某県の山奥にフライをやりに入った時の話です。
高速沿いの林道に愛車の軽4駆を停めて休憩していると、作業通路になってい
る通用路のトンネルに親子連れらしき人影が見えた。
ハイキングにでも来てるのかと思ったが、なにか様子がおかしく直感的に事
件の匂いを感じた俺は二人の姿をジッと目で追っていた。
すると、女の子(小5くらい)が中年の男に身体を触られているのが見えた。
俺は心臓をバクバクさせながら女の子の運命を見守っていたが5分も経たな
いうちに男は逃げ去ってしまった。
暗い通用路にひとり残された女の子は、コンクリートの坑壁にもたれ掛かか
りながら虚ろな目で呆然と立ち尽くしていた。
非現実的な光景に冷静な判断力はおろか人としての心までも失っていた俺は
車からとびたし女の子の所に駆け寄っていた。
「君ッ、大丈夫?」
俺の声に女の子は全身をビクリッと大きく揺らして泣きそうな顔になると黙
ったまま俯いてしまっていた。
「安心して・・・もう怖くないから」
放心している女の子は、俺がなにを言っても聞こえてないのか【気をつけ】
の状態で自分の足元をずっと見つめているだけだった。
「送っていってあげるから・・・」
できるだけ優しく言いながら女の子の手をそっと引き助手席に乗せると車を
発進させた。
「家まで送っていく」気など何処にもなかったが・・・・