騒音で目を覚ました。
誰かがバイクを空吹かしいる様だ。
この時間に暴走族でもあるまいにと、寝ぼけた頭で考えた。
一二度空吹かしすると、しばらくは静かになる。
何なんだこいつは…、よく聞くとこの排気音は、私のバイクと同じ音だ。
エアクリーナーボックスを外して、Y社の集合管をつけた音だ。
一瞬私のバイクが悪戯されてるのではと思い、跳び起き窓を開けた。
そこには私と同じバイクがあった。
いや色は違う、私のはシルバーだが、そのバイクは真っ赤だ。
ライダーがこちらを見上げていた。
スモークのシールドで顔は分からない。
ヘルメットから、背中にとどく程の長い髪が印象的だ。
そして何より彼女の着ているジャケットに見覚えがあった。
私は慌ててスェットのまま部屋を出た。
音を響かせて階段を降り、裏の駐車場に走った。
彼女はバイクを降りて、私の方を見ている。
息を切らし彼女の前に立った。
彼女は私に背を向け、ヘルメットを脱ぐとそれをミラーにかけ、ゆっくりと振り向いた。
「久しぶり、いつ大型の免許取ったんだ」
私はいったい何を言ってるのだろう。
彼女は微笑みながら、「貴方が私の前から消えてすぐよ」
「よくそんな旧車見つけたな。高かっただろう」
彼女の表情は変わらない、相変わらず微笑んでいる。
「苦労したけど、私にも意地があるから」
「でもそんな事聞く前に、言う事は無いの?」
確かにそうだ。
「由香すまなかった。でも俺は由香の事を…」
もう微笑んではいなかった。
由香は両目に涙を澑て、私の胸に飛び込んで来た。
「隆弘さんの馬鹿、ずっと待ってた。いつか会えると信じてた。」
何も言えない私は、そっと由香を抱きしめた。
「だからもう何も言わなくて良いから」
由香は私の胸に顔を押し付け泣き続けた。
風が吹き抜けた。
桜の花びらが、私と由香に降り注ぐ。
後から聞いた事だが、由香はやはり会社に電話して、私の転勤を知ったらしい。
その時対応した者から、三年くらいでまた戻るかもしれませんと聞いた。
それを頼りに時々会社まで様子を見に来ていたと言うのだ。
駐車場に私の車を見つけ、跡をつけたがなかなかタイミングが合わず、昨夜やっと成功したらしい。
アパートは確認したが、昨夜は声をかける決心がつかず、一晩悩んで意を決して、今朝私を訪ねたと教えてくれた。
もし私が車を乗り換えていたり、社用車通勤が一足早く始まっていたら、由香と再会する事は無かったかもしれません。
そもそも出会った日も、あの公園で昼飯を食べてなかったら、出会う事も無かったかも知れません。
全てが運命だったと今は思います。
由香との新たな第二章が始まる訳ですが、皆様に語る程のものではありません。
お互いに、それなりの山や谷がありました。
今まで長きに渡り見て頂いてありがとうございました。
誤字、脱字、変換ミス等お許し下さい。
回りは私より若い奴ばかりた。
どうも私一人が浮いている気がして落ち着かない。
ピロピロピロと不意に携帯が鳴った。
一斉に皆が私を見る。
会社からだ。
「由隆君のお父さん、携帯は切るかマナーモードでお願いします」
先生に注意される。
教室内に笑いが興った。
私は頭を下げ、急いで廊下に出た。
「もしもし植村です」
「部長お休みのところすみません。〇〇の件ですが……」
部下に指示を出し、マナーモードに切り替え様とした時、メールが入って来た。
妻からだ。
参観ご苦労様。
由隆の様子はどうですか?
こちらは順調に勝ち進んでいます。
今年のテニス部は強いよ。
試合終わったら一度学校に戻るので遅くなるかも。
弘香は母に預けています。
お迎え宜しくね。
了解と返信して、息子の居る教室に戻った。
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