番号を渡した後は待つしかない。
そもそも真弓が携帯かPHSを持ってるのかすら知らない。
聞いときゃ良かったな~と後悔しても後の祭りだし、家の番号は卒業アルバムを引っ張り出せば分かるけどそんな事は出来ない。
それから3日後位に連絡が来た。
見知らぬ番号からの着信があった。
期待と不安が混ざった気持ちで通話ボタンを押した。
「モシモシ…」
『モシモシ、かずきさんの番号で宜しかったですか?』
かしこまった訊ね方をされたが間違いなく真弓だった。
「急だったから掛かって来ないかと思ってた」
半分来ないな…と思っていたのでそれを伝えた。
友達も居たからあんまり話しも出来なかったから…と色々話をした。
相変わらず女友達はそんなに多くは無いらしい事、受験もあるからなかなか大変な事、あとは昔ばなしなんかをしていた。
マサの話が出た時は真弓から働いている事を聞かされた。
「マサ働いてんの!?学校は?」
『何か今年の頭に辞めたみたい…今は建築現場で働いてるみたいだよ』
真弓がたまたま家の近所で古い家を解体していたマサに会ったらしい。
突然上から声をかけられ見上げると屋根を解体していたマサがいたみたいだ。
元々親父が建築関係の仕事をしているとは聞いていたので多分そこで仕事をしているのだろう。
『金髪のヤンキーかと思ったらマサだった』
と言っていた。
ちょこっと話をしたら俺の事も聞いたらしく、通ってる高校を聞いて文化祭に来てみたらしかった。
「なんだよ、わざわざ文化祭に来てやったってその時言えよ~」
ちょっと嬉しかった。
また三人で遊びたいねなんて話をし、真弓のPHSの番号も聞いてその時は電話を切った。
翌日の帰り道、真弓に聞いた建築現場近くをウロウロしてみた。
既に解体は終わり、土台に骨組みと屋根だけ掛かった現場を見つけた。
忙しく働く大工さん達を眺めていると確かに金髪にヘルメットのマサがいた。
日焼けしたマサが材木を運んでいた。
「あれ!?かずきじゃん!」
日焼けに金髪を除けばいつもの笑顔だった。
「俺、今は親父の所で仕事してるんだ」
慣れた手付きでタバコを取りだし俺にも差し出して来た。
「あ~…俺はタバコ吸わないよ」
せっかくだったが吸ってみたい気持ちもあったが学生服では上手くない。
「もうすぐ上がるからさ、ちょっと待っててくれよ!適当にその辺に座るかなんかしててくれ」
資材が置いてある場所を指差しながら言った。
「怒られるから戻るわ…」
そう言いながらそそくさと現場に戻っていった。
すると今度は二階からマサの親父が休憩場所を指差しながら叫んだ。
「マサの友達だろ~?適当にお菓子食べて待ってて良いから!」
体を使う仕事だからか、マサより逞しい体をしていた。
あんな親父に殴られたらシャレにならんな、なんて考えていた。
結局一時間ほど待ち、マサは解放されていた。
特に行き場も無いし、近くのマックまで俺のチャリで2ケツで向かった。
「驚いたよ、通り掛かったの?」
「いや、真弓が学校の文化祭に来てさ、マサがここにいるって聞いて来てみた」
あ~成る程ね、という顔をしながら納得していた。
「俺もさ、屋根の上から見たら似た奴がいるな~と思って声かけたら真弓だった」
まさか俺の話を聞いて文化祭まで行くとは思わなかった、と驚いていた。
「ヤッパ思った通り真弓は昔お前の事好きだったんじゃねぇの?」
俺の態度がマサをそう思わせていたんだと思って少し驚いた。
「真弓が?俺がおかしかったんじゃないの?」
マサも驚いていた。
「お前が?ちげぇよ!なんつぅか…ま、そんな気がしただけ、ってかお前が!?」
ニヤニヤしながらお前が好きだったのか?と聞いてきた。
俺は否定したがマサは信じていない風だった。
「誘って遊びに行けば良いじゃん」
気軽に言われた。
「今?この時期に?受験があるから無理だよ…」
「大丈夫だって一日位なら、俺も彼女連れてくから四人で行こうぜ」
既にマサの中では俺は真弓が好きらしい。
気にはなるけどそこまでの気持ちがあるかと言われたら無い。
「Wデートって事?別に好きとかじゃないし」
「馬鹿だな、とりあえず遊びに行くだけだよ!」
とりあえずPHSの番号を聞いたことは言ってしまっていたので連絡しろ連絡しろとうるさくて根負けして掛けてしまった。
出なくて良い…という考えも虚しく真弓はアッサリと電話に出た。
「どうしたの~?」
突然の電話に真弓は聞いてきた。
とりあえずマサに会った事、今マサとマックにいることを伝えた。
そしてマサが彼女を連れてくるから…どうだろうか?という事を冷や汗をかきながら支離滅裂な言葉で話していた。
「とりあえずそっちに行くね」
どんな流れでそうなったのか覚えてないが、あまりの支離滅裂さに電話じゃ埒が明かないと思ったのだろう、こっちに来ることになった。
慌てる俺をマサは声も立てずに笑っていた。
「お前何慌ててんだよ!?俺たちと遊びに行かない?で良いじゃん!!何喋ってんのか俺にもワカンネェよ」
「ウルセェなぁ…」
暫くすると真弓がやって来た。
マサが彼女を俺に紹介したいけど、かずきが男一人じゃ可哀想だから真弓も呼べって言ったんだ、と説明していた。
「そんならそうと言ってよ、全然解らなかった」
真弓は笑いながら少し呆れていた。
来週日曜日に行こう、と決定した。
マサが免許を持っていたので乗せてくれる事になった。
とりあえずドライブしながら適当にブラブラする、あまり遅くならない様に帰るとだけ決定した。
マックからの帰り道、嬉しさもあったが失態を思い出しては落ち込みもしていた。
そんなこんなで当時を迎えた。
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