仕事が間に合った。
昨日は6時過ぎにガキの家の到着。
疲れてないか心配してくれるガキを急きたてて、買い物に行く。
運動会は、家族と食べるお昼のお弁当が楽しみだろう。
「私、2年の時以来だよ。ああ、楽しみ。」
せっかく来ても、俺がやることは、ガキと一緒に買い物するだけ。
料理は全部ガキがした。
海苔巻きを作れるなんて思わなかったよ。
あと、鳥の南蛮、ごぼうサラダ、定番の卵焼き、イモきんとん。
夜のうちに下準備して、今朝は5時から作ってた。
一緒にお弁当の包みを持って学校に行く。
もう、場所取りは終わってるね。まあ、俺は片隅から見るから良いんだが。
ガキは児童会長として、台の上で決意表明をする。
「今日の為に積み重ねた練習の成果を、全て出し切りましょう。
途中、だめだと思っても、自分のため、チームのため、応援してくれてる皆のために最後までがんばりましょう。」
会場中から拍手が聞こえた。
「いや、小柄だけど、しっかりした女の子だな。」
老人夫婦が話してる。
俺の胸は、誇りで一杯だ。
俺のガキは立派だろう。
競技が始まる。
小学校の運動会なんて久しぶり見たよな。
女の子の中には、発育が良く体操着の上から乳首のシルエットが見えてしまう子もいる。
ガキのスポーツブラを買ってやって良かった。
昼の弁当、すばらしく美味かった。
ガキも明るく笑いながら食べる。
近くの子とおかずの取り換えっこもしていた。
良い笑顔だ。この笑顔を見に来たんだもんな。
午後の最初の競技が6年の徒競争、ガキの出番だ。
よーい、バン。
スタートした。
速い、ガキは速い。
コーナーでどんどん抜いて行く。
コーナーを抜けるあたりで2位だ。
その時、先頭を走ってたガキの横のコースの子が転倒した。
ガキは避けきれない。
続いて転倒した。
大丈夫か?倒れた後、転がったぞ。
先に倒れた子が立ち上がって走り出した。
それなのにガキはまだ立ち上がらない。
いや、やっと立ち上がった。
右足のひざの所が出血してる。
なんてことだ。ガキが怪我をしてる。
他の観客を押しのけて前に出た。
ガキに保健の先生らしい白衣の先生と救助係らしい子が走ってきた。
ガキに何か言ってるけど、ガキは首を横に振って走り出した。
右足が痛そうだ。引きずるように歩くぐらいの速さでゴールに向かってコースを走っている。
俺はゴール前に回り込んだ。
やっとゴールした。もちろん最下位だった。
とたん地面に倒れそうなガキを、抱き上げる。
保健野先生も近くに来ている。
「まず水で患部の土を洗い落とします
水道に来て。」
片足を引きずって歩こうとするガキを、両手でお姫様だっこして水道に。
ガキの細い足のひざ部分が薄く皮が剥げて、じくじくと出血している。
水道の流水に自分から足を出して汚れを洗い流すガキ。
傷は深くは無いが、幅が広く、複雑な形をしている。
薬が塗られ、ガーゼが貼られて、包帯を巻いてもらう。
洗った後、またお姫様だっこして、応援席の元の場所に戻る。
ガキが保健の先生に話をしていた。
「傷跡が残りますか?」
「気にしないで良いのよ。表面が薄く削られただけだから」
よかった。俺個人はガキが身体中傷だらけでも、なんら問題なしなんだけどな・・。
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