思わぬ通行人に邪魔されてしまった私たちは、
そのままテンションもなんとなく落ち着き、イスに座りなおしました。
チエちゃんはきゅーと私にしがみつくようにしていました。さっきとは違
い、もうオンナからコドモの表情に戻っていました。
「う~・・・ぱんつかえしてよー、ばかばか」
「いやー」
「もう、ばかばかばか!」
パンツと体操着は脱がしたときに、私のカバンに放り込んだのですが、
私はカバンを抱きかかえて、しばらくそんなふうにふざけあっていました。
すると唐突に
「う~・・・おしっこもしたい・・・」
と言い出しました。
すぐ近くにあった公園のトイレの前までいっしょにいきましたが、すでに薄
暗くなってきていて、チエちゃんはどうもトイレに入るのが怖いようでし
た。
古い電灯も点いていない、暗いトイレだったからしかたありません。
「まだ、がまんできる?」
と、聞くと、「えー・・・こまった」という顔をしました。ほんとにコドモ
だなと思いました。
「誰もいないし、ここでしたら?」
冗談半分でいうと、なんとチエちゃんはコクと頷いて、ウロウロとその辺を
歩き回りだします。何のためにウロウロしているのか不明でしたが
結局、チエちゃんは私のすぐ背後で、スカートをたくしあげながら、ちょこ
んとうずくまって
ショロショロとおしっこをしはじめました。
私が振り返ると「見たらイヤ!」と、怒りました。そう言われながらも、何
回も振り返って見てしまいましたが。
おしっこが出おわると、何回かお尻を大きく縦に振っていました。私がその
ときやっと体操着とパンツを渡してあげると、
チエちゃんはあわててパンツをはいていました。パンツを引っ張り上げてい
る最中に、
「おしっこ拭かなくてもいいの?」みたいなことを聞くと、
「あ・・・えへ・・・」
恥ずかしそうに笑っていました。そして「また、忘れた・・・」と。
「また?」
忘れたより、その「また」が気になります。なんせ、あのパンツのことがあ
りますから。
「いっつも、忘れてるの?」
チエちゃんは「うーーー」と、照れ笑いしながら、そのまま衣服をはき続け
ています。そして
「中学生なんだから、いい加減にしなさいって、このまえ言われたけど、す
ぐ忘れる・・・なんかパッてパンツはいちゃうの」
「どうして?」
「わかんない。クセ!」
なるほどでした。それでいつもおしっこのシミパンだったわけだ。
それにしても変なクセもあるもんだと思いました。
「だって、トイレの中ってコワイし、いつもすぐ出たくなる」
そんなことを言っていました。
薄暗い夕闇の中、ふたりでトコトコ歩いて家路をあるきました。
周りにひとがいなくなると。チエちゃんは私の腕にしがみついて歩きまし
た。
いろいろおしゃべりしながら歩いているときふと、さっきの「おしっこ拭か
ない」話題にふってみると、
「いやん、うるさい」
と、プイと怒りました。そして、びっくりするような一言。
「じゅーあ・・・今度から、お兄ちゃんが拭いて!」
「それかあ、おしっこのとき、いっつもいっしょにトイレに来て。コワイも
ん」
きーっと、コドモのいたずらっぽい笑い顔でわたしの顔をのぞきこんで、私
に抱きつきました。
なんだかよくわからないけど、チョー幸せな気分になりました。