新型コロナウイルス騒動の影響で、世の中は濃厚接触に警戒感も高まっている。
そんな中でサークルから一人の男が紹介された。
彼は私より年下で、SM未経験者という事だった。
初対面の場所は、人出が少なくなった町の中。
待ち合わせで迷う事もなく、私は彼と挨拶を交わした。
見た目は貧相で、私と同じぐらいの身長。
美形ではあるが、イジメ難そうな彼は、私のタイプではなかった。
とりあえず、彼と予約していた喫茶店の個室に入った。
互いにタイトなスーツで、ヒールを履いていた私は、彼より一回り大きく見えたと思う。
調教について、こちらの条件を文書にしたので渡すと、彼は書類を一読して頷いた。
「この条件でお願いします」
と、あっさり受け入れたので、
「今後も追加で、色んな条件が追加されて行くと思うけど、大丈夫かな?」
と言ったら、
「自信はありませんが、頑張ります」
と彼は笑顔で答えた。
あまりに話が上手く進み、私は戸惑っていた。
彼が私を見つめる視線が、普通とは違っていた。
「貴方の資料で、女装が趣味って書いてあるけど、本当は男性が相手の方が良かったんじゃないの?」
と尋ねたら、
「ソッチの趣味はありません」
と言われた。
話が噛み合っていない気がした。
すると、彼は自分のスマホを私に見せてきた。
「これが僕の母です」
と言って、見せられた画像は、妖艶な熟女が、家の中で縛られてる物だった。
「これがお母さんなの?」
と尋ねると、彼は微笑みながら、次々に画像を見せてきた。
よく見ると、彼の面影が熟女と似ているように思えた。
「お母さんが好きなの?」
内心ドン引きしていたが、一応確認してみた。
「はい、母は田舎で暮らしていますが、帰省した時には、毎晩のようにセックスしています」
と、彼は悪びれる様子も無く言い切った。
(こいつは生粋の変態だ!)
と心の中で、私は叫んでいた。
「お母さんは、キレイでステキな人ね」
と言うと、彼は嬉しそうな顔で、
「貴女にはかないませんよ」
「母は年増ですし、貴女のオッパイの方がキレイです」
とお世辞を言われた。
「それに、貴女は母に似ているんです」
堂々とマザコン宣言している彼に、背筋がゾワゾワした。
会話の主導権は、彼に握られていた。
彼は昨年末の納会で、私を見初めていて、一緒にいた男の事を聞いてきた。
「あれはセフレで、彼には奥さんがいるんだよ」
「そうですか。実は僕にも幼馴染みの彼女がいて、母の事が片付いたら、結婚しようと思っているんです」
聞かれてもいない事をベラベラと話始めた彼。
話せば話すほど分からなくなる相手は、私も初めてだった。
彼のプロフィールが書かれていた資料に、彼の話を書き込み、帰ってから読み返してみた。
何となく理解できたような、解らなくなったような相手だった。
二週間後に再会した時には、私が調教すると約束をして、私達は別れた。
手元にある契約書には(仮)と補記したが、熱意のある彼に、私も少し期待をしている。
次に会うときは、、、
つづく