半年がすぎ、買物袋の野菜をから二人分の夕餉を作る後ろ姿もこの部屋の風景に溶け込んでいる。
「今度の週末さ、お母さんのお墓参り行こうか」
「えっ!嬉しいな、わたし家族で旅行なんてほとんどしたこと無かったから…週末休めるかな、店長とシフト相談してみるね!」弾けるようにはしゃぐ姿が愛おしく、華奢な肩を抱き寄せ甘く唇を重ねる。
不意な攻撃に戸惑っていた少女も、やがて激しく応えてはじめ二人で舌を貪りあった
潮風のにおいがする、少し曲がった田舎道を縫うように上っていくと突き当たりにお墓がある。
桶に透明な水を汲み真新しいお線香とお花を用意する。
お墓の前で二人、丁寧に手をあわせる
お線香の煙りが秋空にゆっくりと立ち上る。どんな祈りを捧げているのだろう、しばらくお墓の前で手を合わせていた少女に気付かれないように、そっとかばんに忍ばせた小さな箱の蓋を開ける
少女が振り返る
「何をしてるの?」
「これからずっと、この指輪をしてくれないか?僕のために」
驚きが清らかな涙に変わり白い頬を伝わりはじめる
活けたばかりの菊の黄が色鮮やかに秋の青に揺れている
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