みくとの交際が、みくの母親公認になってから、みくの気持ちに緩みが生じ、その結果、僕たちの交際は、彼女のクラスの女子全員の公然の秘密になってしまった。
みくは、クラスの中でもどちらかといえば子供っぽく、明るく健康的な子と思われていたようで、そんな彼女が『独身サラリーマンと愛欲にまみれた交際をしている』という噂に、ほとんどの女子生徒は、強い好奇心を持ったようだ。しかし、その中に一人、単なる好奇心ではない関心を持つ少女がいた。
ある日、仕事中にみくからメールが入った。
『ちょっとマズイことになっちゃったみたい。相談したいから、今日はなるべく早く帰って来て!』
僕は嫌な予感がして、定時に仕事を切り上げ、急ぎ足でアパートへ戻った。
みくが、いつにない深刻な顔で、考え込んでいた。
「何があったの?」
僕が聞くと、みくは、今日の昼休みの出来事を僕に話した。
彼女のクラスメートに、学級委員をしている、裕美 という名の少女がいる。成績が良く、また聡明な感じの美少女なので、教師のウケは良く、男女生徒の間でも人気があった。
しかしその裏で、暴走族との交際があり、日常的に夜遊びや外泊を繰り返している という噂があり、これもまた、女子生徒の間だけの公然の秘密のようになっていた。
その裕美に、みくが今日の昼休み、屋上に呼び出された。
用件を聞くと、今裕美が付き合っている暴走族の男が、もうすぐ次の総長になれそうなのだが、その為の資金が要るのでカンパして欲しいという。金額は10万円。
みくが、そんなお金はない と断ると、
「サラリーマンの彼氏がいるんでしょ?その人に出して貰ってよ。」
と、平然と言い放った。
みくが、いくら社会人でも、普通のサラリーマンなんだから、そんな迷惑は掛けられない と言うと
「じゃあさ、その彼氏にこう言って頼んで見てよ。『同級生の不良に、カンパしないと二人の交際を学校にバラすって脅されてる』ってさ。みくのこと、本気で大事に思ってたら、何とかしてくれるんじゃない?」
と、半笑いで言ったという。
「これって、脅迫だよね?」
昼休みのいきさつを僕に説明し終わると、彼女は思い詰めた表情でそう言った。
「ああ、そうだと思う。僕から金を引き出す作戦のような言い方をしてるけど、実際は君を脅してる。巧妙なやり方だね。」
「どうしよう?お金、渡さなきゃダメかな?」
「いや、たとえ今回何とか払っても、それで終わるとはとても思えない。学生時代の友達に、そういう事に詳しく奴がいるから、相談してみるよ。」
そう言って、その日は早めに彼女を家まで送って行き、すぐにその友達に連絡を取った。
そいつは、法学部出身で法律事務所に勤めているが、その事務所は結構ハードボイルドで、顧客の依頼があれば探偵のような事から、時には違法スレスレの手段を使うこともあるらしい。
そいつの携帯に電話すると、久しぶりの連絡になるにもかかわらず、二つ返事で時間を取ってくれた。
翌日の夜、そいつの事務所に出向いた。挨拶もそこそこに、今回の経緯を説明すると、そいつはこう言った。
「これは結構厄介だな。こういう時の対処法は、相手に弱みを見せずに毅然とした態度を取る…事なんかじゃなくて、逆に相手の弱みを握ってやる事。これしかない。」
「けど、僕も彼女も、その子とはほとんど個人的な付き合いがない。弱みと言ったって…」
「弱みは見つけるものじゃなくて、こっちから仕掛けて作るもんだよ。今の話を聞く限りでは、その子は誰に対しても、相当突っ張って生きていると思う。たとえ彼氏に対してでも、自分の弱い所を見せるのを極端に恐れるタイプだ。もしそんな子が、たとえば男にレイプされて、泣き叫び、やめてくださいと哀願する。そんなシーンをビデオにでも取られたら、どうなると思う?」
「それってつまり、僕がその子を襲う、ってことか? いくらなんでもそれは…」
「手段を選んでる場合じゃないと思うぞ。それに何も、拉致監禁を勧めているんじゃない。何とかお前の部屋でその子と二人きりになり、向こうをその気にさせる。その子が脱いでベッドに入ったら、態度を豹変させて、わざと乱暴に扱う。大して濡れてもいない内に、強引に突っ込もうとする。いくら大人ぶっていても、13才の女の子なら、それでかなりビビッて取り乱すだろう。」
「たしかにそうかも知れない。だが、逆に居直られるかも。『好きにすればいいじゃない。その代り、後悔するよ』なんて言われたら、新しい弱みを握られて、却ってまずいことになる。それに残念ながら、僕はその子と二人きりになれたとしても、その気にさせられるほどイケメンじゃない。」
僕がそういうと、そいつは笑って、
「そうだな、居直られるリスクは否定できない。だが俺の勘では、その子は多分処女だ。どんな女でも、初めての時というのはとてつもなく不安なものらしい。その状況でそんな風に居直れる女の子は、そうはいないと思う。お前の魅力については…お前は昔から中学生以下の女の子にはモテてたから、そう捨てたもんじゃないと思うぞ。まあ心配なら、これを使ってみるか?」
そいつは自分のデスクの引き出しから、香水入れのような小瓶を持ってきた。
「それは?」
「媚薬さ。こいつを紅茶かコーヒーに2、3滴落としてその子に飲ませる。残りは香水として、ベッドやお前の体にでも振りかけておく。部屋はなるべく暑くしてな。子供に試したことはないが、この間ハタチくらいの女に試したときは、よく効いた。実行に移すかどうかはお前が決めればいいが、とりあえずこれは渡しておく。」
僕はそいつに礼を言って、その小瓶を受け取り、事務所を後にした。
部屋に帰ってから、そいつに言われた事を考えてみた。
裕美は、聡明な美少女だということだ。その子を、媚薬を使ってその気にさせ、体をいただく。しかもそこには、恋人を脅迫から守るためという大義名分がある。魅力的な話だ。
しかし、一方では大きなリスクもある。第一にこれは犯罪だ。裕美は、力ずくで犯された事を怒り、利害に関係なく警察に告発するかも知れない。居直られる可能性も否定できない。途中で抵抗され、逃げられるかも知れない。
一晩あれこれと考えたが、結局友達の提案以上の解決策は見つからず、僕はこの計画を実行する事を決心した。
続く
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