どちらか言えば厳しい両親だった俺は、六年生の夏休みに突然受験の話をされた。
「あなたの為」「将来の為」という言葉に逆らう事なく、しかし内心は三人と離れる事への不安もあった。
「別に引っ越す訳じゃないんだから…」
そう言われ、特に反論する理由もない為に受験を了解してしまった。
そこからが大変だった。
元学校教員だったという人が定年後に始めた個人塾に通い、遊べる時間も激減した。
相変わらずマサキ達は放課後に誘って来るが今までの様には行かない。
その度に困った顔をする俺に、マヤは女の子らしい細かさで気をつかって来た。
俺達四人組は同じ新聞委員会なる物に所属していた。
放課後の教室で手書きの壁新聞を作るアレだ。
ネタは皆で考え、書くのは俺とマヤの仕事。
残りの二人は字が汚く比較的丁寧に書く俺と性格に見会わず綺麗な字を書くマヤが自然と選ばれたはず…だ。
「もう大丈夫だよ、後はさくと二人で書くから!!」
ネタは決まり、真面目に書き込む俺達の周りで二人がギャアギャア騒ぐもんだからマヤが怒ったように言った。
「俺達もう良いの?」
「あんた達ウルサイ!!」
マヤの不機嫌そうな雰囲気に、怒らせたら面倒だ…という様な感じで二人はじゃあ校庭で待ってる!!ってな感じで出ていってしまった。
黙々と二人でマジックを使い、模造紙の隙間を文字とイラストで埋めて行く。
「あいつらうるさくて進まないよね?」
マヤがまだ不機嫌なのかな?という表情でこっちを見た。
「うん、二人が居なくなったから早く進むよね?」
俺も同意した。
どうしても気が散り、四人で話をしながら作ると遅々として進まない。
話に混ざる俺達二人も悪いが、書いてる最中は気をつかって欲しいのは確かだ。
「あたしもう終わる~!」
疲れたのかマジックを置いて晴れやかにマヤが笑う。
「俺ももう少し…」
マヤは気分転換か、椅子に座りっぱなしで疲れたのか教室をウロウロし出した。
俺も立ち上がってウロウロし出した。
すると壁にもたれ掛かったマヤがこちらを見ているのに気付いた。
「え?何?」
マヤは声には出さずに笑みを浮かべ、身体を左右に揺らしながらこちらを見続けていた。
「別に~」
そう言われたが含みがある様な視線と笑みが理解できずに少し困った。
「終わらせよっ!」
何だか分からないまま促されて新聞の仕上げに掛かった。
「さくってさぁ…」
イマイチ腑に落ちないまま仕上げなければいけない新聞に向かっていた俺にマヤが声を掛けてきた。
「え?」
手を休めず、下を向いたままの姿勢で返事をした。
「パンツ見た?」
「…パンツ?誰の?」
急に言われても理解は不能。
誰かスカートめくりしてたっけ?なんて考え、マヤを見た。
「この前!!…あたしの」
やっと理解した。
ゲームした日だ!と思い当たったが無理に覗いた訳でもスカートめくりした訳でもない。
「あ~!…しょうがないじゃん、見えちゃったんだから…」
顔から火が出る程恥ずかしくなったが、わざとじゃない。
「へ~?ずっと見てたのかと思った」
「そんな訳ないじゃん!わざとじゃないよ!」
必死の言い訳だ(笑)
外の二人にバラされるなんて避けなければいけない。
しかしマヤは、誰にも言わないけどね…だから気にしないで、と再びマジックを手に新聞に取り掛かった。
その後はマヤをちょっと意識するきっかけになったが、何も無いまま卒業、俺は合格した私立に通う事になった。
私立は男子校だ、毎日バスで通い、二年生になると自転車通学になった。
その間も男子校という事もあり、俺の気持ちの中にはマヤだけが意識した女の子として残っていた。
二年生の夏休み前にヨウヘイから連絡があった。
久々に聞く声は声変わりをしたのか太く低くなっていた。
「久し振り!元気にしてたか?今度皆で集まって遊びに行かない?」
中一までは何度か遊んだが、その後はお互い疎遠になっていた。
「皆来るの?行く行く!ヨウヘイ声が全然ちげ~よ!」
なんて笑いながら話をし、7月中に集まる事が決定した。
目的地は遊園地らしい。
何でそこなんだよ?と思ったが三人で話をしているうちに決まったとの事だ。
皆変わったんかな~?なんて想像しながら久々の集まりが楽しみだった。
続きます…長くてスンマセン
※元投稿はこちら >>