長野キャンプ旅行記8
炭に火を点ける正解は、新聞紙を固く丸めて、井形に組むのでは無く、密集させ新聞紙の上に山積みにして空気を送り込むのが一番早く確実な方法です
炭はそれ自体単体では燃えにくく、熱を長く与えないと燃えないので、スカスカの井形では上手く熱が溜められないからです
何枚もの新聞紙を灰にしても火が移らないのでイライラしたみたいで「ダメ!降参!」と言い出した
代わりに火を点けてやると「最初に聞けば良かった」と残念がっていた
ご飯も炊けて、コンロの炭も落ち着いてきたので焼き肉を食べ出した
奮発して飛彈牛の肉を買ったので、タレには浸けずに塩だけで食べた
贅沢にステーキ用の肉を食べ易い大きさに切って焼いているので、口に入れると肉汁が出てくる
薄く切った肉より何倍も美味しく感じるのは、この肉汁のお陰だと思う
厚みはあるがとても柔らかく、すぐに噛み切れる
彼女も「美味しい・美味しい」と喜んでくれた
レタスに挟んで食べると、食感が変わってまた食べられる
2人共満腹になるまで食べた
食後はまったりとした焚き火タイムだ
途中からお隣さんも参加して、話に花が咲いた
数日同じパターンの生活をしていると、何日なのか?何曜日なのか?が分からなくなってしまう
こんな楽しい生活が永遠に続くなら、本当に幸せだと思うだろう
そんな事を考えながら話をしていた
お隣さんは、明日違うキャンプ場に移動するそうで、少し寂しく感じたが、数日間色々教えて頂いたり、楽しい話を聞かせて貰ったり感謝の気持ちで一杯だ
一期一会とはこの事なんだなと噛み締めた
周りのキャンパー達も入れ替わり、若者組が増えていた
昼間は若者組は騒がしい位だが、夜になるとオッサン組が酒が入って騒ぎ出す
昼間はサイトに居る時間が少ないので気にならないが、夜に騒がれるのは迷惑だ
自然に近い解放感で羽を伸ばしてストレスでも解消してるつもりなんだろうが、ここはキャンプ場でサイトの区切りはあるが壁が無いので声が響く事を自覚して欲しい
酒を飲むなとは言わないが、周りに気配り出来るだけの理性は残しておいて欲しいものだ
そんな少し騒がしいなか、お開きにしてテントに入った
焚き火にあたっていたので顔が温かくなって、アルコールも入って無いのにお互い顔が赤くなっていた
先に彼女が気付き、顔に手を当てて「温かい~」と言ってきた
「どれ・どれ?」と言って彼女の顔に手を当てると、俺の手の方が温かく「こっちの方がいい」と言って手を取られてしまった
腕枕をしながら手まで取られた変な格好で寝た
やはりキャンプは夏の暑い季節ではなく、朝夕が寒く感じる季節の方が、こうして抱き合って寝る事が出来るので、最適な季節に思える
夏なら抱き合うどころか、寝袋にも入らないだろう
今回は連日晴天で、日中こそ半袖で過ごせるが、夜になると急に冷え込んで、上着まで着ないと寒くて仕方ない位だった
初体験の彼女には、仲良く寝れるこの季節の方が良かったように感じた
きっとこれでキャンプが好きになってくれるだろう
太陽の明るさと、種類の分からない鳥のさえずりで目を覚ました
体の違和感も消え、普段通りに立ち上がれた
身支度を整え、朝食の準備をする
彼女はお隣の奥さんと、毎朝の散歩に出掛けた
昨夜騒がしかったオッサン組サイトでも朝食の準備が始まっているらしく、朝から賑やかな声が聞こえてきた
どうやら徹夜した人が居るらしく、朝から異様なテンションで騒ぎ出した
小さい子供も近くには寝てるのに…
「ウルサイ!」大きな声が聞こえた
堪忍袋の限界に達した誰かが叫んだのだろう
反省したのか?一言で静かになった
違うグループに注意される前に、誰か一人でも注意する人は居なかったのだろうか?
同年代よりは上に見えるのに情けなくなった
ご飯が炊けて、朝食の準備が整うと、丁度見てたかのタイミングで彼女が帰ってきた
残り少なくなったので、ベーコンのキュービックステーキと目玉焼き・味噌汁のいつもの和洋折衷朝食を作った
残り全てを焼いたので、朝食とは思えない量と豪華さに見えた
昨夜も焼き肉だったので、彼女には重たかったらしく箸が進まず、サラダを中心に食べていた
残す訳にもいかないので、俺がベーコンを担当したので、朝から満腹になってしまった
動くのも嫌な位食べたので、後片付けを彼女に任し、イスにふんぞり返った姿で焚き火の番をしていた
今日の予定を考えて無かったので、ガイドブックを眺めていたが、これと言った案も浮かばずに、ただ見ていただけだった
洗い物の終わった彼女が、「手が冷た~い!」と言って俺のほっぺたに当ててきた
余りの冷たさにビックリして、彼女の手を振りほどき立ち上がった位だ
米を磨ぐときに水は触っていたので、冷たいのは分かっていたが、温かい焚き火にあたってリラックスしていたので、本当にビックリした
驚いてる俺を見て、彼女は大笑いしている
心臓が悪ければ、危なかったかも知れない
何をするか予想をしておかないと、身がもたないと思った
お隣がキャンプ場移動の為に撤収を始めたので、彼女とお手伝いし、最後に再会を願いながら別れた
その後の予定を考えて無かったので、彼女と話し合った結果、温泉巡りの続きをする事にした
今日は昼前に出発するので、あまり気の進まない温泉施設からにした
旅館の日帰り利用は、清掃の関係で昼過ぎからの所が多いからだ
先日貰ったイラストマップには、車移動で半径1時間以内の温泉地が10箇所程掲載してあった
その内近場から4箇所は既に訪問済みなので、前のような梯子状態では廻れない
スキー場に隣接している大きな施設に行ってから、ガイドブックにも掲載されてる旅館に向かう事にした
最近出来たらしいスキー場の温泉施設は、スーパー銭湯のように多種多彩なお風呂があって、勿論温泉なので気持ちよく入れた
今までの温泉にはなかったサウナがあったので、予定時間を少し越えて待ち合わせ場所に戻った
待っていると思ってた彼女の姿が無く、探す宛もないのでその場で待っていると「ごめんなさい!髪の毛乾かしてたら遅くなっちゃった」と焦りながら小走りで駆け寄ってきた
話を聞くと、やはり彼女もサウナに何回も入り、時間を見てなかったようで、急いで出てきたそうだ
距離的に後一軒行ければ良いので、もっと余裕のある待ち合わせにすれば良かったと反省した
先月迄滑走可能だったスキー場も、山沿いの木陰になっていて日の当たらない部分には少し雪が残っていたが、流石に日の当たる部分は、連日の晴天もありすっかり地肌が出ていた
時間があったので、少しスキー場を散歩しながら、昔スキーが好きで毎年通っていた話をすると、来シーズンはスノボを覚えたいので連れて来て欲しいと頼まれた
俺がスキーから離れた理由は、仕事に一生懸命になってたという理由もあるが、一番の理由は、一緒に行っていた連中が、結婚・出産となかなか自由に使える時間が無くなり、1人で行く程の情熱も失って、段々行かなくなった経緯があった
彼女がウィンタースポーツに興味があるなら、願ってもないカンバックのチャンスだ
先月からリターンライダーになり、益々仕事でポッカリ空いてしまった時間を取り戻すアイテムが見付かった気がして嬉しかった
そうなると元々大好きなウィンタースポーツの話題なので、彼女にスノボよりスキーなら教えてあげるとか、道具はいつ買うのが得だとか、聞かれてもいないのに話捲った
彼女に「好きなの分かったから、友達も一緒に連れてってね」と言われて、冷静に戻れた
友達も一緒に連れて行くって事は、彼女のお守りをしなくても勝手に滑っていてくれる訳だから、1人で自由に滑りたい俺にとっては、願ってもない申し出だった
即答で「いいよ!車に乗れる人数だったら連れて行ってあげる」と答えた
答えた後に気分は来シーズンのスキーの事を考えていた
俺の車は確かに四駆なので、タイヤをスタッドレスに変えれば雪道にも不安はないが、フルエアロに車高も落としているので、雪深い時に走ると、きっとラッセル車になってしまう
それより、エアロが割れた修理費を考えると、雪道なんてとんでもないし、ウィンタースポーツには似ても似つかない車種なので、かえってカッコ悪く思える
買い換えたばかりで愛着もあるので、車を乗り換えられないし、買い足すには駐車場の問題もある
困った!
なんて考えながら歩いていると「お腹減ったの?」と彼女が心配顔で聞いてきた
俺が深刻な顔で黙り込むと、空腹だと思ってる事に腹が立った
「お腹は減ってないけど、考え事してた」と答えると、「へ~。お腹鳴ってたよ」と笑いながら言われた
全く気付いて無かったので「黙ってたら腹が減ったと思われたか?と思ったよ」と言うと「そんな失礼な事は、思ってても言いません!」とからかわれた
そんな軽口を交わしながらも、俺の頭の中は車の事で埋まっていた
スキー場を1周した頃には自分でも自覚出来る位お腹が減っていた
昼の混雑は終わった位の時間だったので、温泉施設の中で食べる事にした
やはり彼女は魚料理を食べ、俺は相変わらす肉料理を食べた
移動時間を考えると、丁度良い時間になったので、次の旅館の温泉に向かった
道中でさっきの車の事を思いだし、今借りてる1BOXを借りれば良い事に気が付いた
この車はフルエアロは着いているが、取り外し易いハーフタイプのフロントスポイラーだし、第一持ち主が毎年スノボに行く時に乗ってる筈だ
日程さえ許せば貸してくれる筈だし、休みに合えば女子大生と行けると言えば運転もしてくれるだろう
早速帰ったら交渉してみよう
良からぬ事を考えながら運転してると、多分気持ち悪いニヤケ顔になってたのだろう
彼女「何考えてるの?」
俺「えっ!?何も考えて無いよ」
彼女「絶対ウソ!悪い事考えてますって顔に書いてあるもん!」
俺「顔に?そんな事無いけどな~。きっとスキーの話を思い出して嬉しくて笑って見えたんじゃない?」
彼女「友達も連れて行くから?」
俺「違うよ!友達なんて邪魔なだけだから」
彼女「ふ~ん。それが嬉しいのかと思ったから頭にきてたけど、違うんだったら許してあげる」
俺「そんなに友達に興味はありません!あるのは久しぶりのスキーが楽しみになっただけだよ」
彼女「そんなに楽しいの?学校でもやってる子は皆楽しいからやれ!って言うんだよね」
俺「論より証拠!やってみて楽しいと思えば続ければいいし、つまらなければやめれば良いだけだよ。合う合わないは誰でもあるからね。ただ、楽しいと思うと思うよ」
彼女「何で分かるの?」
俺「運動好きで怖いもの知らずだから、上達し易いんだよ。逆に上手くなり難いのは、慎重派の人かな?」
彼女「確かに。上手くなれそう」
俺「後は、間を開けずに行くことかな」
彼女「じゃ、お金かかるね。貯めとかないと…」
俺「そうだね。まだ何ヵ月もあるから大丈夫だよ」
と上手く悪巧みを誤魔化せた
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