それはまだ、私が新入社員だった頃の話。
連日、上司のパワハラやセクハラにイライラしていて、怒りの捌け口を探していた時、朝の満員電車でお尻に違和感を感じた。
(また痴漢?)
と思って、途中駅で乗客が乗り降りした時に顔を確認すると、背後にいた男は、痴漢なんてしそうもないイケメンだった。
(勘違いかも知れない)
と思い、再び扉が閉じても、私は元の場所に立ったら、同じ男が背後に立って、私の背中に身体を押し付けてきた。
(苦しい、押すんじゃねぇよ、)
と思いつつ、満員電車だからと、我慢した。
次の日、いつもの扉から乗車すると、同じ男が背後に立った。
(偶然じゃない)
と確信した私は、開かない方の扉の前に立ち、外を眺めていたら、男のカバンを持つ手が、私のお尻をグリグリしてきた。
(痛ぇな!)
と私が思ったのを察したのか、男は反対側の手でお尻を触り始めた。
(間違いない)
と思ったが、朝から痴漢騒ぎで会社に遅れたら、上司に叱られると思い、我慢した。
次の日も、次の日も、痴漢男は、私の背後に立って、どんどん大胆に触ってくるようになった。
キモいオヤジなら、初日に駅員に突き出すところだったけど、私も仕事のストレスで、欲求不満が溜まっていたので、ちょうど良い【マッサージ】と割り切る事にした。
男の指がスカートの上から、私のパンティを確かめるように這うようになると、私も興奮してきて、声を我慢するのも苦しくなった。
興奮した男の鼻息が私の首筋を撫でて行くと、背中が痺れた。
その日、私はパワハラ上司を、会社に告発した。
同じようにセクハラを受けていた先輩と一緒に、法務部の担当のところへ出向き、専務にも事情を話した。
その日上司は、役員に呼び出されたまま、帰ってくる事はなかった。
長年、セクハラに悩んでいた先輩は、付き添った私に泣きながら「ありがとう」と言い、私も気分が晴れた。
次の日も、あの痴漢が私の背後に立ったが、彼の「指使い」は、気持ちよくなくなっていた。
(そろそろ潮時かも?)
と思ったが、駅員や警察に突き出すのはやめた。
男のネックストラップに吊るされた社員証は、大手商社のものだった。
つづく