長野キャンプ旅行記5
トレッキングと言っても、軽登山になるようなハードなものから、散歩の延長のハイキングみたいな物まで一纏めにした言葉である
今回はハイキング気分で十分だと思ったが、一応失礼の無いようにしないといけない
山に入る時はジーンズ等は避けるべきだ
汗や雨で濡れた場合、重量が非常に重くなり肌に張り付くので動きが取れなくなってしまう
濡れたジーンズは生地も伸びず、乾きも遅いので遭難時は体力を奪うだけのアイテムになってしまう
最近、中高年者が山岳事故を起こして騒がせているが、服装も原因の1つに挙げられている
理想的な服装は、速乾性のある伸びる生地
昔から登山家が愛用しているウールなどは保温・保湿に優れているが、濡れても比較的早く乾くし、収縮性に優れている
ニッカポッカ(土方や鳶職のとは違う)等もウール製品で出来ているのはその為だ
安く済まして、暖かい時期ならジャージなんかでも動き易く適している
ファションを重視するなら、流行りのフリースなんかも色んな色も選べていい素材と言える
彼女に買ったのはフリースの服と防水加工のしてあるアウター、パンツは綿素材だ
俺は綿パンにウールのシャツにした
靴はスニーカー等は安くて良いが、岩場や水溜まりを歩くと滑るようになるので、より深いブロックの靴底を持つトレッキング用が無難だ
夜に作っておいたおにぎり・目玉焼き・味噌汁と定番の朝飯を作って食べた
昼前出発と約束したので、着替えも済ませて待っていた
昼飯を食べるかどうか迷ったが、キャンプに来てから食べ過ぎの感があるので敢えて食べずに待っていた
お隣も昼飯を作っている雰囲気はなかった
ご夫婦が揃ってサイトに誘いに来てくれた
やはり心得た服装をしていたので、何度も経験のある人だと分かった
4人揃ったので山歩きに出発した
キャンプ場は山の中腹に位置し、国定公園に隣接しているので、公園の方に向かうとばかり思っていると、山の方に登りだした
途中で滝に向かうと分かった
冬季には全面凍結してとても美しい滝なんだそうだ
道は細いが通行量はあるらしく踏みつけられているので歩き易い
彼女は楽しそうに犬と遊びながら歩いている
始めは平坦だったが、段々斜度が増していき、滝の手前では沢登りか?と思うほどの角度を登って行った
滝壺に着くと、水が綺麗なので滝全体が青く見えて、引き込まれそうに感じた
ご主人が背負っていたリュックを下ろし「昼飯はまだ食べてない?」と聞かれたので「こちらに来てから食べ過ぎてるので、歩いてお腹が痛くなっても迷惑を掛けると思って食べてません」と答えた
奥さんが「じゃ、お腹空いたでしょう?」と彼女を見ながら聞いた
彼女は「ぜんぜん空いて無いですよ。楽しくて考えて無かった」と笑いながら答えた
ご主人が「滝に着いたらコーヒーでも飲もうとビスケットを持ってきてるから、食べればいい」と言ってくれた
滝の奥に有名な湧水があるらしく、水を汲むためにご主人と2人で滝登りに挑戦する事にした
彼女と奥さんは留守番だ
滝登りと言っても、滝の中を進むような本格的なものじやなく、滝に沿って道があるのでそこを登るだけだ
ところが途中から岩場になり、飛沫で濡れた岩肌が滑り易く、危うく滑落するところだった
ご主人は慣れているのか、先に先にと進んで行き、遅れないように付いて行くのに必死だった
無事に登りきり下を見た時は、余りの高さに足がすくみそうになった
汗でベトベトになった顔を湧水で洗い、持ってきたペットボトルに入れて降りた
登りの何倍も慎重になりながら降りたので、時間的には同じ位掛かった
滝壺に着くと、待ちくたびれたのか?岩の上で2人揃って寝転んでいた
ご主人がその光景が面白かったらしく、何枚も写真に撮っていた
気温も高く長袖を着ていたので汗だらけになってる俺に「泳げば気持ちいいんじゃない」と彼女がからかってきた
ご夫婦と一緒でなければ、滝壺に入りたい位暑かった
そうもいかないので、ズボンの裾を捲り足湯ならぬ足水状態で体を冷やした
タオルを濡らしてオデコにまで当てる徹底ぶりを皆に笑われた
汲んできた湧水で入れたコーヒーの味は格別で、体を冷やしてるのか?温めているのか?よく分からない状態で飲んだ
小1時間程笑いながら過ごし、キャンプ場に向かった
途中来る時には気がつかなかった動物の足跡を発見したり、鳥の声を聞きながら下っていった
キャンプ場に着くと、着ていた服は汗でベトベトになってしまったので、着替えて管理棟にあるコインランドリーで洗って乾燥機に入れた
夕方近くなっていたので、お風呂と買い出しに出掛ける事にした
昨日の旅館が気に入ったらしく、彼女の要望で同じ旅館に行く事にした
運転していると、日頃の運動不足の所為で足が筋肉痛になりかけているのに気が付いた
ゆっくりマッサージしながら入ろうと思った
2回目の訪問なので要領も分かっていて、ゆっくり温泉が楽しめた
いたせり・つくせりの、この旅館に泊まりたくなった
安い料金で温泉に入らせる利点は、こんな気持ちにさせる効果もあるのだろう
お金を取りながら広告も出来るなんて、始めに考えた人は凄いなと思う
旅館・日帰り利用者双方が満足出来るなんて画期的だ!なんて考えながら温泉に入ってるのは俺位かも知れないが…
湯船でマッサージしながら入っていると、足だけでなく全身が筋肉痛になっている嫌な予感がしてきた
各関節の動きに違和感を感じる
満足してロビーで彼女を待っていると、キャンプ場で見掛けたグループを多く見付けた
この旅館はキャンプ場利用者の間では有名だったのかも知れない
風呂に入るだけには結構離れているのだが…
満足そうに鼻歌まじりの笑顔で彼女が出てきた
「ここのお風呂ホントにいいよ」と一緒に来てる人に紹介してどうするんだ!とツッコミたくなるような事を言ってきたが、満足そうなので黙っておいた
今日からの献立を考えて無かったので、買い出しをしながら話し合った
俺「何食べる?」
彼女「お腹空いた~」
俺「俺も。何にしようか?」
彼女「お腹空いた~」
話しにならない!
俺「じゃ、簡単に出来るから焼き肉をしよう」
彼女「また肉なの?」
確かに…
俺「魚は嫌だし、スパゲッティは茹でるの面倒だし、カレーは食べたし…」
彼女「じゃ、夜は寒くなるから鍋にしよう!」
俺「なるほど!切るだけだしね。良いアイデアだ。採用決定!」
彼女「♪ナベ・ナベ~♪」
彼女はご機嫌になり、訳の分からない唄を歌いながら買い物をした
野菜を買い込み、肉は減らされて団子にされ、温まるように味噌仕立てにするそうだ
キャンプ場に帰ると、彼女は買い物のテンションのまま料理を始めてくれたので、俺はコインランドリーの服を取りに行ったり、鍋をかける焚き火の準備に取りかかった
ただの鍋料理をダッチオーブンで作るのはオーバーな気がしたが、彼女の切っている野菜の量が入る鍋はこれしかなかった
傍目には手の込んだ料理に見える事だろう
沸騰した鍋に次々と野菜が入れられて、何人分?と聞きたくなる位作った
ご飯もサラダも無く、ただ鍋料理だけを食べる
2人で食べると思った程大変な作業では無く、汁以外は食べきった
汁も良い出汁がでてるので、明日の朝食の味噌汁にするそうだ
季節が夏だと出来ないが、まだ寒い季節ならではの方法だ
満腹になった2人は、焚き火の横で昼間に撮った写真や動画を見て過ごした
動画の中の足水をしている俺は、酔っぱらいのような赤い顔をして汗を吹き出し、まるでマラソン後の選手のように見えた
一方、お隣のご主人は還暦も過ぎてるにも関わらず涼しい顔をしていて、もっと運動しなくては!と心に誓った
ご主人と2人で湧水の所に行ってる間の様子も動画で確認出来て、彼女も奥さんに遊んで貰ってたので安心した
簡単に録画・再生出来るデジカメは本当に便利だ
お隣さんにもデーターにして送くろうと2人で話し合った
笑い合っていると、隣から犬が出てきた
イスを持ってお2人も来られて、恒例になった焚き火談義が始まった
ご主人が1人でお酒を飲むのが寂しいと言い出し、お付き合いをする事にした
彼女は懲りてるのでお酒には近付かなくなっている
奥さんもアルコールには弱いらしく、彼女と「お酒なんて飲めなくても楽しめる」と意気投合していた
焚き火の温かさと、昼間の疲れ・満腹・アルコールと睡眠薬より効き目のある条件が揃ったので、誰よりも早く眠たくなった
盛り上がっている会話の腰を折るのも気が引けるので、座ったまま寝てしまっていた
彼女に起こされ、お開きになった
テントに倒れ込むように入ったまでの記憶しか残っていない
朝、顔の寒さで目が覚めた
腕にはしっかり彼女を抱いて寝ていたようだ
朝日が昇り周りはすっかり明るくなっていた
連日の晴天続きで日中は半袖で平気だが、朝の寒さで季節を逆戻りさせられている気がする
何時に寝たのかさえも分からない状態だが、時計と眼鏡は所定の位置に置いてあり、彼女が外してくれたのかと思っていた
暫くすると彼女も目が覚め「おはよ!大丈夫?」と聞いてきた
俺「おはよ、テントに入った後の記憶が無いんだけど、時計や眼鏡を外してくれた?」
彼女「自分で外してたよ。その後寝袋の上で寝始めたから、中に入れるの大変だった」
俺「ゴメン。覚えてないや。ありがとう」
彼女「あんなになったの始めて見た。寝てる人って重いね」
俺「どうやって中に入れてくれたの?」
彼女「怒らない?」
俺「怒らないよ」
彼女「始めは持ち上げようとしたんだけど、全然動かなかったから、寝袋を広げてから足で押して転がした。ごめんなさい」
俺「ハハハ。気にしなくていいよ。ありがとう、お陰で風邪も引かずに助かったよ」
彼女「本当に重たかったんだからね!眠くてもこれからは1人で布団まで行ってください」
俺「分かったよ。ギリギリまで我慢しないようにします」
と言ってキスをしたが、膨れっ面になっていた
寝袋の中でイチャイチャしながら話をしていると、周りの子供の元気な声がしてきたので、起きる事にした
寝ている時には気付かなかったが、起きようとすると腕に力が入らない
筋肉痛だ
当然足も筋肉痛なので、歩き方がぎこちなくなってしまう
目ざとく見付けた彼女に「カッコ悪いよ!」とからかわれ、顔を洗って挨拶をしたお隣のご主人に「昨夜は疲れてたみたいだけど、今日はロボットみたいだね」と笑われた
自分でも痛さより、余りの動けなさにビックリしていた
焚き火に火を入れ、昨日の鍋を温めて具材を足し、新しくご飯だけ炊いて朝食にした
片付けも終わり、予定を考えたが動く気にもならなかったので、1日のんびりを彼女に提案した
焚き火の薪を買い足しに管理棟に行くと、管理人さんから周辺の温泉が書いてあるイラストマップが貰えた
見てみると、お気に入りの旅館も案内されていて、キャンプ場の人に会ったのも理解できた
お隣の分も貰いご主人に渡すとお礼を言われた
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