている、覗かれているかもしれない、そんなリスクを承知の上での行動。
案の定…、次の日の帰宅後に変化が。
昨夜汚したはずの下着が綺麗に洗濯された状態で、ベランダに干されていた。
【空き巣の変態的な行為が、貴女の中に眠る自虐的な性癖、求められる悦びを開花させる。
時には挑発するように、時には誘うように淫らに自分からさらけ出し、空き巣の返答を待つようになる貴女との奇妙な時間を過ごせたらと思っています。
発展していけば、電話やメールで連絡を取り合うことへとつながり、面識を持つようになることもあるでしょう。
最終的には空き巣の歪んだ求愛行動無しでは不安で生活できなくなる。
紆余曲折ありながらもそう言う方向性を楽しめればと思います。
芥川翔平 32歳 身体つきも良く、引き締まっている。
気に入った女に執着する癖があり、幾人かの女の家を荒らすことなく無断使用した経験があり。
基本的に大きな被害や窃盗もない為、事件化されることはなくここまでに至る。
嫌悪されることが9割の中、他とは違う反応を見せ始める貴女に変態的な興味がさらに増していく。】