某県某所。
とあるアパートの一室に、それはあった。
「牝小屋」と名付けられたその部屋には、幾人ものマゾ女たちがルームシェアをしている。
ご主人様と呼ばれる男性たちから、厳しい生活管理を受け、また牝同士の序列に従い、日々生きているという。
牝小屋に取材へ行くことは、牝たちには知らされていないということだった。
ご主人様の一人、「A様」が部屋の鍵を開けると、中で一斉にガサガサと動く音がした。
玄関の扉が開き、中の様子を伺う前に、まず猛烈な熱気に顔をしかめてしまう。
真夏であるにも関わらず、冷房の類は動いていないようだ。
さらに、鼻をつくようなツンとした匂い。汗やゴミの匂いが混じっているようだ。
やっと部屋の様子に目が行くと、そこにはリクルートスーツ姿の女性たちが4人、これでもかというくらい背筋を伸ばして整列していた。
顔を見ると、鼻フックで鼻が釣り上げられている。A様より事前に「こいつらは豚鼻という苗字で繋がった姉妹奴隷なので」と言われていたが、そういうことかと合点がいった。
牝たちの顔は化粧っけがない。しかし、それぞれ可愛らしい顔立ちだった。
近づくと、4人からは異様な臭気が漂ってくる。聞くと、3日前から風呂は禁止になっているという。
その風呂場を見ると、そこからも異臭が。なんと浴槽には何匹ものザリガニが飼育されていた。世話は牝たちが担当しているという。
A様がそのザリガニを一匹掴むと、牝の一人を呼び寄せた。
無造作に釣り上げられた鼻に、ザリガニのはさみを近づける。有名なリアクション芸人のように、鼻をはさみで挟まれ、「ああ!」と呻きながらも微動だにしない。
訓練されているようだった。
牝たちは、この場にいるだけではないらしい。
取材日に牝小屋にいたのは、当日仕事が休みであったものだという。
仕事、といえば興味をそそられる話を聞いた。
牝たちはそれぞれ、仕事やバイトで稼いだ金で牝小屋の家賃を払うだけでなく、ご主人様方の娯楽費用にしていただいているという。
「それではあなた方が使うお金はどうしているのか」と聞きかけると、すぐに返事が返ってきた。
「わたしたちの餌代は、自分たちで賄える範囲のものです。また、牝に娯楽は必要ありませんので。衣服やその他必要なものは、ご主人様方がお恵みくださいます」
とのことだった。
牝小屋を出ると、新鮮な空気と涼しい風が顔を覆った。
牝たちの体調が少し心配になる。
「水分補給や栄養管理はしっかりしているし、あそこに監禁しているわけではないから、牝たちは自由に外に出ていいことになっている」
とA様。
まもなく、今の牝小屋からは引越し、また新たな牝小屋を探すという。
今度は一軒家を買って、すべての牝をそこに住まわせようかな、と今後の計画を語っていただけた。