初めて面と向かって話したあいりは、短めの髪が小さな顔を包み、この年代では美人といえる素直そうな少女だった。母親似の少しタレ目が美形を可愛らしさに変えている。
「ありがとうございました」
緊張しているのか小さな声でそう言うのが精一杯のようだった。
二人を部屋にあげ御礼にと持参したケーキを一緒に食べながら話をする。
今日の真由美はジーンズに身体にフィットしたシャツを羽織って快活な雰囲気。
あいりは前面が裾までボタンのミニワンピースで大人と子どもの微妙なラインだった。
学校や病院、怪我の話を進めるとやっとあいりも笑うようになって、大きな目でじっと見つめてくる様子にドキッとする。
一人暮らしが珍しいのか視線がキョロキョロしていた。
帰り際玄関であいりは突然、
「また…来ていいですか?」
と聞いてきた。
「あいり、何言ってるの、ご迷惑でしょ」
「だって…」
「良いですよ。少し遠いけど、近くに来たら声かけてください(笑)」
「でも、お忙しいでしょうし、」
「休みは大抵いますから」
「いいでしょ、ママ?」
「じゃぁギプスが外れて自由になったらご飯行こうか」
「ホント?うん、行く!」
困り顔だった真由美も同意し、まさにニッコニコの笑顔のあいりは下の車に乗るまで何度も手を振っていた。
七月も終わる頃、三人で外出する事になった。
あいりの希望を聞くと、モールのフードコートがいいと言う。
賑わうそこで席を確保し真由美を残して二人で注文に行った。待つ間、僕のシャツの袖を引っ張り隣りに立つあいりが口を開く。
「嬉しいな。なんかドキドキするの」
「マックとかよく行くのに?」
「あのね、みんな家族とかでしょ?だからちょっとだけ、時々いいなって」
「お母さんに言った事あるの?」
「ううん、言わない…」
「ん、そか。良い子だね」
そう言って頭を撫でると腕にしがみついてきた。
「何話してたの?」
席に戻ると真由美が聞いてくる。
「ナイショ話っ」
「ずるいなぁ、ね、何?あ、悪口でしょ」
「あいりさんはね、お母さん大好きだって。仕事と家の事大変なのに優しいって、ね」
「そんな事言ったの?初めて聞いたかも。じゃあもっとあいりに家事頼んじゃおう」
「えーやだぁ、勉強あるもん、忙しいんだよ」
「学生は勉強しなきゃね(笑)」
「うん、大変なんだから」
「その割りには成績は変わってませんけど?」
「ブゥ。難しくなってきたんだもん」
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