見事に遭難した。
現場の奥の高齢者集落が雪で孤立して、薬、食料品を届けねばならない。
警察、消防団では手が足りない。
一番若かったし、地理を知ってるから志願した。
チェーン履いた車で1時間、その後徒歩2時間、無事任務は果たしたが
帰りに見事に雪の斜面を谷川に滑落した。
腰まで雪に埋もれ、鬼畜時代の俺なら諦めていた。
でも、ガキに会いたいんだ。もう一度、細い身体を抱きしめたいだ。
必死に斜面を登った。左腕が利かない。折れてはいないが力が入らない。
切り立った崖の下で、どうしても動けずに一晩明かした。
翌朝、捜索隊が来てくれた。村の駐在さんが、真っ先に滑り落ちてきた。
病院に入れられ検査。左腕は打撲、肋骨2本骨折、あと頭を打っているから
念のための入院。
ガキを知る前だったら諦めてた。鬼畜だから、こんな死にざま出来すぎだって。
でも、今は死にたくない。俺自身のためにもガキのためにも。
思いもよらず、そのガキが病室に飛び込んできた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。大丈夫?大丈夫なの?」
どうして分かったんだ?どうやって来た?
「昨日のニュースで一人行方不明て出たから心配で・・。
会社に電話したら、お兄ちゃんだって言うから、あわてて来たの。」
会社って、俺の会社知ってたっけ?
「お部屋、お掃除したから分かるわよ。」
「会社の人に、親戚って言ってお願いしたら、連れてきてくれたの。」
参りました。健気なだけじゃないんだね。すごい行動力だね。
今朝8時に退院。昨夜、ガキは待合室で毛布を借りて休んだ。
会社は、明日一日休め、て行ってくれた。
甘えさせてもらおう。ガキのために。
でも、現場に行く前に、どうして写メ送ったかは、ガキ自身分からないそうだ。
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