チャキンッと言う特殊警棒の音に混じって、下品な低音のアイドリング音が聴こえます(私はいじったVIP車が嫌いです)
中に入り、車を確認する様にキョロキョロして見せると、大して停まっていない車の中からパールホワイトのY32が動き出します。(あれか…)
気付かないふりをして、逃げ道を作るように検討違いな方を見に行くと、車高の低い車で駐車場をカッ飛んで逃げて行きました。
『車種はパールホワイトのY32。ナンバーは〇〇でしたよ。出禁車種に書いときますね。』
事務所に戻ると、また黙秘状態に入ったらしい少女と睨み合う主任が居ました。私はその空気を読み取って、声だかに報告して見せました。
『主犯も今頃、この女に裏切られたと思ってるでしょうねぇ。俺が真っ直ぐに車に向かって来るんですから。』
「だと?」
『強がんなバカ。幼稚なんだよお前らの思考は。』
ハッタリですよ勿論。こう言う連中は仲間意識だけで繋がってますからね、裏切りとかには敏感です。
「…」
少女は、黙秘とは違う沈黙に変わりました。彼氏に、裏切られたと勘違いされ、助けてくれる人もいなくなった中坊が、いつまでも強気で居るはずが有りません。バックが無くなればこんなものでした。そんな訳で、少女は要らない情報までゲロし始めるのでした。
少女の名前はアヤ。歳は13歳で、ボウリング場のある市内の中1でした。
『ふ~ん…〇さんとこのチームか。〇さんに話すか…。』
「え?なんで〇さん知ってんの?」
『この店の常連さんだ。』
少女はそれを聞いて青ざめました。
〇さんとは、この辺では五本の指に入る族(死語?)の元リーダー。今でも強い影響力を持っています。見た目怖い人ですが、一本筋の通った気さくな方でした。主犯はその族の下っ端だった訳です。
『どっちが良い?〇さんにシメられるのと、警察に突き出されるの?』
俺は薄笑いを浮かべて見せました。
その後、アヤはその場で解放。後日〇さんに報告と言う運びになった訳です。
数日後、〇さんにつれられた主犯が店に来て土下座をして行きました。顔には複数の青アザがあり、髪は虎刈りの丸坊主でした(汗)。主犯も帰り、〇さんはボウリングを始めました。
私がゲームコーナーでメンテナンスをしていると、〇さんが近寄って来ました。
「おい、けん。」
『はい?』
「悪かったな、うちの者が。」
『気にしないで下さいよ。私の方こそ、〇さんに面倒なお願いしちゃって。』
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