何の変哲もない25メートルプールに、夏休みはほぼ毎日通っていた。
立地も悪く古びたプールはいつも二割くらいしか客がいないから、私みたいに独りで行く子には静かで良かった。
ただでさえ流行ってないのに、お盆真っ只中になると閑古鳥が鳴いていた。
私はその日は異様に性欲が高ぶってどうしようもなかった。
ロッカールームやトイレなどでも触らずにいられないほどムラっとしていた。
生理が訪れてからはたまにこうなる。
人に話せる事でもないし、私はけっこう自分の性欲が強いのに困惑さえしていた。
私がこのプールに通いつめていたのは、五年生で転校してきて学校外でつるむ子がいなくて暇だったのと、やっぱり生の男のボディを拝めるからだ。
私は脇の下フェチだったから、ダボついた海パンでもまあ満足できた。
わりと頻繁に顔を合わす監視員のひとりが、いつも私を物欲しげに眺めているような気がしていた。
物腰の柔らかい彼は私よりもっと幼い子達からも馴染まれていたようだったが、六年生にもなると無邪気に甘えるのも抵抗があり、つい思いとは裏腹にすましてしまう自分がいた。
せいぜい会釈くらいが精一杯だった。
それにしても彼の視線というのは、思春期真っ只中の女子のプライドを大いに触発してくるものだった。
変な話、私はあの視線で様々な妄想ができた。
1日の仕事が終わって、ひとり最後にシャワーを浴びながら、私の水着姿を想像し性器をしごいてるシーンは何百回思い描いたかわからない。
自分がそういう対象にされるのとか全然アリな子だったから。
たぶんあの時点で人生最大なくらい発情してた私。
ほとんどいない客がポツリポツリとさらに減っていく終焉モードの中で私が描いた妄想は、誰もいないロッカールームで襲われる妄想だった。
私は体育座りをしながら下半身をバスタオルで隠していた。
もう、触っていたのだ。大胆にも。
もちろん水を挟んだ対面側には彼がいた。
(今私さわってるんだよぉぉ…)
誰にも聞き取れないほど小声で呟いた。
触っても触ってもどうにももどかしい気持ちが抑えられなくなった私は、おもむろにバスタオルを剥がすと、大股全開で彼を見た。
完全に挑発していたと思う。
どうにでもなれとかなりやけっぱちな心境だった。
一瞬動きが止まって、それからはこっちが気になって仕方ない感じなのが遠くてもわかった。
私は、それくらい完全開脚だった。
まるで見ろと言わんばかりに。
急に雲行きが怪しくなり、客もいよいよ私だけになった。
それを待ってたかのようにこちら側にゆっくり回ってくる彼。
今日何もなかったらこれからもなにも起こらないなっていう状況になっていた。