日曜日の朝、僕はベッドの上で退屈な時間を過ごしていました。
今日は、口うるさい姉二人が出かけて、一階ではお父さんお母さんと妹がテ
レビを見ている音だけが、微かに聞こえていました。
僕は、自分のスペースにしている、二段ベッドの上段に転がって、手の届き
そうなぐらい近くにある天井を見つめていました。
あのあと、僕たちには、何もありませんでした。
坂本は、小屋の隅に置いたランドセルを掴んで、逃げるように出ていって、
残った僕と藤田も何をするでもなく、のろのろと小屋をでて、家に帰りまし
た。
ただ、藤田は、僕のスープをごくりと飲み込んで、しょんぼりとした顔で数
えきれないほどの「ごめん」を言ってました。
もし、あのとき、坂本が戻って来なかったら、きっと僕たちは行くところま
で行ってしまってたでしょう。
僕は、坂本にはYなんかと付き合って欲しくないと思いながら、自分は成り
行きとは言え、藤田とツンツンし、小阪とクチュクチュして、最後は藤田に
ゴックンまでさせてしまいました。
坂本に嫌われるのも、当然の酬いで、Yに心変わりしたとして、彼女を責め
ることはできないでしょう。
僕は、そんなことをあれこれ考えながら、蒲団のなかで、またウトウトとし
ていました。
「イクロウ・・・」
階下でお母さんが呼ぶ声が聞こえた気がして、階下の様子に耳を澄ませまし
た。
そういえば、暫く前からテレビの音が小さくなっていました。
「イクロウ、ちょっと降りといで!」
お母さんの呼ぶ声がもう一度しました。
「はぁい。」
時計を見ると10時半を少し回ったところで、そろそろ朝御飯を食べろと言
われるんだと思い、パジャマのまんま階段を降りていきました。
下では、階段横の玄関で、お母さんと見覚えのある女の人が立ち話をしてい
ました。
「イクロウ、あんた、昨日マサミちゃん送ってったとき、変わったコトなかっ
た?」
そう聞かれて、その女の人が小阪のお母さんだと言うことを思い出しました。
昨日、小阪とは、とても変わったコトがありましたが、もちろん言えません。
「べつに、普通に元気やったけど・・・」
心配そうな、暗い表情の小阪ママが気になって、聞いてみました。
「小阪さん、なんかあったん?」
お母さんは、言っていいものかと口ゴモっていましたが、小阪ママが話して
くれました。
「あの子、昨日帰ってからずっと部屋に篭りっきりで、出てけえへんのよ。」
「えっ?」
「部屋に鍵掛けて、呼んでも、来るな!って怒鳴って・・・」
小阪ママが、はぁとため息を洩らします。
「学校で、なんか、ボールぶつけられたって連絡あってんけど、いじめられ
たりしてへんやろか・・・」
坂本にボールをぶつけられたのは、ある種、いじめなのかも知れませんが、
小阪は気が付いてないでしょうから、原因は別にあると思います。
「小阪さん可愛いし、誰とも仲良くしてるから、いじめはないと思うけど。」
どちらかと言うと、昨日の僕が原因なんじゃないかと、ものすごく気になり
ます。
「僕、小阪さんと話ししてみましょうか?」
「ああ、そうしてくれる?」
小阪ママはホッとしたような顔をみせました。
「友達やったら、なんか話してくれるかも知れへんし。」
それには、お母さんも賛同してくれました。
「そうや、イクロウ、行ってあげて。」
僕は急いで部屋に戻って着替えると、小阪ママと四軒隣に向かいました。
初潮の始まる微妙な時期の女の子の相談役としては、普通なら僕は不適合だ
と思いますが、小阪ママにとっては、藁にもすがる想いだったのでしょう。
道すがら、少し話しをしましたが、概略はこんな感じでした。
小阪ママが昨日、3時過ぎに帰ると、小阪はもう部屋に隠っていたらしく、
それから、食事にもお風呂にも部屋を出て来なくて、家族で部屋の外から怒っ
たりなだめたりしても、まるで効果がなく、苛立った小阪パパがドアを壊そ
うとしたら、「入ったら死んだる!」とまで言い出す始末で、途方にくれて、
近所のクラスメイトの僕の家を訪ねたんだそうです。
「トベくん、シマノくんって知ってる?」
なんとなく、小阪ママの質問の意図が解りました。
「ええと、結構二枚目で、運動も勉強もできる・・・やなやつです。」
「いやな子なん?」
「僕が好きな子と付き合ってるから・・・」
「好きな子って、ひょっとしてマサミのこと?」
小阪ママは、ちょっと勘違いしているようです。
「いえ、あの、坂本さんです。」
「坂本さん?」
「えっと、小阪さんと幼稚園の時から友達の・・・」
「えっ?うちもトベくんとこと一緒で、二年の時に転校してきたやん・・・」
「!?」
「そっか、シマノくん、坂本さんって子と仲良しなんか・・・」
(二人は幼稚園の時からの幼なじみって、坂本の親が言ってたやん・・・そ
んで、小阪は『良妻賢母』って・・・)
「うちの子、振られちゃったんやろか・・・」
小阪ママの言葉は、僕への問いかけではなく、さびしげな独り言でした。
(なんや?・・・)
僕が頭の中を整理する前に、小阪の家に到着してしまいました。
小阪の家は、小阪パパがデパートの勤めているらしく、今朝は小阪のことを
心配しつつ出かけていったとのことで、日曜日といっても一階はひっそりと
していました。
「二階の奥の部屋があの子の部屋やから・・・」
階段を上がる物音だけで、小阪は、「来るな!死んでやる!」と騒ぐので、
階段の下から様子を伺うようになっていました。
「あの、ミカン、もらえませんか?」
「え?」
「小阪さん、ミカン好きやから、差し入れ持ってったろうと思って・・・」
小阪ママは嬉しそうに笑って、
「ありがとう、持ってってあげて。」と、10個以上は入っているミカンの
袋を持たせてくれました。
「お昼ご飯は、ちゃんと食べるように、小阪さんに言います。」
そういって、僕は階段を昇りました。
階下では、小阪ママが心配そうに見上げていました。
階段の途中まで昇ったところで、
「来るな!昇って来んな!」
と、小阪の声が聞こえてきます。
かまわずに、小阪の部屋のドアの前まで来ると、小阪は大声でわめきます。
「入ってきたら、包丁刺して死んだるから!」
「こさかぁ、トベやけど・・・」
「・・・え・・・なんで?」
「あけてぇ・・・一緒にミカン食べよぉ・・・」
中でパタパタと動き回る音がして、ドアのすぐ向こう側で声がしました。
「お母さんは?」
「下に居てるけど・・・」
カチャっと、掛け金の外れる音がして、薄く扉の隙間から、小阪の暗い目が
覗きました。
僕は、ミカンの袋を持ち上げて小阪に見せ、
「入っていい?」と、半ば強引にドアを開きました。
僕がドアの向こうの異様な雰囲気に呆然としていると、小阪が手を引っ張っ
て部屋の中に引きずり込み、急いでドアを閉めました。
後ろで、カチャっと掛け金の掛かる音がして、僕はハッと我に帰って小阪を
振り返りました。
「小阪・・・」
小阪は、黄色地にテディベアのプリント柄のパジャマ姿でしたが、慌てて着
たのかズボンはねじれ、上着はボタンが留められず素肌に袖を通しているだけ
の状態で、オッパイが見えそうになっています。
いつもの明るい表情はなく、暗い顔で、泣きはらしたのか瞼もはれぼったく、
髪もボサボサでした。
「トベくん・・・」
小阪は閉めたドアにも垂れて僕を見つめていましたが、やがてポロポロと涙
を溢れさせ、クシャクシャになった顔で、オンオンと泣きながら僕に寄りか
かってきました。
僕は、手にしたミカンの袋を下に落として、小阪の背中に腕を回して、そっ
と抱き寄せました。
小阪は僕の肩に顔を埋めて、僕のシャツを涙と鼻水で濡らします。
「小阪・・・」
声をかけると、イヤイヤをするように首を振って、一段と大きくしゃくりあ
げるので、落ち着くまで泣かせてあげようと、優しく背中をさすってあげま
した。
彼女の号泣が収まるまでの間、僕は改めて部屋の様子を眺めました。
石油ストーブの焚かれた部屋は、夏場のように、ジッとしていても汗ばむ暑
さで、換気が悪いため空気がよどんで頭が痛くなります。
一酸化炭素中毒という言葉をその頃は知りませんでしたが、もしその知識が
あれば、迷わずすぐに窓を開けていたと思います。
それに、追い討ちをかけるのが、異様な臭いでした。
臭いの発生源は、すぐにわかりました。
部屋の隅に置かれていたプラスチックのゴミ箱に液体が入っていて、ビニー
ル袋で覆って口を縛ってありましたが、液体を詰める際に漏れたりこぼれた
りしたものの臭いが部屋に充満しているのでした。
中の液体が何なのかは、小阪が部屋に閉じこもっていた時間の長さで、容易
に想像がつきました。
篭城期間が一日未満なので、固形物の処理はまだ発生していないようです。
ただ、僕にはこの掃除していないトイレのような臭いに混じって、女の子の
エッチな匂いが混じっていることも気になっていました。
もちろん、その発生源は、いま僕に密着している女の子の身体だということ
は確かなようです。
小阪の家は、僕の家と作りが同じで、小阪が使っているこの部屋は、自分家
で言うと姉二人が使っている部屋で、当時としてはおしゃれな8畳の板張り
の洋間になっていて、そこに勉強机や本棚、ベッドが置かれ、周りに女の子
らしくぬいぐるみや人形が置かれていました。
部屋は、綺麗に片付けられてありましたが、床に無造作に脱ぎ散らかした制
服の上着とスカートそれにブラウスが、ベッドの上には丸められたシミーズ
とパンツが捨てられたように置かれていて、部屋に入ってまもなく裸になっ
たことを想像させました。
パジャマの上着の下は素肌でしたが、ひょっとして、下もパジャマだけかも
しれないと気づいて、僕は抱きしめている腕に力が入りました。
僕と小阪の身長は小阪のほうが2、3センチ大きくて、脚も小阪のほうが長
いのか、いつの間にか膨らんだ僕の突っ張りが、小阪のふっくらとした恥骨
を突付いています。
小阪は涙を拭うように顔に手を当てて泣きじゃくっていましたが、十分に泣
いて涙が涸れてくると手を僕の腰に回してさらに下腹部を密着させてきまし
た。
僕はズボンの突っ張りを気にしながらも、小阪の頭を優しく撫でてやりまし
た。
「小阪さん・・・」
小阪は僕のホッペタに自分のホッペタをくっつけて、すすり上げます。
「トベくん・・・もう、坂本さんやめて私にしとき・・・」
「えっ?」
「坂本さんなんか、シマノくんにやったらええやん!」
小阪は顔を離すと、僕の唇をぎゅっと塞ぎました。
柔らかな唇の感触が、昨日指先に触れた小阪の大人の身体を思い出させ、僕
の気持ちを暴走させました。
押し当てる小阪の唇を割って前歯と歯茎を舌先で撫でて口を開かせます。
固く閉じた歯が僕の舌に誘われるように少し開いて、その隙間に舌を滑り込
ませました。
小阪と舌を絡ませたいのですが、小阪はなかなか乗ってきません。
身体を愛撫すれば、気持ちも変わってくるのでしょうが、小阪が僕の脇の下
から腕を回して、しっかりと抱きつき、ちょうど相撲の両差しの格好になっ
ていたため、僕は手がまったく使えない状態で、豊かなオッパイも大人っぽ
いオメコも柔らかそうなお尻も触れることすらできません。
これは、かなりのもどかしさで、僕は両手を小阪の背中でバタバタとむなし
く上下させていました。
仕方なく、何とか小阪の舌だけでも欲しくて、口の中をべろべろと舐めまくっ
て舌を探しますが、小阪が避難させているのか、僕の舌が短いせいか、むな
しく空を切るだけです。
お触りもできず、舌も貰えない状況で、チンチンだけが欲望にギンギンになっ
たまま、やたら長いキスになっていましたが、そのうち、合わせた唇から、
冷たい液体が流れ込んできました。
その液体は、やけに塩っ辛くて、冷静になって小阪の顔をよく見ると、また
だらだらと涙と鼻水を流していました。
ハッとして唇を離すと、また小阪は僕の肩に顔を擦り付けて声をあげて泣き
出しました。
「ああぁ・・・シマノくん・・・」
「小阪・・・」
僕は、ため息をつきながら小阪の背中をトントンとたたいて、なだめます。
泣き声が落ち着いたころ、僕は小阪をベッドに座らせて、その隣に腰を降ろ
しました。
俯いて涙を拭う小阪の胸元がはだけて、横から眺めると、ふっくらとしたオッ
パイと乳首まで、はっきり見えます。
「そや、ミカン食べよ、ミカン。」
オッパイを触りたくなる気持ちをぐっと抑え、さっき床に置いたミカンの袋
を取ってきて、僕と小阪の間に置きました。
「オマエ、ミカン好きやろ?」
僕は、その中の一つを取り出し、皮を剥いて、丁寧に筋を取りました。
「はいっ、ミカン。」
僕がミカンの一房を小阪の口元に持っていくと、唇を寄せてパクッと口に入
れました。
「美味しいやろ?」
小阪は小さく頷くと、そっと唇を開きました。
僕は黙ってもう一つミカンを口に運んでやりました。
「・・・美味しい・・・」
ポツリと言った小阪は、もう泣き止んでいて、僕は彼女の口元にせっせとミ
カンを運びました。
「きのうな・・・」
ミカンで落ち着いたのか、小阪がぼそぼそと話し始めました。
「シマノくんが坂本さんのこと言ってて、私、もうアカンって・・・」
寂しそうに話す横顔を見つめながらも、その下のチラチラ見え隠れするオッ
パイに目がいってしまいます。
「そやから、トベくんも坂本さんのこと諦めるんやったら、私もトベくんに
しとこかなって・・・」
僕は、話しを聞きながら、もう一つミカンを剥いて、小阪の手に握らせまし
た。
「トベくんにキスされちゃったし・・・あんなことも、私、初めてやったし、
なんか、ドキドキして・・・トベくんのこと好きなんかなぁって・・・」
小阪は、そこまで言って、手にしたミカンを割って一房を口に運びました。
「でもな、やっぱりシマノくんのコト思い出して・・・ごめんね・・・私、
坂本さんの代わり、なられへん。」
「代わりやなんて言うたら、坂本さんの下みたいやん。」
僕は、小阪の顔を覗き込みました。
「小阪は、坂本さんなんかより、ずっと魅力的やんか。」
小阪も僕の顔をちらっと見ました。
「オレ、小阪にエッチなコトしたくてしたくて、必死に我慢してんやで。」
「・・・ごめんね・・・」
何か言って突っ込んでくるかと思ったのに、素直に謝るのは、ちょっと小阪
らしくないと思いましたが、こういう状況なので仕方ないのかもしれません。
「そや!小阪、オマエ、オレなんかとせんと、シマノとしたらええねん!」
まったくの思い付きでしたが、どうせするなら、本人としちゃえばいいわけ
です。
「えっ!?」
「なんぼ、アイツが坂本さんのこと好きでも、オマエ相手にしたら、もう、
メロメロなるって!」
「え~、ほんまにぃ?」
「・・・まあ、アイツが坂本さん一途やったら分からんけど・・・」
小阪が余りにも、胡散臭げに見るので、勢いで言った僕も、トーンダウンし
てしまいます。
「どうやろ?シマノくん初めは藤田さんのこと好きやったから・・・」
「へっ?」
意外な事実を、さらりと言うので、驚きました。
「去年の夏休みかなぁ・・・シマノくん、こっそり藤田さんに好きやって告
白したんやけど、藤田さん、みんなと遊ぶのがいいって、断ってん。」
「それって、みんな知ってるん?」
「内緒やから、女子しか知らんと思うけど・・・」
(女子、怖ぁ~・・・内緒ちゃうやん・・・)
「それで、なんで坂本さんになるん?」
「坂本さんとシマノくん、前からドッジとか運動遊びで気が合うてたみたい
なんやけど、トベくんが坂本さんのこと好きって話しがあったやん?・・・」
「ああ、11月22日のゲーム大会?」
マサコとの記念日なので、よく覚えています。
「さすが、覚えてんね!・・・えっと、その頃からシマノくんも坂本、坂本っ
てよけいに引っ付くようになって・・・仲良い子がトベくんに取られそうで
イヤやったんちゃうかなぁ・・・」
思い出しながら、小阪の表情が暗くなります。
「うわぁ、オマエ、一緒に遊んでて、メチャ辛かったんちゃうん?」
「うん・・・死にたかった・・・」
もちろん冗談だと思いましたが、この部屋の状況下では、ドキッとせざるを
えません。
「もう、そんだけシマノのこと好きやったら、坂本さんから奪い取るぐらい
でないと!」
「でも、友達の彼氏でしょ・・・」
「オマエ、坂本さんとの友情を取るか、シマノを取るか、どっちや?」
「う~ん、べつに私、坂本さんとは、そんなに親友って訳でもないし・・・」
案外、薄い友情なのに、ちょっと肩透かしを食らった気分になりました。
「幼なじみ・・・ってわけないんよなぁ・・・」
「なんで?私、二年の時にトベくんとおんなじ組に転校してきたんやん。」
小阪ママの言ってた通りです。
「そう・・・やよ、なぁ・・・」
「どうしたん?」
小阪が不思議そうに首を傾げます。
「いや、前に、小阪と坂本さんが幼稚園の頃からの友達って聞いたような気
がしたから・・・」
「それって、藤田さんの間違いちゃうん?」
「藤田?」
「うん、幼稚園一緒やったそうやし。」
「藤田かぁ・・・」
僕を嫌っていると思っていた藤田も、最近の様子を見てると、何となく僕に
気があるんじゃないかと思える節もあって、ひょっとして坂本は藤田が僕に
好意を持っていることを知って、僕が藤田に関心を持たないように、わざと
幼なじみは小阪だと言ったのかも知れません。
(確か、あのとき、坂本のお父さんが「あの子なんて名前やったかなぁ?」
って聞いたとき、坂本さんは、慌てたように「こさか!」って言ってたよなぁ
・・・)
そう思いながら、小阪を見ると、何かを考えてるようで、僕は話しを続けま
した。
「小阪、シマノにアタックしろ!思いっきりユウワクしたったらええねん!
絶対上手くいくって!」
「でもなぁ、なんか怖いなぁ・・・」
「何が?」
「ちょっと、思ってたんやけど、私がシマノくんと仲良くしたら、坂本さん
機嫌悪くなるみたいやから・・・」
「えっ!?」
「二学期の終業式の日も、クリスマス会の相談してるとき、シマノくんに、
一緒に歌うたおう!って話ししてたら、次の日、川に落ちたし、昨日もドッジ
してるとき、シマノくんにボール渡したり守ってもらったりしてたら、あんな
ことなったし・・・」
それを聞いて、僕は少し動揺しました。
「いや、それ、ちゃうやろ・・・」
「なんで?」
「いや・・・なんとなく・・・」
僕と小阪のことで坂本が怒っているとは、いえる訳ありません。
「そやから、シマノくんユウワクなんかしたら、坂本さんものすごい怒ると
思う。」
「大丈夫、大丈夫!オマエとシマノが上手くいったら、シマノが守ってくれ
るやろし、上手くいかんかったら、オレが守ったるよ・・・オレの女に手ぇ
出すな!って。」
「ありがとう・・・ごめんね、私のために・・・」
「気にすんなって、オレ、小阪の味方やから・・・」
「うん、トベくんも私がシマノくんと付き合えたら、坂本さんと仲良くでき
るかも知れへんよね・・・」
(そう!それや!それや!)
「でも、その・・・ユウワクってどうやってしたらいいんやろ?」
まだ、迷っている小阪に、ほんの軽い気持ちで言いました。
「オレ、教えたろか?」
「うん!教えて、教えて!」
小阪の返事も軽くて、僕はゴクリと唾を飲み込みました。
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