暑い日が続く。
土曜にガキをドライブに連れ出した。
海沿いの道を、エアコンは着けずに、窓をいっぱい開けて走る。
ガキはグレーの帽子に白のTシャツ、いつものショーパンだ。
風でなびく髪が可愛い。
Tシャツから、わずかに乳首の出っ張りが透けて見える。
幹線から降りて狭い道を行くと、低い堤防と小さな砂浜に出た。
ガキは喜んで砂浜に駆けだした。
波打ち際で靴を脱ぎ棄てて海に足を浸けてる。
「お兄ちゃん、気持ち良いよ。全然冷たくない。」
俺もガキと一緒に海に足を浸けた。
本当だ。もう冷たくないな。
しばらくしてガキが言った。
「私、泳いで良いかな?」
うん、これだけ水温が高ければ大丈夫だけど水着は?
「下着じゃだめかな?」
周りに民家も人影もない。
全部脱いじゃえよ。俺が見張ってるから大丈夫。
「うん、そうするね。」
ガキは堤防に脱いだ靴の上に、素早く脱いだ衣類を重ねる。
痩せてる。太陽の下で見ると痛々しいくらいだ。
やっと年齢相応に膨らみはじめた胸も、すぐ下のアバラが見える。
パンツ1枚で俺の方を振り返って、にっこり笑って最後の1枚を脱いだ。
明るい光で、真っ白な下腹にくっきりと割れ目が見える。
まだ若草は生えてない。
ガキが海に駆け込んだ。
白い水しぶきを飛ばして、はしゃぎまわる。
お前、泳げるかい?
「見て、見て、クロールだよ」
うん、上手だね。他のは?
「平泳ぎでしょ、背泳、横泳ぎもできるよ。」
ほう、すごいじゃないか。何時から泳げるようになったんだい?
「3年の時、平泳ぎ覚えたの。そしたら後のは簡単だったよ。」
水泳大会にも出て賞状貰ってたね。
「うん、今年もがんばる。
裸で泳ぐの初めてだけど、凄く気持ち良いよ。」
良かった。ゆっくり楽しみなよ。
低い堤防に坐って裸のガキを見ていたら、後ろに人の気配がした。
振り返ると、50歳位の近所の漁村のおばさんらしい女性が立っていた。
さりげなく挨拶する。
こんにちは。暑いですね。
「もう泳いでるの。女の子?」きrはい、親戚の子です。
「ここは良い所でしょう。あまり人も来ないからね。」
そうですね。静かで良いところですね。
ところで、近くに食事ができる店がありませんか?
「近所にはないね。
素麺でよかったら、家で御馳走するよ。」
悪いですね。お願いしましょうか。
話しをしていたら、ガキが海から上がってきた。
相手が女性だからか、全く恥ずかしがらない。
前も手で覆わず、いつもの明るい笑顔で話しかける。
「こんにちは、おばさん。
裸でごめんなさい。」
おばさんも笑い返した。
「お嬢ちゃんも、裸で泳げるのは今年が最後だね。
私も子供の時は、水着なんか着なかったよ。」
ガキは、あっという間に人の心をとらえるみたいだ。
「海で濡れたまま服を着ると、後で気持ちが悪いよ。
おばさんの家で身体を洗いなさい。
すぐそこだから。」
「おばさん、ありがとう。
そうさせてね。」
先に立って歩くおばさんの後ろに、ガキは自分の服を抱えて
裸のまま歩いて行く。
前は抱えた服でかくれているけど後ろから歩く俺には、ガキの
引き締まった尻が歩くたびに動くのが丸見えだ。
作業着を着たおばさん、全裸のガキ、また服を着た俺。
でも、全然違和感はなく美しい。
松林の中を歩くガキの裸体が、周囲の景色に溶け込んでいる。
3分も歩かず、おばさんの家に着いた。
ガキは家の外に引かれた水道の水をバケツに受けて頭から被る。
「わー、こっちの水の方が冷たいね。」
元気なはしゃぎ声だ。
見ていた俺もおばさんも一緒に笑った。
おばさんから、素麺を御馳走になった。
ガキがテーブルを拭いたり箸を揃えたり、おばさんの手伝いをする。
「いただきまーす。わー、おばさん、とっても美味しいよ。」
無邪気な声におばさんはニコニコ笑っている。
食べ終わると、おばさんより先にガキが食器を洗う。
片づけながらも、
「おばさん、この食器ここでいいの?」
「このお皿の絵、素敵だね。」
と、おばさんに話しかける。
おばさんが嬉しそうに答える。
おばさんは独り暮らし。息子夫婦と孫は遠くにいるんだ。
ほんの1時間居ただけだったけど、おばさんがガキと別れがたいのが分かる。
「おばさん、ありがとう。お手紙書くね。」
「また、お兄ちゃんにお願いして、連れてきてもらうから。」
車の窓から顔を出して、おばさんに手を振り続けるガキ。
どうして、ガキは行く先々で、人に好かれるんだろう。
人を幸せな気持ちにさせるんだろう。
どんな大人になるんだろう。
いや、どんな大人になってもガキは俺の天使だ。
それは変わらないはずだ。
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