長野キャンプ旅行記2
話の流れが分からないので、曖昧な笑顔で「おはようございます」とだけ挨拶をした
「私達も今日からキャンプするんです」と品の良さそうな奥さんが話し掛けてきた
ご主人は何も言わずにニコニコしている
きっと仲の良いご夫婦なんだな~と想像出来た
お腹も空いたので、駐車場横の喫茶店に誘ってみた
犬を気に掛けながらも、車に入れて一緒に朝食を食べた
ご主人が定年退職後、お二人で旅を楽しまれて、経費削減の為と愛犬の為にキャンプをしているそうだ
奥さんが彼女を気に入ったようで、しきりに「一緒に温泉に行こう」と誘っていた
盛り上がる女性陣とは反対に、男2人はその様子を見て笑ってるだけだった
朝食を食べ終え、早いかな?とは思ったが管理人棟に行ってみると、前日泊が少なかったのでサイトが空いていて、直ぐに入れる事になった
管理人さんが予約の時の話を覚えていて、奥まった川の近くのサイトを薦めてくれた
トイレや調理場には遠くなるが、一番奥なので通り過ぎる人も来ないので、のんびりするには最適だと思いその場所に決めた
車に戻り、さっきのご夫婦に「空いてるサイトなら、入らせて貰えるようですよ」と教えてから入場した
GWの初日にも関わらず、前日からの利用者も結構居て、朝食中の前を車で通るのは気が引けた
ゆっくり進んで行くと、行き止まりになった
周りのサイトは利用者がまだ居なくて、貸切状態だった
昨夜からの雨で芝生が濡れているので、テントを後回しにし、スクリーンタープを設営する事にした
彼女は当然設営した事がないので、ポールを持つ係りにして、1人で組み立てていった
ただのポールが家の形になり、幕をかけると立派なダイニングスペースが出来上がり、彼女は楽しそうにはしゃいでいた
テーブル・コンロ・ランタン・クーラーBOX・調理台等を中に並べ始めると「大人のママゴトみたい」と笑い出した
確かにママゴトの道具に似てるなと思った
2人しか居ないのに、イスを多く持ってきてしまったので、足置き用に贅沢に4脚セットした
各々の道具の使い方を説明しながらセットしたので、いつもより時間が掛かった
取り敢えずテント以外は設営出来たので、お湯を沸かせてコーヒーを飲んで休んでいると、朝ご一緒したお二人が訪ねて来られた
「管理人さんにサイトを選んでいいと言われて、見て回ってるんだけど、お邪魔じゃなければ隣に入っても良いかしら?」と奥さんに聞かれた
変な人に隣に入られるよりは、少しでも知っている人の方が安心なので「どうぞ、お隣にいらしてください」と答えた
「じゃ、お言葉に甘えますね」と笑顔を返され、彼女は「犬と遊べる」と言って喜んだ
サイトの中に車を停めると使える場所が狭くなるので、行き止まりの立地を生かして車道に車を停めていた
ご主人も気が付かれて「並べて停めても良いですか?」と聞かれたので、邪魔にもならないので「とうぞ、並べて停めてください」と答えた
まるで引っ越しのご近所の挨拶のようだ
お隣が設営中ず~と彼女は犬と遊んでいた
本当に彼女は犬好きなんだなと思う
ウチのサイトはコールマンで揃えていて、お隣はスノーピークで揃えているので、まるでメーカーの展示場状態になった
キャンプ道具の格ではお隣の方が上なので、少し負けて悔しく思った
知ってれば…
そんな俺の気持ちなんて関係なく彼女は隣の犬と遊び続けていた
サイトの芝生も乾いてきたので、テントも設営した
中にエアーマットを入れると、子供のように彼女が喜んだ
昼になったので、初挑戦の燻製料理の準備を始めた
定番ならサーモン等の魚も作るのだろうが、食べないので(俺が)ベーコンとソーセージを試しに燻る事にした
心配そうに見る彼女の前で、黙々と作業を進め、匂い付けに選んだチップに火を点けた
この日の為に一週間も前から肉を加工してたなんて彼女は知らない
後は何もする事無く、煙と時計を眺めるだけである
しきりに匂いが嫌なのか?好きなのか?分からないが、隣の犬に吠えられた
約1キロの豚肉を燻製させていたので、時間がかかる
夕食はカレーの予定なので、煮込む準備も始めた
各サイトに流しまでついているので、本当に便利だ
野菜を切ったり彼女がしてくれたので、俺はスモーカーとにらめっこ
良い薫りとは思えず、不安になった
そろそろ完成かと思い開けてみると、モクモクと煙が立ち上った
隣のご主人が「燻し過ぎましたね。チップの量が多すぎたかな?」と近付いてきた
「初めてやってみたんですが、食べれますかね?」と不安になったので聞くと「食べれる・食べれる。ちょと薫りが強くなってる位で、味自体は下処理が勝負になるから…」と教えてくれた
取り出した肉の塊は、茶褐色の良い色になって、表面をナイフで削って食べると、慣れない匂いを気にしなければ、塩味が効いて美味しい生ハム?は言い過ぎだが、ご飯が進みそうなベーコンが完成した
彼女には好評で、美味しいと言ってくれた
普段パンは食べないのだが、作る手間を省くために持ってきたパンに目玉焼きとレタスを一緒に挟んで食べると、美味しさが増したので、彼女の提案でお隣にもお裾分けした
お隣にも好評で、スモーカー料理が好きになった
それでもまだまだ残ってるので、当分朝食の定番になりそうだ
満腹になったので、ゆったりしていると、徐々に入場者が増えてきて、周りのサイトも全て埋まっていった
ウチとお隣のサイトは、車を外に出しているので広々と使っていたが、同じ大きさのサイトでも車を入れていると狭く見えた
しかし、川に降りる通路がサイトの横にある事に気付いてなく、チビッコ集団の通り道になってしまった
まだ水温は低いと思うが、チビッコ達には関係ないみたいで、次々と降りて行き、賑やかになった
朝には川のせせらぎを楽しめたのに…
周りを見渡すと、犬連れのキャンパーが多く、奥まったこの一画だけはドックラン状態で犬が放されていた
どの犬も慣れているのか?躾されていて、飼い主の近くで遊んでいる
お隣の犬だけは、ウチのサイトにも、タープにも平気で入ってきて我が物顔で寝そべったりしていた
彼女はキャンプそのものより、たくさんの犬と過ごすのが楽しいようで、まったりイスにふんぞり返ってる俺を置いて、ご近所犬巡りを楽しんでいた
その頃には良い天気で、朝の雨が嘘のように晴れ渡っていた
当然気温も高くなり、半袖でも過ごせる位になった
寝不足と運転の疲れで、鍋の見張りをしていないといけないのに、昼寝をしてしまった
「まだ煮るの?」との彼女の声に起こされ、「もう止めても良いんじゃない」と少し寝惚けながら返事をしたが、燃料のガスが既に無くなっていたようで、焦げなくて助かった
大量に入れた玉ねぎの姿はなく、大きく切ったジャガイモや人参さえも殆ど無くなる程煮込んでいた
夏のキャンプなら食事の後にお風呂に行かないと汗をかいてしまうが、この季節なら早目に風呂に入っても汗をかかないと思ったので、少し早いが温泉に入りに行く事にした
留守を頼もうとお隣に声を掛けると、同じ考えだったようで「1台で行きましょう」と誘われてしまった
断る理由も無いので、車を出そうとすると「犬を連れて行きたいので、私の車に乗ってください」と言われた
臭いや毛を気にしなければいけないのは、飼い主のマナーだから仕方無いのだろう
温泉セットを持って、彼女と後部座席にお邪魔させて貰った
行き先を一番の近場の温泉施設に決めて出発
道中はキャンプ話に花が咲き、明日からの献立や行動予定等を話した
ご主人が料理好きらしく、簡単な燻製料理を教えてくれる事になった
温泉では2時間後を待ち合わせ時間に決めて、各々入って行った
体を洗い湯船に浸かっていると、隣にご主人が来て「若い彼女で良いですね~」とか「彼女の両親がよく許しましたね~」とか色々質問攻めをしてきた
無口な人なんだろうなんて勝手に決め付けてたので意外な感じがして、答えをはぐらかせていた
確かに親子程の歳の差は好奇の的なんだろう
少し逆上せてきたので、露天風呂に逃げた
内湯より人が多く、折角の景色が台無しになっていた
子供が走りおっさんが裸で寝ている光景はまるでスーパー銭湯のようだった
明日からは温泉施設ではなく、旅館に温泉を借りに行こうと心に誓った
十分堪能出来たので待合室向かうと、まだ30分も前なのに女性陣は帰ってきていた
彼女「どうだった?」
俺「スーパー銭湯みたいだけど、ゆっくり出来たよ」
彼女「女湯は最悪だったよ。子供が一杯だし、場所取りババァが占拠してるし、ドライヤーは壊れてるし、明日からは違う温泉にしよ」
俺「そうだったんだ。GWだし、仕方無いけどね」
彼女「多いのは仕方無いけど、マナーが悪すぎる!」
俺「ハハハ。随分怒ってるね。じゃ、明日からは少し遠出になるけどいい?」
彼女「いいよ、遠くても」
俺「よっぽど嫌だったんだね」
彼女「もうここには来ない!」
風呂好きの彼女がここ迄怒るのだから、相当大変だったのだろうと思った
隣の奥さんも同感だったのか?彼女が怒ってる横で、口も挟ますにこやかに頷いていた
サイトに戻り、明るいうちに料理を済ませようと取り掛かった
彼女にカレーを任せ、俺はご飯を炊く事にした
飯盒でご飯を炊くには経験がものをいう
一応米は2合づつ小分けにしてきたが、妙にお腹が空いたのと外で食べると多く食べる分を加味して、二人で約3合の炊く事にした
水加減を手で測っていると「そんなやり方で美味しく炊けるの?」と彼女は心配そうだ
「大丈夫!任せといて!」と自信満々に答えた
吹き溢れ分とゴッチン飯(米の芯が残ったご飯)防止に少し多目に水を入れれば失敗しないのは経験上知ってるからだ
米を炊く時はいつも♪始めチョロチョロなかパッパ~♪と歌ってしまい「子供みたい」と笑われながら見張っていた
ボーイスカウト経験から、飯盒の上に石を置き圧力をかけ、拾ってきた木で沸騰する内部の音が聞ける事を彼女に教えて上げた
コトコト音がして蒸気の量が減ったら出来上がりと教えると、ず~と飯盒からの蒸気を見つめてる彼女が可愛らしかった
蒸気が減ると「減ったよ・減ったよ」と大騒ぎ
俺は洗うのは面倒だがオコゲが好きなので、火力を10秒程強くしてから止めた
飯盒を逆さにして火蒸しをすると「溢れたりしないの?」と心配してくる
経験が無いから仕方無いが、何をしてても質問攻めだ
「こうした方が洗う時楽なんだよ」と教え「今回はガスバーナーでやったけど、薪で炊いた時は煤が付くから、この時に葉っぱで擦って煤を落とすと良いんだよ」と教えてやった
「ふ~ん」と納得してる彼女を見て、俺はお婆ちゃんの知恵袋状態なのに気が付いた
煮込み直したカレーから良い匂いがして空腹感が更に増し、お皿に大量のカレーを盛り付けた
レタスのサラダも作ってくれていたが、2人共カレーを夢中で「美味しい!」を連呼しながら食べた
珍しく彼女もおかわりをして、満腹になったようだ
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