「○○くん、飲んでるー?」
遙さん姉が、斜向かいから俺に無理矢理絡んできた。運転手が飲む訳ねーだろ!と思ったけど、
「飲んでますよー!」
とか言って、ただのジュースを一気飲みしてその場をやり過ごした。
姉さんにそこそこ気に入られたみたいで良かったんだけど、本当にジュースに酒混ぜられそうになったのはマジで勘弁して欲しかった(その時兄貴が一瞬シラフになって「えっ」とか言ってたのは笑えた)。
遙さんも遙さん姉もケタケタと笑っている。「ちょっと、それはダメっすよ!」という俺の抗議に対しては、
「だってこのお酒美味しいんだもん」
などと供述をしており、動機は未だ不明。
まぁ、なんだかんだで楽しく飲んでいたんだけど、10:00過ぎくらいになって、酒の匂いにあてられたのか、便璃が目と顔を真っ赤にして眠たそうにしていた。
「眠い?」
と尋ねると、「うーん」という感じで首を傾げ、目をこすりながら「まだ眠くないです」とのたまう。どう見ても眠そうです、本当にありがとうございました。
「便璃ちゃん眠そうなんだけど」
と、兄貴達に告げると、
「えー」
といった感じで、あからさまに飲み足りないオーラを出す3人。それに対し、「眠くない……」と、説得力ゼロの主張をする便璃。
この時俺は、「俺と一緒にいたいから眠いの我慢してるのか?愛い奴め」とか考えていたんだけど、単純に俺ら4人に気を遣っているだけだったみたいで、ちょっとガッカリした。
(これはもはや時間との勝負なのかも分からんね…… )
と考えた俺は、とりあえず先ほどと同じようにつま先で便璃の太ももをコリコリと擦ってみた。
急いで悪戯に踏み切った理由は二つ。
・本心ではまだ飲み足りないと考えている兄貴達も、便璃がこんな状態では気を遣ってお開きにするかもしれない
・便璃もこれほどまでに顔が真っ赤でぼやんとしていては、多少悪戯したって周りにバレやしないだろう
ということで俺は、便璃の目を覚まさせる意味でも、今が最高のシチュエーションだと確信したという意味でも、再度ジョイントを目標に、足をモゾモゾ動かすだけの簡単なお仕事をすることになった。
「……」
先ほどと似たような状況になり、押し黙る便璃。その姿はそれで大変良いのだが、できれば一緒に話して欲しいなぁ……という思いも込めて、またもやこちらから色々と話しかけてみる。単純に、この子のことをもっと知りたいと思ったというのもあるしね。
続きます
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