『まだ、濡れてるな。冷たいだろ?』
と訊いたが、夏美はそれに答えず、
『そーいえばねー、この前優菜とね、かんちゃんの兄弟で誰が一番カッコいいか話してたんだよ?(笑)』
(なんか、はぐらかしたか?もしかして)
『ふーん、それで優菜はなんて言ってた?』
優菜は同じ町内の、夏美のクラスメートだ。背が小さく、タレ目のパッチリ二重がチャーミングで、ゆるゆる天パのロングヘアーは色素が薄く天然の栗毛だ。少しぽっちゃり体型でこぐまみたいな子だ。可愛いが、引っ込み思案で俺に甘えてくることはないし、夏美といる時は明るくよく笑うが、1人の時は声を掛けても、よそよそしく、どこか影のある子供だ。お姉ちゃんがいるが、登校拒否児らしい。それも関係してるのかも知れない。
俺には兄弟が3人いる。つまり男4人兄弟だ。
夏美も優菜も、他の兄弟と会ったことがあるが、俺ほど仲良くはないはずだ。だから俺が一番だと言ってくれるに決まってる、とタカをくくっていた。
『優菜はかんちゃんが一番イヤって言ってたよ!』
『え?なんでだよ!』
予想外の解答に動揺してしまい、聞き返す。
『嘘だろ?夏美』
『嘘じゃないし!かんちゃんエロいから嫌いって言ってたよ(笑)』
(ちょ、待て!いやいや、優菜には頭を撫でる位しかしてない…、パンツや胸チラを見てたのがバレてたのか?でも仲良くできてたと思ってたのに…)
と考えてると、夏美が
『かんちゃんブルマ触ってくるって優菜に話したからかな?優菜、キモいって言ってたし。エロいの嫌いみたい。』
(こ、こいつヤバい!全然約束守らねーじゃん!なんで言ってんだよ!)
『夏美~、言うなって言ったじゃん!』
と俺が言うと、
『話したのけっこう前だよ…』
と、夏美は申し訳なさそうに下を向いた。
まだ三年生の時、抱っこされてることが嬉しくて、優菜にそんな話をしたらしい。
優菜が俺と会ってもよそよそしいのは、このせいだったようだ。
おしゃべりな夏美の口をコントロールするのはなかなか難しそうだと痛感した。
『他の友達には言ってない?抱っこしてる時のことは、2人だけの秘密だぞ?約束できないなら、もう抱っこできないからな。』
『え、やだー!優菜にしか言ってないし、もう誰にも言わないから!』
俺はもう一度、夏美に秘密の時間のルールを約束させた。
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