自然な流れでキスを迫る少女に、僕も周りのことなど忘れ、顔を前に突き出し始めていた。首を傾げ、もう少しで少女のぷるんとした唇に合わせようとした瞬間。
大音量のブザーとともに、大波タイムは終わりを告げた。我に返った僕は、公衆の面前でいまあったばかりの小学生にキスをしようとしていたことを認識して、慌てて少女を離した。
ゆっくりと片目だけ開いた少女はキスをねだる唇から不満を訴えるツンとした唇に変わった。
「もぅ~、終わっちゃったじゃん!」
でも次の瞬間、口角を上げてニヤついたのは、僕をからかっただけだったのかもしれない。そう思うとちょっと負けた気がした。
「君もそんなことばかりしてないで、早くプールからあがらないと!」
「ミサキだよ!」
「えっ?」
「君じゃなくて、ミ~サ~キ!」
そう言うと、キ~に合わせて目をぎゅっとつむり、口を真横に伸ばした。
「ミ、ミサキちゃんね!はいはい、ミサキちゃん、プール上がりましょうね!」
「は~い、お兄ちゃん!ワタシヲキシマデツレテッテー」
と周りに聞こえる大声で、再び僕に抱きついてきた。周りに残る人達も一瞬何事かとこちらを見るが、一瞬にして兄妹と誤認し、微笑みや笑いを見せていた。
この子は策士だと、つくづく思い知らされた。ミサキを置いて出ることもできなくなったからだ。
はいはい、とお兄ちゃんのように、少女の浮き輪を引っ張ると足のつく所までやってきた。すると今度は僕の手をミサキの手ががっしりと握り、まさに拘束された。
「へへっ、もっと遊ぼ!あれ!あれに行こう!」
そう指差す先にはさっきまで悪ノリで滑っていたウォータースライダーではなく、家族向けの浮き輪でゆっくり滑るタイプがそびえていた。スライダーの途中にはチューブのトンネルになるような場所があり、ミサキがそこでいたずらを仕掛けようとしているなと、すぐにわかった。
でも僕もロリコンの端くれ。それならばと受け立つことにした。
「はいはい、わかりました。ミサキちゃん、こちらにどうぞ!」
そうエスコートすると、少し驚いたかのような表情をしたが、すぐに満面の笑みになった。
うん!!
元気に返事をすると、手首を握る手をはなし、恋人繋ぎで手を握ってきた。
妹設定じゃないんかい!と心のなかで突っ込んだが、僕の息子は正直に喜んでいた。
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