もう随分昔の話なので書こうと思う。
当時、俺は彼女と2DKの賃貸マンションに住んでいた。が、別れというのは唐突に訪れ彼女は俺の元から去っていった。
特に悲しいという感情もさほど無かったが、無駄に1人だと広いこの部屋に住むのには少し物寂しいし、何より家賃もそれなりにするので貧困層の自分には少し辛いと思った。現に今のこのマンションは6世帯しかないのだが、全ての世帯は家族なり、兄弟なり複数人で住んでる人ばかり。
そんなこんなで次の引越し先を探したりしてたのだが、いかんせん次の引越し先への入居費用もままならず数ヶ月ジリ貧生活を続けている内に隣が入れ替わったのだ。
ある日、インターフォンがなる。
俺「はい」
隣人「すいません、最近引っ越して来たものですが、挨拶させて貰いに来ました」
ドアを開けて外に出るとそこには30前後の母親とJS3、4年生の女の子が目に飛び込んできた、がすぐに違和感をすぐに覚えた。
母子家庭なのか… それにしてもこの子もしかして……
そんな視線を察した母親が話を切り出してきた
母「あ、あの、実はこの子少し障害がありましして、夜分たまに大声だしたりドタバタしたりうるさくしてしまってこれからご迷惑おかけするかもしれませんがよろしくお願いします」
母娘手を繋いで挨拶に来て、言葉使いは丁寧で普通の母子家庭に見えるがどうも心にモヤモヤしたものが引っかかるが、その時は気にも留めず挨拶だけして子供の頭を軽く撫でて
「よろしくね、お兄さんと仲良くしてね」
と、いい顔合せは終了した。
それから数週間過ぎて何事もなかった。
正直隣の子供がうるさかったらどうしよう?
という不安があったのだが、問題になるような事は全くない。
むしろ玄関先で母娘と会うと礼儀正しいし、普通に世間話もするなんら変わりもない普通の家族だ
が、初めて会った時の違和感の原因が分かった。
派手なのだ、母親が。
そう思って振り返ればいつも違うブランド物の服やら鞄など会う度に毎回違う。
のに関わらず子供はいつも同じ上下のスウェットに汚れたクロックス風のサンダル
そうか…子供には金かけないんだな。
そして何事もなく数ヶ月が過ぎていく中、
急展開が訪れる。
隣人というの同世代というので結構仲良くなり晩御飯の残りとかをくれたりしてたのだが、この日は違った
お金を貸して欲しいというのだ。
金額は10万。
細かい流れは省くが
正直そんなお金など全持ってはいなかったのだが、晩御飯をよく貰ったり、隣人ということで断ると気まずくなるのが嫌だった俺は次の日消費者金融でお金を借り、貸すことになる。
お金は直ぐに帰ってきたのだが、次の月にまた借りたりと自転車操業になりつつも仲は更によくなり込み入った話なども話す様に母子の家庭環境などベラベラ喋るようになった。
娘の事も知り名前は美香で9歳だそうだ。
そんなある日母親からお願いが
娘を一晩預かってくれない?