「他に好きな人いる?」
彼は、雑誌から目を離し私の顔を見た。
「なんで?」
「携帯、見ちゃった」
私は、自分のした事を怒られるのが恐くて軽く言った。
彼は、特に激昂する事もなく、また雑誌に目を落とした。
私は、答えを急いだ。
「どんな人なの?」
数分後、彼は諦めたように小さな声でポツポツと話し出した。
「前に告白したけど、彼氏がいるからって言われて」
「うん」
「諦めて、しばらくしてゆうなとそうなって」
「うん」
「ゆうなと話してると落ち着くし、やっぱりこいつかなって思って」
「うん」
「でも、この前彼氏と別れたって泣きながら電話してきて」
「うん」
「ちょっと精神的に弱いとこあるから大丈夫かなって心配になって」
「うん」
「会って慰めてるうちに…」
「いつから?」
「………つい最近」
「そう…メールで彼女といつ別れるのって」
「彼女と別れて欲しいって、俺が言えないなら自分が言うって」
(気持ち悪い)
私は、心の中でそう思った。
でも、彼はその気持ちの悪い女に夢中だ。
そんな私も気持ちの悪い女だ。
「決めるのは、ゆう君だしね」
作り笑いでドス黒い感情を潰した。
もう、どうなってもいいと思った。
そして黙っているのはフェアじゃないと思った。
いや、ただ小さな妬きもちを妬かせたかっただけかもしれない。
「私も、元カレから連絡きたりしてさぁ」
彼は驚いた顔で私を見た。
「友達に戻ろっか」
彼は否定をしなかった。
「ゆう君は、押されると弱いから言う時は言った方がいいよ、あとゆう君は…」
何故だか、彼に恋愛のアドバイスをしてるうちに涙が溢れた。
嗚咽を抑え切れずに子供みたいにしゃくりあげる。
こんなにも、好きなっていたのかと思い知らされる。
「ゆうなの事も好きだよ、だからしばらく様子見ようと思ってた」
「私を好き?」
「お前は、俺の事わかっててくれてるし声聞くと落ち着く…でもあっちもほっとけなくて」
「大丈夫、大丈夫だから」
自分に言い聞かせてるのか、彼に話しかけてるのか、何が大丈夫なのかわからないけど、私なら大丈夫と繰り返した。
「ごめん」
「私こそ、ごめんね」
「ゆうな…これっきりじゃないよな?」
「そうね、たまにはメールでもしましょう。友達に戻るだけだし」
彼は安心したような顔をした。
そんなのは、もちろん優しい嘘でしかない。
「あーもぅ化粧ボロボロ」
笑いながらティッシュをとり顔を拭く。
「じゃ、私行くわ」
「うん」
私は立ち上がり、バックを拾うと二度と来ないであろう部屋を出た。
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