私は、康子で童貞を捨てたのです。
「ああっ・・・賢次君・・・」
抱き合っていると、男性器に快感が走り、自然と腰が動いてきました。
「康子・・・」
「賢次君・・・好きよ・・・」
「え?・・・」
「好き・・・キスして・・・」
康子に唇を重ねたら、舌を入れてきて・・・戸惑いながら舌を舐め合いました。
すると強烈な射精感が襲って来て、
「康子、出るっ・・・ああ・・・」
康子は、コンドームを外すと結んで、
「賢次君の精液、もらっていくね。好きな人の精液・・・貰えて嬉しいな。本当だよ。私ね、賢次君のこと、ずっと好きだったんだ。でも、生活のために、生きていくために、先生に処女を売って、その後も愛人してるの。お手当もらって・・・お母さんも知ってることなの。」
「康子・・・俺・・・」
「大丈夫よ。賢次君からお金もらおうなんて思ってないから。好きな人に抱かれたかっただけだから。ありがとう。じゃあ、そろそろ帰ろうか。」
身支度を整えて玄関を出て施錠すると、康子はまた郵便受けに手を入れて、鍵をどこかに引っ掛けていました。
康子と関係したのはこの一回だけでした。
中学の卒業式の後、康子がやってきました。
「賢次君、私、引っ越すんだ。お母さんの実家にお世話になるの。ずっと田舎だけど、田んぼ手伝って生活させてもらうの。だから、さようならなんだ。」
「康子・・・俺・・・」
「賢次君、お願いがあるの。」
「何?」
「賢次君を、私の初めての彼氏ってことにしてもいいかな?抱いてもらったこと、とっても嬉しかったから・・・」
「ああ、康子は俺の初めての彼女だったよ・・・あの日の事は、きっと一生忘れられない思い出になると思うよ・・・」
「ありがとう・・・私、賢次君のこと忘れないからね。じゃあね。バイバイ。」
「さようなら、康子・・・」
康子は笑顔で去っていきましたが、私はとても胸が熱くなり、目頭も熱くなってきました。
あれから20年が過ぎ、今は私にも愛する妻と娘がいます。
先日、中学卒業20年で、20年前に埋めたタイムカプセルを開ける式典がありました。
久しぶりに中学へ行くと、
「賢次君・・・かな?」
「康子?康子か?元気にしてたか?」
「うん。今は結婚して子供もいる。」
「そうか、良かったな。康子に再会できるとは思わなかったよ。」
「貧しい思い出しかない街だけど、でも、初めての彼氏の思い出がある街だから・・・」
「康子・・・」
康子は、タイムカプセルの中身を「内緒」と言って見せてはくれませんでしたが、もしかしたら私の事を書いてたんじゃないかななんて、勘繰ってしまいました。
康子は、式典を終えるとすぐに帰ってしまいましたが、この時のさようならは、20年前のさようならとは違って、明るく手を振って康子を見送ることができました。
中学の頃と違って、康子は全く薄幸そうではなく、素敵な女性になっていて私も嬉しく思いました。
そして、そんな康子を見送るときにちょっとばかりキュンとしてしまい、もしかしたら私は中学の時、康子の事が好きだったんじゃないかと気が付きました。
その夜、中学時代、赤貧の薄幸少女だったクラスメイトの幸せそうなな笑顔に、そっと乾杯した私でした。
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