若くして政略結婚で嫁いで半世紀余り。
限りなく徹底した調教を受けて来た初老の女です。
一昨年に亡くなった夫の遺品を整理していましたところ、短歌らしきものを見つけました。
政略結婚ゆえに望まない結婚でした。嫁いで来た時の私の心情を歌ったものではないのかと思われます。
確かに当時の私自身の境遇が思い起こされるものであると感じます。
この様なものを、いつに夫が詠んでいたのか知りませんでした。
在りし日の夫、在りし日の妻、緊縛、羞恥、痛み、熱、慟哭、屈服、服従が蘇ってきます。
ここに至って、又私の胸の奥深く眠っていた被虐の残火がくすぶって来てしまいました。
でも夫は既に黄泉の者、、、どうにもなりません。
夫が私に遺したのであろう短歌を詠ませていただきます。
十八の蕾むざんに縛られて
順を待つ身の
荒れむしろが刺す
セリ台にうなだれて立つ艶肌に
とび交うつけ値は
矢よりも痛し
落札の白き裸身に巻きつきし
新たなる縄は
杭につながる
改めて摘み撫ぜする買主の
みだらな笑みに
すくむやわ肌
後ろ手のまま
詰めこまれたるトランクの
肌にしみ入る床の冷たさ
バウンドのたびに揺られて思い知る
ひしひしとした
縄の厳しさ
縄のみが今後のお前の衣ぞと
いわれし言葉が
思い出される
動かしてみようとすれど痺れきり
思うにまかせぬ
指先ぞ悲しき
まろやかな肩に頬をすり寄せど
流るる涙
拭得もせず
もうろうととなりし意識の片隅に
妖しき五彩の
雲の不思議さ
この全てが私自身を詠んだものであると改めて感じ入ります。
全裸縄付きで、この家の門をくぐったあの日のことが昨日の事の様に思い出されます。