俺は、今年の秋に31歳になる会社員だ。
中年の仲間入りをする前に、俺の高校生時代のことを語るとする。
その前に俺の父親について言おう。
父親は、ある農村の農家の家に生まれた。だが、それは周囲から決して望まれない誕生だった。
父の両親は農家の息子と娘であったが、お互い一人っ子だった。当時は一人っ子同士の結婚はタブー視されていたのだ。あくまで、その村の掟だけかもしれないが。
父の両親は、お互い婚約者がいるのにも関わらず、恋仲となり、密会を重ねて、母親の腹部を孕ませるという結果となった。
当然、双方の家は出産に反対したが、その時にはもう堕ろすこともできす。出産という結果となった。
父は生まれたものの、すぐに里子に出されてしまった。双方の家の婚約者とその親族が養育に反対したためであった。
こうして、父親は家から絶縁。
そのことが皮肉にも俺のその後の運命を決めてしまった。
里子に出された父は、里親達から冷たくされ、更には、彼等が欲深く、煩悩に満ちた性格だということを知った。
それが、人生の大きなトラウマとなり、自分も他人に冷たく煩悩に満ちた人間となることを誓った。
大人になった父は、孤児だった母親と結婚。俺が生まれた。
父は、家というものにいいイメージがなく、俺が幼少の時から「家族というものはいいもんじゃない。」とか「人間は欲だけで生きるもんだ。」と言い聞かせていた。
その言葉に刷り込まれたのか、俺は欲望にのみ生きる性格となってしまった。
(続く)