昨日、ガキを連れて実家に帰った。
ガキが、ものすごく緊張してる。
一回来てるじゃないか。心配するなよ。
「うん、そうだけど・・。私が、悪い子だって分かったらどうしよう?」
何を言ってるんだ。お前のどこが悪い子なんだ。
「だって、お兄ちゃんに迷惑ばかりかけてるし、それに・・」
うん、それに何だい?
「私、エッチな子だもの。嫌らしい子だもの。」
ばかだな。嫌らしくてエッチなのは、鬼畜の俺の方なの。
お前は、素直で愛らし良い子じゃないか。
心配するなよ。さあ、ついたぞ。車から降りよう。
朝、自分で焼いたスイートポテトを入れた箱を胸に抱いて、俺の後からガキが付いてくる。
玄関を入ると、家族総勢でお迎えだ。
「いらっしゃい。良く来てくれたね。」
「待ってたわよ。いつも息子が色々お世話掛けてるそうね。」
「やっぱり可愛いわね。お姉さんの妹にしちゃうからね。」
「俺達も、はやくこんな良い子が欲しいよな。」
はいはい、一応息子で弟の俺も「ただいま」なんだが・・。
「おじゃまします。おじさん、おばさん、お兄さん、お姉さん、お世話になります。」
ガキは初対面の人に絶対悪い印象を与えないよな。
ほとんどの人が、育ちが良い子」って感じるらしい。
けっして良い所のお嬢さんじゃないんだけど、母親の躾けなんだろうか?
それとも、持って生まれた品なのかな。
家に入るとすぐ、ガキがオフクロに何か言ってる。
「まあ、そんな事気にしなくていいのに。」
「いえ、お願いします。御挨拶させてください。」
おや、俺の実家に他に誰かいたっけ。
オフクロがガキを仏壇の前に案内した。
仏壇の前に神妙に坐って手を合わせてる。
目を閉じて俯いた顔が凄く可愛い。
俺も、あわてて手を合わせる。
御先祖様達はお見通しだろうな。
俺が鬼畜の末に、このガキという宝物を手に入れたことを。
いまさら、御先祖様に言い訳はしないつもりだ。
いや、もしかするとガキとの巡りあわせが、ご先祖様のおかげかも・・。
すぐ居間でガキのお土産のスイートポテトでお茶になった。
「へー、貴女が作ったの?すごいじゃない。」
「いや、良くできてるな。買ってきた物と思ったよ。」
「おいしい。お芋と砂糖とクリームだけじゃないわね。何入れてるの?」
ガキが居る間、話しの種は尽きないな。
「どう、6年になって学校は楽しい?」
「はい、先生も友達も、みんな良くしてくれてます。」
「今の小学校は勉強も大変でしょ?」
「ええ、でも、勉強も運動も先生が良く教えてくださるから。」
この子は、成績は学校1番で、児童会長で、スポーツ万能で、おまけに合気道してるんだぞ。
やっと、俺が喋れた。
「そりゃ、すごいな。大したもんだ。」
「あんたの子供の時とは、大違いじゃない。」
「あんたは、そんな良い子と遊んだこともなかったわよね。」
ああ、なんとでも言ってくれ。
ガキは俺と正反対の素晴らしい子なんだ。
夕食は、家で鍋パーティだった。
大勢で囲む夕食が、いつも一人で食べていたガキにはとても嬉しかったみたいだ。
夜、ガキが俺の布団に潜り込んできて胸に顔を寄せる。
「みんな、優しいよね。私、本当に嬉しいの。」
「お兄ちゃん、連れてきてくれてありがとう。」
布団の中で、ぎゅっとガキを抱きしめた。
俺の方こそ、ありがとうだよ。
お前は俺の誇りなんだ。
俺の天使なんだ。
さあ、おやすみ。明日は色々な所に案内するからな。
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