その後も毎日の様に、連絡が配信た。
相変わらず上手く電話に出れるのは、3~4回に一回くらいだったが、由香は何か打ち合わせが無い限り、私に電話する事で満足してる様だった。
九月も半ば過ぎ、「また後で電話します」と珍しく用件の無い伝言が残されていた。
11時過ぎにベルがなり、受話器を上げるとやはり由香からだった。
学校でのイジメの件に、けりが着きそうだと言った。
二学期になっても変化が無く、すぐに思い切って母親に相談したところ、先生に掛け合ってくれたらしい。
何人かが事情を聞かれ、その話の中で、先輩が他にも実質的に性的悪戯をしている事が明るみに出たらしい。
今は、停学処分中だと教えてくれた。
先生方も目を光らせてくれるので、今後は大丈夫だと思うと言った。
とりあえず良かったねと労いの言葉をかけ、後は次回のツーリングの話になった。
一足早く秋を感じ様と、私達の住む地方では、最高峰のスカイラインを走りに行く事にした。
秋分の日は朝から晴れ渡り、絶好のツーリング日和になった。
この季節になると、一段空が高くなった様な気がする。
待ち合わせは、インターチェンジ近くのコンビニだ。
由香の姿はまだ見えない。
缶コーヒーを飲みながら一服していると、パランパランと2スト独特の、排気音が聞こえてきた。
それにしても、やけに大きな音だ。
由香の兄のバイクは、かなり改造されており、キャブレターやチャンバーも付け替えられていた。
後でバイク屋に聞いたのだが、排気量も350にアップしていた。
かなりの走り屋仕様なので、初心者には絶対向かないと、バイク屋に変な太鼓判を押されていた。
それを知ってか知らずか、ギャンギャンとエンジンを回しながら、由香がコンビニに滑り込んで来た。
どうもまだ上手くエンジンの回転数が、合わせられない様だ。
バイクを降りヘルメットを脱ぐと、得意そうに笑い、Vサインをして見せる。
すでに三回こけたと、バイクの傷を説明してくれた。
出発前簡単にルートを説明し、私の走りを良く見ながらついてくる様指示をした。
高速を時速90㌔で巡航し、常にバックミラーで由香を確認する。
今のところ走りに問題は無いようだ。
休憩をはさみ1時間半走って、高速を降りた。
下道も同じ様に走り、気がつけばその場で止まってアドバイスした。
スカイラインのワインディングに入ると、ラインどりやブレーキ・アクセルワークが無茶苦茶で、その度アドバイスした。
やはり由香は感が良い、スカイラインを登りきる頃には、見違える様になっていた。
スカイラインを登りきった所に、ビュッフェがあり昼食をとる事に。
正直こういう所は、高いばかりでそう美味いものでは無いが、腹の虫には勝てない。
私はカレーライスと山菜蕎麦を頼んだ。
由香は、きつね蕎麦かうどんかで暫く悩んで、結局蕎麦にした。
私達は余程でないと、県外でうどんを食べる事は無い。
由香の走りについてあれこれ話しした後、学校の話題になった。
先輩はまだ停学中だが、学校を辞めるらしい。
喧嘩した友達とは、仲直りするのは無理だと言った。
一度辞めたテニス部に、戻ってこないかと誘われたが、今はバイクに夢中なので戻る気は無いとの事だったた。
先生になるのが夢なので、勉強もしたいし、テニスとバイクの三つの掛け持ちは無理だと言った。
ビュッフェをでると、寒さが身に滲みる。
標高は1000㍍を越えている。
途中でトレーナーを一枚着込んだのだが、ジャケットは夏用だ。
寒ければ、レインウエアを上に着る様に、由香に伝え帰路についた。
無事に帰り着き、由香の自宅近くのファミレスで、晩飯を食べる事にした。
お母さんには、途中で連絡は入れている。
今日は、バイク屋さんの集まりで、ツーリングに行くと説明しているらしい。
余程楽しかったらしく、また行こうねと早くも次の段取りをせがむ。
私の都合で11月の祭日に決まっが、先が長いとご機嫌斜め。
そろそろ帰ろうと席を立とうすると、由香が私の耳元に唇を寄せ囁いた。
「いつまで待ったら抱いてくれる?」
顔は笑っいる。
私は暫く考えて、「高校卒業したらな」と、またまた軽いノリで答えてしまった。
「ターくん愛してる」と言うと、素早く私の頬にキスして席を立った。
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