終わったあと、僕はりおからムスコを抜き取り、ティッシュで彼女のそこを拭いてあげたあと、隣に寝そべった。
りおはすぐに僕の胸に顔を埋め、手を背中に回した。
泣いてはいないようだが、かなり長い間、肩を震わせていた。
僕は彼女の背中をそっと撫でてあげることしかできなかった。
やがて彼女は、眼を真っ赤にしたまま顔を上げた。
「ねぇ先生?」
「ん?」
「先生は、自分が先に、あたしのこと好きになったと思ってるでしょう?」
「…違うのか?」
「違うよ。あたしの方が先だもん」
これには相当驚かされた。
「……いつから?」
「1学期、初めて先生の授業を受けて、優しそうな人だなぁって… だから、思い切って職員室に質問に行ったの」
りおの言うことが本当なら、僕はこの13歳の少女に『落とされた』ということになるのだろうか?
しかしもう、そんなことはどうでも良かった。
僕はこの天使と両想いになり、ついに今日結ばれた。
もうこれ以上望むものなどない。
その時そう思った。
その後、りおは毎週のように、僕の部屋に来てくれた。
両親には、僕の町の図書館に行くと偽り、 部屋の掃除や洗濯、時には夕食を作ってくれたりした。
そのようにして僕たちの2年半が過ぎた。
りおが3年生になり、卒業の時期が近づいて来た頃。
僕は、彼女が高校生になっても、このままの関係が続くと、単純に信じていた。
だがりおの方は、その時が近づくにつれ、どんどん不安定になって行った。
ささいな事で泣いたり、逆に妙にはしゃいだり、塞ぎこんだり…
ある日僕は思い余って、彼女を問い詰めた。
「だって…あたしが高校生になったら、先生とお別れになっちゃう…」
「なんでそんな風に思うの?たしかに学校では会えなくなるけど、メールだってあるし、いつでも僕の部屋で会えるじゃない?」
「でも…あたしのおっぱい、こんなに大きくなっちゃって… もう先生の好きなのじゃないし…」
僕は絶句した。
この2年半、彼女は口にこそ出さなかったが、ずっと、自分が成長してロリータでなくなることを恐れていたのだった。
りおが僕の部屋に来るたび、僕は彼女を抱いた。
確かに、初めての時以来、あの自分でも驚くほどの激しい勃起はすっかり影を潜め、回を重ねることに穏やかになって行った。
彼女もそれを感じていたのだろう。
でもだからといって、僕が彼女の身体に興味がなくなったなどということは全くなく、むしろりおの身体が少しずつ女性としての魅力を増して行くのを、自分が育てているような気分で楽しんでいたのだ。
僕は言葉を尽くして彼女に、そんなことはありえない。今もこれからも、りおも、りおの身体も大好きだ、と言って説得したが、彼女は首を横に振って泣くばかり。
僕はまた、真心を行動で示す必要に迫られた。
「ねぇりおちゃん、君か僕の部屋に来てくれるとき、お家の人には図書館って言ってるんだよね?」
「…うん…」
「つらくない?」
「…そりゃ、少しは罪悪感っていうか… でも、悪いことしてないもん。
」
「けど、嘘は嘘だよね。…嘘、つかなくていいようにしよう。」
「……どういうこと?」
「君のご両親にあいさつに行く。そして、交際を認めてもらうんだ。」
りおの顔が一瞬だけ輝いた。
しかしすぐにまた眼を伏せて
「ありがとう。うれしい… でもそれはダメ。」
「なんで?」
「うちのお父さん、凄く厳しくて、怖いの。先生が挨拶になんか来たら、きっと殺されちゃう…」
僕は正直、ビビった。
りおの父親は、市内ではそこそこの規模の、不動産会社の社長だった。
そういう業界で長年やって来た人なら、確かに気弱で温厚、ということはないだろう。
だからといって、いくらなんでも初対面の相手に暴力をふるったりするだろうか?
僕が、絶対に大丈夫だから、とにかく会わせてほしいと言うと、彼女は渋々だが、「お父さんに話してみる」と言った。
数日後、僕は彼女の父親の事務所に呼ばれた。
僕が挨拶をするなり、父親は
「どういうつもりなんだ?教師の癖にこんな子供に… 恥ずかしくないのか?」
と、激しく怒鳴り付けてきた。
僕は土下座をして、謝るしかなかった。
彼は椅子から立ち上がり、僕に迫ってきたが、同席していたりおが
「お父さん…」
と、怖い顔をすると、拳をワナワナと握りしめ、椅子に座り直した。
どうやら強面の彼も、娘にだけは弱いようだった。
「帰れ!娘には二度と会うな!それだけだ」
「帰りません。お嬢さんとの交際を認めてください!」
それからはずっと押し問答だった。
僕も腹を据えて、粘りに粘った。
3時間ほど過ぎた頃だった。
父親が
「お前が娘に惚れているというのが本気なら、教師を辞めて来られるか?」
と聞いてきた。僕は
「それで認めていただけるのなら…」
と答えた。
「辞めて、俺の会社へ来い。ウチは厳しいぞ!ウチで半年持ったら、認めてやる。その間娘と会うことは許さん。どうだ?」
りおと半年も会えないことは、身を切られるような辛さだったが、これがこの社長の最大限の譲歩だと分かったし、これを断ったところで、二人の未来に明るい展開はないことは明らかだった。
僕は
「わかりました」
と答えた…
その年の年度末で僕は学園を退職し、りおの父親の会社に入った。
それから半年、僕は寝食も忘れてがむしゃらに働いた。
りおに会うことはできなかったが、彼女は毎晩電話をくれて、僕を励ましてくれた。
慣れない不動産の営業は、戸惑うことも多かったが、意外なことに顧客と話す、相手の考えを読み取る、といった作業は国語教師のキャリアが役に立ったし、顧客の中には政治・経済や歴史、文学の話を好む人が結構いて、そういう話に付き合うのは僕の得意分野だった。
おかげで、いくつかの大きな契約をまとめることができたし、次第にこの仕事が面白くなってきた。
始め僕のことを白い目で見ていた先輩社員も、僕が真面目に打ち込む姿を見て、徐々に打ち解けてくれた。
そして半年後…
僕は社長室に呼ばれた。
社長は、思い切り苦虫を噛み潰したような顔で、僕を待っていた。
「…頑張ってるようだな?」
「はい。お陰さまで、続いてます」
「うん、約束だから娘との交際は許そう。ただし、条件というか、頼みがある」
「…何でしょうか?」
「付き合うなら、せめて俺の目が届く範囲でやってくれないか?」
彼の目の届く範囲というのがどういうことか、よく分からなかったが、少なくともりおと会えるようになることは間違いないようだったので、僕は
「わかりました」
と答えた。
翌日出勤するとすぐに、事務の女性から
「引っ越しはいつにしますか?」
と訪ねられた。
「なんのこと?」
「え?あの… アパートを引き上げて、社長のご自宅に移られるって…」
僕は度胆を抜かれた。
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