ドラッグストアから戻った時に、タケ様に頭を撫でられ、
褒められて、麻由美犬は奇妙な安堵感を覚えました。
飼い主の期待に応えれば優しく褒めてもらえる。
従順でいれば何も心配することは無い。
ペットショップで芸をした時だって、周りの誰もが喜んでくれた。
麻由美犬はよく躾けられたペットです。
飼い主様が「待て」と号令すれば、じっと「待て」のポーズを続けます。
膝を大きく開いてしゃがみ、その真ん中を両手を真っ直ぐ降ろし、
床に付けた姿も犬には当り前のポーズです。
よくスーパーの前などでお店に入れない愛犬が電柱なんかに繋がれている
ことがありますが、麻由美犬もそれと同じです。
周りのお客さんがジロジロ見ています。
テラスは歩道から4、5段高いところにあって、柵越しに何人かの通行人
が覗き込んでいます。
麻由美犬の顔を見つめ、椅子に繋いだ首輪とリードを一瞥し、最後は開いた
膝の真ん中を凝視しているのは、きっとコートが開いているところから、
ノーパンの股間が見えているからでしょう。
犬が恥ずかしがるのはおかしいわ。
恥ずかしがって命じられたポーズを崩したら、飼い主様を失望させることになる。
あぁん…それより知らない人にも麻由美犬がお行儀が良いことを分かってもらえれば、
飼い主様も鼻高々に違いない。
麻由美犬は一人一人に笑いかけ、「くぅんくぅ~ん」と可愛く鼻を鳴らします。
誰もが麻由美を精神異常者と思っていることなんて考えもせずに…
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