約束通り三年後、再び転勤で地元に戻る事が出来た。
父親の容態は一進一退で、とりあえず急を要するものでは無い。
実家に戻る事も考えたが、通勤に不便なのでまたアパートを借りる事にした。
街中の方が便利だが、バイクが安心して置ける事の方が優先した。
郊外にある3DKにした。
隣がオーナーの家で、庭に大きな桜の木があり、アパートの駐車場まで枝が張り出していた。
あれから由香の事は、なるべく考え無いようにして来たが、完全に忘れる事などできなかった。
新に恋人をつくる事もしなかった。
相変わらず、母親からは再婚を勧められたが、無視して来た。
由香と過ごした時間と同じ、時間が過ぎた事を思うと遠い過去の様にも感じる。
由香もこの春には四年生になるはずだ。
今年は、教員採用試験に追われる日々だろう。
新しい恋人は出来ただろうか。
幸せになってくれれば良い。
三月末に入居した時は、固い蕾だった桜は、今は花の盛りと咲き誇っている。
今は自家用車で通勤しているが、人員の増加に伴い社用車での通勤に変える様に指示が出ていた。
オーナーに頼み社用車の駐車場を確保した。
会社からの帰宅途中、一台のバイクがつかず離れずついて来る。
一瞬由香を思いだしたが、排気音が違う。
アパートの駐車場に入る為、ウインカーを出したらそのバイクはあっと言う間に、私の車を追い越していった。
明日は休みだが、タクシーでも使って社用車を取りに行くつもりだ。
どうせなら早く変更する方が楽だ。
翌日早く目が覚めた。
バルコニーの窓を開けて、空模様を見る。
良い天気、駐車場の桜が綺麗だ。
部屋から花見ができるなと、つまらない事を考える。
まだ6時なので、二度寝をする事にした。
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