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2020/08/17 14:51:22
(atYxDG4q)
濡れたタイルの床を踏む音が聞こえる。
衣擦れの音が個室を通り過ぎ、ファスナーの音がする。
フーッと短い溜息。同時に微かな水音。
どうやら小用を足しに来た人の様だ。
ファスナー、衣擦れ、タイルを踏む音。
遠離るその音に、私は安堵の溜息を吐く。
洋式便座の上に開脚した姿勢で後ろ手に拘束され、目隠しをされたまま放置されて、もうどれ位経っただろうか?
個室の薄い扉の向こうに、私の様な女が居る事にまだ誰も気付かない。
あの人はいつ戻ってくるだろう?
それまで見付からずに居られるだろうか?
不安が首を擡げる。
震える息を吐く。
小さく静かにゆっくりと。
もしも見付かれば只では済まない。
ドアを開けた正面には、彼が貼った紙がある。
―病気等、一切ありません。
―安全な肉便器です。
―どなた様も御自由にお使い下さい。
ドアを開きその紙を見れば、下着も着けず拘束されている私を見れば。
臍の下熱くなるのを感じる。
堪えようとすればする程、私の中が蠢くのが解る。
不意にタイルを踏む音。
急ぎ足で入って来た足音の主は、私の個室の前で止まる。
緊張が走り、全身が総毛立つ。
「ん?」と怪訝な声。
大丈夫。大丈夫なはず。
彼はドアの鍵部分に細工をして行くと言っていた。
「余程の慌て者でない限り、他の個室が埋まってない限り、このドアが開く事は無いと思うよ。まぁ保証の限りでは無いけどね」
彼はそう言っていた。
数秒間の後、足音は奥に進みドアをロックする音が響く。
頭が粟立つ様な感覚と共に全身が弛緩する。
危うく声と共に尿まで漏れそうになる。
小さく静かにゆっくりと。
震える息を吐き、喉元まで出かかった声と、尿意を抑えつける。
ベルトの音、衣擦れ。
と同時に足音。
隣の個室の音に集中していた私は、一瞬気付くのが遅れてしまった。
足音に気付いたと同時にバン!と音がして、私の個室のドアが開かれてしまった。
息を呑む気配。恐らく貼り紙を読んでいる。
フーッと小さく静かに息を吐き、足音を忍ばせて個室内に入る。
静かにドアを閉めて、音を立てないように鍵をする。
カ、チャッ。小さく鍵の音。
見付かってしまった。
全身が総毛立ち、ゾクゾクとした快感とも恐怖ともつかない感覚が駆け巡る。
これから起こる事への恐怖と、破滅の快感が押し寄せて、僅かに失禁してしまう。
衣擦れの音がして、カシャッ!シャッター音が響く。
スマホで写真を撮っている。
カシャッ!カシャッ!
続けてシャッターが切られる。
彼ではない。
彼が自分で貼った貼り紙を撮る意味は無いし、この場に放置した私を撮る意味も無い。
不安で声を上げそうになる。
けれど声を上げてしまえば、私の存在が周知になってしまう。
男性用トイレの個室で、こんな格好でいる時点で、それが周知になってしまえば罪に問われるのは私の側だ。
気配が近付く。―彼とは違う匂い。
首筋に吐息。―体温を感じる距離。
思わずヒッと声を上げてしまう。
と同時に隣の個室から水を流す音。
間一髪で声は掻き消された。
男がフーッと小さく安堵の溜息。
その息が口唇を撫でて、キスされてしまいそうな事に気付き顔を背ける。
男はフンと鼻を鳴らして体を離すと、大きく動く。
恐らくしゃがみ込んだのだろう。
下腹部に視線を感じる。
私の内側が蠢き熱く濡れる。
男が近付く。
男の吐息が陰毛を擽り、クリトリスを撫でる。
ブルブルと震えが背中を駆け上がる。
思わず蹌踉けた私の体を男の手が支えた。
内股の柔らかな肉を、男の硬い手が掴む。
男はそのままもう片方の手で反対の内股をがっしりと掴み、開脚した足を更に押し開く様にする。
プシッ!と短く僅かに失禁してしまう。
男は愉快そうに鼻を鳴らし、尿なのか愛液なのか判らないもので濡れそぼった私の秘部を覗き込む。
クリトリスに、淫らな唇に吐息がかかる。
その感覚に思わず私は腰を突き出しす。
男の鼻と思しきものが、クリトリスに触れてしまい。驚いて腰を引く。
ビリビリとした快感がクリトリスから子宮に響く。
もうダメだ。
破滅と引き換えだとしても構わない。
凌辱の限りを。
快楽の嵐を。
破滅を。破綻を。堕落を。
私は震える声で。
それでもはっきりとした口調で。
「私は公衆便所です。どうぞ御自由に。お気に召します様に、お好きにお使い下さい」
そう言って腰を突き出した。