実はこの話には後日談があります。
事件をおこしたのは約十年前。
これは、その五年後の話。
僕は、事件後もその町を出る事なく、美少女マンガを描いたりして暮らしていました。
そして、画材を買いに町に出て、加奈ちゃんと再会したんです。
…と言うか、加奈ちゃんに発見され呼び止められました。
僕は、僕を呼び止めた美少女が加奈ちゃんだとすぐにわかりました。
だって、僕が、その肌にふれた事のある唯一の女性ですから。
そう、その時も今も、もちろん僕は童貞です。
加奈ちゃんは美しい女子高生になっていて、友達二人と一緒でした。
『やっぱりそうだ』
えーと…久しぶり。
『何が久しぶりよっ!!こいつ、私が小学生の時、私に悪戯してタイホされたんだよっ!!』
『えっ、マジで?キモ~い』
けっこう人通りもあり、立ち止まる人も…。
『ま、パンツ脱がされてさわられただけだから、私は処女だけどねっ!!』
『ちょっとあんた、こんなとこで何言ってんのよっ』
赤面して立ちすくむ僕と、赤い顔して肩を怒らせてる加奈ちゃん。
僕も困ったけど、加奈ちゃんも困ってるっぽい。
『僕、今、ロリコンマンガ描いてるんだ』
『えっ、漫画家なの?』
『ってか、ロリコンマンガって…』
実は、あなたとの体験をマンガ化したのがデビュー作で…。
『え?』
『じゃ、加奈、モデル料貰えんじゃね?』
払ってもいいですよ…って言うか、いつかあなたに会えたら謝りたいと、ずっと思っていたんです。
『…』
あの時、僕、あなたを叩いちゃったでしょ?
あれが、ずっと気になっていたのです。
『加奈、叩かれたの?』
『ってか、そっちかよ』
僕、暴力は嫌いなのに、自分より弱い人を殴って言うことをきかせるなんて、最低じゃないですか。
『女の子を襲った時点で最低だけどな』
あの時は、ホントにごめんなさい。
何故か、ずっと黙っていた加奈ちゃんが、ようやく口を開いた。
『もう、いいよ』
え?
『なんかずーっと気持ちがモヤモヤしてたんだけど、少しだけモヤモヤが晴れたかも』
この後、何回か町で加奈ちゃんを見かけたけど話をする事はなく、最後に見かけた時、加奈ちゃんは胸の前で小さく手をふってくれた。
その後、加奈ちゃんに会う事はなく、加奈ちゃんは町を出たのかも知れません。
悪戯した話じゃなくてごめんなさい。
でも、僕はどこかに、加奈ちゃんの思い出を書き記したかったのです。
僕はこれからも、僕が罪を犯した町から離れる事なく、美少女マンガを描いて生きていくつもりです。