事件の後、病院から帰りがけに空手&柔道道場に顔を出した。
この道場、先生が4人いる。館長であるじいちゃん先生。じいちゃんの息子で、うちのかーさんの同級生でもある拓おじさん。拓おじさんの奥さんの奈津先生。奈津先生の弟:ノブ先生だ。どういういきさつでそうなったかは分からないが、この道場は月・木が空手教室でじいちゃん先生と拓おじさんが教えて、火・金が柔道教室で奈津先生とノブ先生が教えている。なので、週4で空手と柔道をここで教わっているわけです。
母『あんたが暴漢魔と揉み合いになってナイフで刺されたって聞いた時は、血の気が引いたわよ!これじゃなんのためにココに通わせてるのか分からないじゃないの!』
拓先生『由美ちゃん(母の名前)の言う通りだ、とっさの出来事とはいえ・・・オマエ、本当にアホだな?通学バック持ってるんだからナイフはそれでガードすりゃいいだろ?』
新ジャガ『あ・・・そう言わりゃそうっすね・・・。あん時はテンパてたけど・・・今、気づきました。でもまぁ、結果良ければ全て良しということで・・・・・』
師匠&母『・・・・・・・。(スパーン!)』
2人同時に頭を叩かれた・・・悪い事してるわけでもないのに何で叩かれるよ・・・(泣)
じいちゃん先生『まぁまぁ、新ジャガをそう責めるな。ケガも軽傷で済んだんだし、この件はこれでヨシとしようじゃないか。なぁ、由美ちゃん。』
さすが、じいちゃん先生。最後は子供たちの味方になってくれる。助かりました(笑)
翌日、事件の事は(被害者の名前を伏せられた状態で)すぐに学校中に広まってちょっとした騒ぎになっていた。恵美は学校に来ていたが理絵は欠席したみたいだ。そりゃそうだ、心が強くなかったら何事もなく登校するなんて…お年頃の女の子には到底無理だ。その点、恵美の心の強さには正直すごいと思う。
この恵美と理絵だが、性格は正反対だ。恵美は活発で物事をはっきり話す性格で、事件についても多少のトラウマは残るかもしれないが、基本過ぎた事は忘れるタイプのようだ。逆に理絵はガラスのハートタイプ。多分この事件の事は・・・小さくないトラウマになってると思われる。
授業自体は午前中で終わった。本来なら午後から空手に行かなきゃいけないんだけど、全部の習い事を手のケガの影響でしばらく休むことになった。そうなるとヒマでヒマでしょうがない(笑)。昼メシを食べ終わった後、自室に引きこもってエロ本を読みまくっていた。
14時を回った頃、玄関のチャイムが鳴った。誰だろう?と応対するとインターフォン越しに『昨日助けて頂いた松井理絵の父です』と中年男性の声が聞こえた。玄関を開けると理絵パパと理絵が立っていた。
理絵パパ『こんにちは。キミが新ジャガ君だね?昨日は理絵を助けてくれて、ありがとう! ケガをさせちゃったようで、本当に申し訳ない。キミは理絵の命の恩人だね』
新ジャガ『いや、とんでもないっす。ヘマしてケガしてちゃっただけですから、コレはあんま気にしないで下さい(笑) あ、どーぞ中にお入り下さい。』
新ジャガ『かーさん、松井さんと松井さんのお父さんが来たよからリビングに通すよー』
理絵パパ『それじゃお邪魔致します。理絵、入るぞ。』
理絵を見ると、浮かない顔をしている。そりゃそうだ、まだ昨日の今日だもんな・・・。父娘をリビングに通して程なく、母がお茶セットを持ってきた。
理絵パパ『新ジャガくんのお母様ですね?この度はウチの娘がご迷惑をおかけしてしまい、そのせいで息子さんにケガをさせてしまって本当に申し訳ありませんでした!』
母『お父様、頭をお上げ下さい。警察の人にも話を聞きましたけど、理絵ちゃんは被害者ですし、それに手のケガもウチのバカが見境いなく勝手に揉み合って、半ば自爆でケガしただけなんですから』
理絵パパ『いえいえ、そんなことはありません!息子さんには本当に感謝してます。ナイフを持って暴れるヤツから理絵の事を身を挺して庇ってくれたんです。理絵にとって息子さんは命の恩人です!!私も警察と娘から話を聞いた時は血の気が引きすぎて、自分自身がその場で倒れるかと思ったくらいです。新ジャガくん!!ありがとう!!!キミがいてくれたおかげで、今僕らはこうしていられるんだ。本当にありがとう!!!』
理絵パパが俺の手を両手で強く握って頭を下げてお礼を言ってくれている。あぁ、俺のしたことは細かい部分ではまだまだだけど、でもやっぱり間違っていなかったんだと改めて実感した。
その後。お互いに簡単な挨拶が済んだ後は親同士の雑談に突入した。この手の話が始まると(原因は話好きであるウチの母なんだか…)1時間近くは話すだろうなと容易に想像がついたので、それぞれの親に断りを入れて、理絵を自室に誘って連れていくことにした。
部屋までの階段を昇りながら、まだ気落ちしている理絵に話しかける。
新ジャガ『今日、わざわざ来てもらってゴメンな。』
理絵『ううん、手のケガ・・・大丈夫?』
新ジャガ『2週間くらいで治ると思うよ。まぁ…前に空手で左肘を脱臼した事があるんだけどさー。ソレに比べれば全然大したことはないよ。水泳はさすがにムリっぽいけど、道場は来週からいつも通りに練習するしね。』
理絵『でも・・・まだ痛むよね?』
新ジャガ『昨日が少し痛かったし、包帯がグルグル巻きだったけど、今日になってだいぶラクになって、この程度しか包帯を巻いてないくらい逆に痛みなんかないよ』
そうこうしているうちに部屋の前に着いたので、扉を開けて理絵を部屋に通した。
部屋に入るなり、理絵は部屋中を見回している。もしかして、男の子の部屋に入った事がないのかな?
理絵『!!! ・・・・・・。』
理絵の動きが止まった…。というよりも半分固まったような感じになっている。俺もその視線の先を確認すると…
俺『!!?(やばい、やっちまった!!)』
そう、さっき理絵たちが訪れる前に読みっぱなしになっていたエロ本がベットの上に置かれていた。しかもただのエロ本じゃない。これは一般の書店では売られていないいわゆる裏本というヤツ。写真・漫画・文章が混在しているが、写真と漫画で局部の部分がモザイクがなくてモロに見えていた。友達のアニキが小6の誕生日プレゼントだとプレゼントしてもらったヤツ。これはヤバイ!非常にヤバイ!なんてことをしてしまったんだ俺は!!こんなことならエロ本を読んでるんじゃなかった・・・(泣) と今さら後悔しても遅かった。
理絵『新ジャガくん、こーいうのに興味あるんだ・・・。』
クスッっと笑いながらそう言うと、理絵がエロ本に手を伸ばして中身に目を通し始めた。
理絵『うわ、これモロに見えてる…。え~何これ?ちょっとこれ・・・???』
耳を真っ赤にしながら、エロ本に夢中になっている理絵。その傍らで顔を引きつらせながら固まってる俺・・・。想定外の事態にどうしたらいいか分からない。というか頭の中が完全に真っ白。次、どういう行動を起こしたらいいか考えることすらできなくなっている。理絵がエロ本に手を伸ばし、おもむろに中身を確認しはじめた。
理絵『いつもこーいうのを読んでるの?』
新ジャガ『え、えっと・・・それ友達のにーちゃんから貰って・・・えっと・・・』
理絵『クスクス…。あたし、お姉ちゃんの持ってた本を見たりしてるから、全然ヘーキだから大丈夫だよ?』
新ジャガ『そ、そ、そ、そうなのか?な、なら、よ、よ、よかった・・・』
理絵『(笑)他にもある?』
新ジャガ『あ、あるけど…あとはモザイクがかかってるマンガだけだよ?』
理絵『じゃあ、ソレは今度来た時に見せてね!』
新ジャガ『う、うん。いいよ・・・』
理絵『なんか意外だなー。新ジャガってさー、学校終わったらすぐに帰っちゃうし、テストでも学年1位とか2位とかじゃん?てっきり、帰宅部で勉強ばっかりやってるんだと思ってたー。』
新ジャガ『そうかぁ?真面目オンリーだったら、こんなん持ってないんじゃない?』
理絵『えー、じゃあ学校終わったらいつも何やってんの?』
新ジャガ『炊事・洗濯ですっ!(キリッ)』
理絵『(笑)またまたぁ~』
新ジャガ『あ、コレは本当なんだよ?親が毎日仕事してっから、俺・妹・かーさんの分のメシを作りながら洗濯してるワケさ。』
理絵『へぇ~、それも意外(笑)』
新ジャガ『メシ食い終わったら、空手か柔道か水泳の練習ってトコかな?家じゃ基本宿題しかしてないね。』
事実、月・木が空手で火・金が柔道、水・土が水泳になっていて、水泳が18時からで後は19時からである。なので、学校が終わったら下校途中に食材を買いに行って、帰宅したらソッコーでメシを作り始めないと習い事の時間に間に合わないワケです。また、水泳の時は俺だけメシを食わず、帰ってきてからメシを食うって感じでした。
理絵『でも、ごはんも作れるなんてすごいじゃん!あたしは手伝いはたまにしてるけど、作り方なんか全然覚えられない(笑)』
新ジャガ『小6まではかーさんも比較的早く帰ってきてたし、昔から料理を作ってるところを見るの好きだったから、小4の頃から一緒に作ったりしてたんだよねー。けど、4月から新しい仕事を任されたみたいで、毎日20~21時まで仕事をやらされてるんだって。だから引き続きオイラがメシ番になったってトコかな?昨日も部活に入らないからって担任に呼び出されて説教くらったけどw』
理絵『で、どこの部活に入ることにしたの?(笑)』
新ジャガ『今まで通り、家事帰宅部で(笑)。小3の妹がいて、かーさんも20時過ぎじゃないと帰らないから、オイラがメシ番してるって話したら、薄くなったハゲ頭を抱えて悩んでたよ(大笑)』
理絵『あはははは!(爆笑) ハゲ頭って・・・(笑)』
新ジャガ『さすがに小3の妹に対して、腹空かせながらかーさんの帰りを待たせてろ!なんて言えないはずだから、もう説教してこないんじゃん?もし迫ってきたら、教育委員会に一家総出でクレーム入れてやるし(笑)』
理絵『晩御飯を作ってから習い事?』
新ジャガ『基本だいたいそんな感じ。ちなみに空手・柔道の先生はかーさんの友達らしいから、サボるととんでもない事になります(笑)』
理絵『ふーん・・・それで習い事が終わったら、コレ見てるんだ?(笑)』
新ジャガ『!!!松井さん、勘弁してよ~(汗)』
理絵『あはははは・・・(笑)』
理絵がよく笑う。事件の影響は思ったよりかは少ないのかな? っていうか、理絵ってこんなに楽しく話す子なんだ・・・。恵美もそうだが理絵と普段しゃべった事がなかったから、こんなに早く打ち解けるなんて思ってもみなかった。コレも・・・エロ本のおかげってヤツか?
理絵『土曜の午後とか日曜って、いつも何やってるの?』
新ジャガ『そうだねー、たまにクラスの松本や菅田とかと遊んだりとか、家でプラモ作ったりとか、(エロ本を指さして)それの読書とかかな?』
理絵『読書って・・・これ読書じゃないでしょ?(笑)』
新ジャガ『そーいう事にしておいて(笑)』
理絵『じゃあ、今度の土曜日も来ていい?』
新ジャガ『あ、いいよー。じゃあ昼メシはウチで食べてく?食べてくなら用意しておくけど?』
理絵『さすがにそれは悪いよー』
新ジャガ『別に構わないよ。1人分の食材なんてそんなにかからないし』
理絵『え、でも・・・。』
新ジャガ『妹も姉ちゃん欲しいな~って言ってたし、2人で食べるより3人で食べたほうがおいしいから、ぜひ来てほしいな・・・。これはまだ見ぬお兄ちゃんからのお願いって事で!』
理絵『その前に、妹さんを紹介しなきゃダメじゃん(笑) じゃあ・・・・、今度、お昼御馳走になります!』
新ジャガ『OK!中華で良い?そこらのお店には負けないよ!』
理絵『中華だったら・・・エビチリが食べたいな・・・。』
新ジャガ『了解!期待しててね!』
他にもいろいろ話していたが、気づいたら16時近くになっていた。そろそろ理絵パパも帰るのかな?と思い、理絵と一緒にリビングに行ってみる。
理絵パパとかーさんは、話が盛り上がってるみたいで、そこだけ異常にテンションが高い(笑) こりゃまだまだ終わらないな・・・。
新ジャガ『かーさん、晩メシどーするの?まだ買い出し行ってないっしょ?』
母『あ、もうそんな時間?全然気付かなかったわ』
理絵パパ『あ、ホントだ・・・。そしたらぼちぼち御暇したほうがよさそうですね?理絵、そろそろ帰るか?』
母『あらあら、もうちょっとゆっくりしてなさったら?あと1時間くらいで主人も帰ってきますし』
理絵パパ『いやいや、さすがにそういうワケには・・・ 家内と理絵の姉がウチにおりますし・・・ たぶん夕飯の支度もすると思うので・・・』
理絵『すいません、家に電話したいのでお借りしてもいいですか?』
母『そこの角にあるから、使ってー』
理絵『ありがとうございます。パパ、ママとお姉ちゃんも呼んじゃおうよ?』
理絵パパ『理絵、何言ってるんだ?さすがにそれはマズイだろ?』
母『それもそうね、よかったら一緒に晩御飯なんていかがでしょう?』
理絵パパ『いやいや、それはさすがに・・・』
理絵『・・・・・あ、ママ?あのね、今新ジャガくん家にいるんだけど。 ・・・・・・。 うん、ちゃんと御挨拶したよ。 ・・・・・・・。 うん、話で盛り上がってるみたい。 ・・・・・・。 うん、大丈夫だって。 あ、それでさー、新ジャガくんのお母さんがね、新ジャガくんのお父さんもそろそろ帰ってくるし、よかったら親睦も兼ねてママたちも一緒に夕食どうですか?って。 ・・・・・・・。 うん、パパもそれは・・・って言ってるんだけど、新ジャガくんのお母さんが【遠慮なさらないで、一緒に食べましょう!】って言ってくれるんだ。 だから、今日はお店閉めちゃってるんだし、お誘いに甘えたら?』
よくできた娘だ(笑)。理絵が説得にかかってるのを見て、かーさんは大喜び。対して理絵パパは恐縮しっぱなし(笑)
新ジャガ『おじさん、ごめんなさい。かーさんが、あー言い出したら聞かない人なんで・・・ 理絵さんもああやって説得していることですし・・・ ボクからもお願いします。』
理絵パパ『う~ん、お言葉に甘えちゃっていいのかな・・・。本来なら我が家が新ジャガくん一家を招待しなければならない立場なんだけど・・・』
新ジャガ『おじさん、お酒好きですか?』
理絵パパ『お酒はすごく大好きだよ(笑) 商店街の会合とかでよく飲みに行って、カミさんに怒られるくらいにね(苦笑)』
新ジャガ『かーさんも、とーさんも、すんげー呑ん兵衛なんで、よかったら付き合ってくれませんか?そのほうが大喜びしますよ。』
理絵パパ『そっかぁ~。新ジャガくんもそう言ってくれるなら・・・ 理絵、母さんたちにこれからこっちに来るように伝えときなさい。ここまで熱心にお誘いしてくれてるんなら断る方が失礼にあたるよって言っといてくれ。』
理絵『うん、わかったー。 ・・・・・・。 え?今の聞こえてた? ・・・・・・・・。 うん、わかったー。場所は市民病院の隣だよ。うんうん、パパに言っとくね。じゃあまた後でね。』
理絵『ママたちもあと1時間くらいでこっちに来るようにするって』
母『あら、ホントに?嬉しいわー。新ジャガ!今日はお寿司を取るから、竹寿司さんに特上8人前頼んどいて!』
新ジャガ『まじ?ヤッター!!家事から解放された・・・(笑)』
母『コラ、アンタ!! 今なんて・・・! ここでソレ言わなくても!!』
新ジャガ『いいじゃん、どーせバレるんだし(笑)。あ、理絵にはもう話しちゃったから(笑)』
母『もう話したって・・・・・・(呆)』
理絵パパ『(笑)』
新ジャガ『それと、酒屋さんにお酒持ってきてもらったほうがいいんじゃない?どうせ飲みまくるんでしょ?(笑)』
母『そうね・・・ビール2ケースと焼酎10本くらい頼んどいて』
新ジャガ『あいよ。』
理絵パパ『あはは、楽しい夜になりそうですね・・・』
理絵『パパ、よかったね。ママ公認でいっぱい飲めて(笑)。』
理絵パパ『こら!新ジャガくん家でそんな事を・・・。』
全員『あはははは・・・・(爆笑)』
その後、ウチの妹とオヤジが帰宅。しばらくして理絵ママと理絵姉も来訪し大宴会がスタート。俺も家限定でフツーにビールを飲ませてもらってるので、理絵姉を含めた大人達と一緒に酒を飲み、妹はジュースで参加。理絵はというと・・・最初は少しお酒をもらって試しで口に含んだようだが、さすがになじめずすぐにジュースを飲んでいた。21時くらいまでは一緒に付き合っていたが、さすがに10本近く飲んだら酔っ払ってきた。大人組はというと、これからが本番と言わんばかりに、まだまだテンションが上がりまくり(笑)こりゃ日付か変わるまで飲み続けるな・・・
そろそろ部屋に戻ろうと思い、親に退席すると伝え席を立つ。すると、ジュース組の妹と理絵も宴会には飽きはじめていたらしく、一緒に退席することに。理絵姉も酔っ払いには付き合ってられないらしく、結局…俺、妹、理絵、理絵姉の4人が部屋に上がらせてもらった。妹はなぜか理絵姉と話が合ってしまい、小3のクセして理絵姉の仕事について興味があるらしく、もっといろいろ聞きたいらしい。そんなワケで妹の部屋には妹と理絵姉、俺の部屋には俺と理絵という感じで別れた。部屋に入るとベットを背もたれ代わりにして隣同士に並んで座りながら話始めた。
理絵『新ジャガってさー、お酒飲めるんだねー。』
新ジャガ『まぁ両親とも呑ん兵衛だから、自然と一緒に飲むようになって今に至るだね。でも外じゃさすがに飲んでないよ?(笑)』
理絵『それはさすがにヤバイでしょ?(笑)さっき少しもらったけど、苦いし美味しくないし、あれのどこがいいんだろう?』
新ジャガ『さぁね・・・(苦笑)酔っ払うのが楽しいんじゃない?フワフワしてて楽しいし。』
理絵『う~ん、少しクラクラしてるけど…楽しいってほどじゃないなー』
普段からとーさん達の酒の御供をしている俺は置いといて、お酒にほとんど免疫がない理絵はビール2~3口でだいぶ酔ってしまったようだ。アルコールのせいか、昼間よりも距離感が近くなっているが全然気にならず、それよりもこうやって2人きりで話すのがとても楽しくてたまらない。
途中で俺の手が理絵の手に触れてしまった。酔っ払いの俺もさすがにドキッとしてしまった。心音がすっげー早くなってるのが自分でもわかった。対する理絵はというと…少しピクッと動いたので気付いてはいるようだが、特に手をどけるとかの仕草がみられない。
(あれ?…いいのかな?)少し調子に乗った俺は、話をしながら俺の手を理絵の手の上に乗せてみた。…手をどけない。(まじで?)ちょっと嬉しい。でも理絵の顔を見ると、耳が赤くなっている。もともと透き通るような色白体質なので、興奮したり上がってしまうと顔や耳が紅潮するタイプのようだ。ということは・・・俺の事を少しは意識してくれている???
理絵『新ジャガさー』
新ジャガ『ん?どうした?』
理絵『掌、ゴツゴツしてない?』
新ジャガ『え???あー、たぶんマメだと思うよ。空手のせいで手の甲もずいぶんごっつくなってるし・・・』
理絵『ちょっと見せて・・・。(俺の手を手にとってまじまじと見る)・・・。やっぱり男の子の手してる。ガリ勉じゃこうなならないね(笑)。』
新ジャガ『でしょ?空手とかやってるって信じてくれた?』
理絵『昨日助けてくれたのに、信じてないワケないじゃん(笑)』
新ジャガ『信じてくれてありがとう(笑)。逆に、松井さんの手って細くてキレイだよね・・・。こうやって触るとスベスベしてて気持ちいいし。』
理絵『えーそんなことないよ、フツーだって(笑)。』
新ジャガ『いやいや、これはまさに癒しの手ですよ(笑)』
理絵『バカッ!(照)』
そのままなし崩し的に、恋人が手を繋ぐように指を絡める。理絵は緊張して手が強張っているが拒否をするワケでもなく、なすがままに手を繋いでくれた。
理絵『もう、恥ずかしいじゃん。ってかさー、新ジャガ酔っ払ってるでしょ?顔赤いよ?』
新ジャガ『顔が赤いのは酔っ払ったからじゃありません。』
理絵『じゃあ、なんで赤いの?』
新ジャガ『もともと赤いんです(キリッ)』
理絵『(笑)そんなワケないでしょー?』
新ジャガ『だってぇ・・・。緊張するじゃんか。』
理絵『・・・・・。』
新ジャガ『もうちょっと…このままでいさせてくれない?』
理絵『(コクリ)・・・。』
新ジャガ『そういえばさー、聞いてもいいかな?』
理絵『なぁに?』
新ジャガ『だいぶ落ち着いた?』
理絵『!!!・・・・・。うん・・・。』
新ジャガ『来週からは学校に行けそう?』
理絵『うん、大丈夫だと思う。』
新ジャガ『これからも・・・もし何かあったら俺に言って。絶対助けるから!っつか、今度はヘマしませんから(笑)』
理絵『うん・・・ありがと。』
理絵の頭が俺の左肩にもたれかかる。やっぱり怖かったんだろう・・・。
時間が経つ度に1人の女性として理絵を意識するようになってる俺がいる。少なくとも昨日以前は考えられなかったが、今思えばパンチラ事件で一目惚れして、こうやって一緒の時間を過ごすうちに本気で好きになってきたんだと思う。とにかく理絵の仕草1つ1つがすごく愛くるしい。その度にかわいいなと心の中で思っていたのだが、不意に言葉として漏らしてしまった・・・。
新ジャガ『かわいいな・・・(ボソッ)』
理絵『!!? え???』
びっくりして俺の顔を見る。そこで、言葉にしてしまった事に気付き、俺の顔と耳が一気に紅潮していくのが分かる。まるでゆでダコになったような赤みだったと思う。
新ジャガ『え? あ? あの・・・ その・・・ えーと・・・ うー あー ・・・』
理絵『・・・・・』
新ジャガ『・・・・・・。ま、ま、松井さん、か、かわいいです・・・。』
理絵『!!!(みるみる顔が紅潮していく)・・・・・。』
新ジャガ『お世辞じゃないです。俺の本心です。』
繋いでた左手を離し、理絵の背中に腕を回し、肩に手を当てながらゆっくりと理絵を引き寄せた。何か考えてたワケじゃない、身体が勝手にそう反応した。理絵はというと、拒否するワケでもなく、なすがまま。そのまま俺の胸に引き寄せられてうずまっている。そして理絵が再び俺の顔を見ると、これも本能のままに軽く口づけをしてしまった。これにも理絵は拒否することなく、顔を赤くしたまま目を閉じ、俺口づけを受け入れてくれる。1分くらいだろうか?いったん顔を離して理絵の顔に視線をやると、理絵も口づけが終わったのと同時に俺の目を見はじめた。少し潤んでるような感じだ。俺は再び理絵に口づけを始めると、理絵も目を閉じて応えてくれたので、口づけし始めたと同時に舌を理絵の口の中に優しく差し込んだ。差し込んだ瞬間に理絵の身体に力が入ったが、すぐに力も抜けて、俺の舌を受け入れてくれた。俺は理絵の舌を探し出し、お互いに舌を絡めるような動きを始め、理絵の身体を優しいながらも力強く抱きしめてただひたすらキスをし続けた・・・。
第2話 ~宴会のあとに~ 完
※元投稿はこちら >>