東京オリンピックの頃、小学五年だった。東京とはいえ山の中の田舎町にくらしていた。まわりは畑と藪神社の森だけの一軒家で隣の家は森を越えたかなただった。もう一軒人家というか農機具置き場の物置小屋があり、実はここに小学校の理科を教える男先生が一人で暮らしていた。鍬やら鋤やら土木工事の道具がつめこまれた小屋の三分の一くらいを一応板壁で仕切って床もあり何処かからもらってきたらしい古畳も敷いてあった。この小屋が建つ土地は自分の家で所有しているのだったが土建屋に貸し、その土建屋が先生に又貸ししていたのだった。ある日一人で神社の森をうろついていると女の子が畑道を歩いているのが見えた、すぐに木の陰で見失ったがそのあたりは先生の小屋以外なにもないところで不思議だった。十日ほどしてまたその子を見かけた、先生のところに行く途中としか思えなかったが、これは以外だった。というのはこの先生は授業がなかなか厳しく笑い顔もほとんど見せず児童に慕われるより畏れられる方だったからだ。そこに誰だか女子が行くらしい、自分は好奇心で一杯となりそっとつけてみた。すでに女の子は見あたらないが小屋に入ったものと確信していた。物置の戸は風を入れるためか半分あいていて表に葦簀がたてかけてある。窓は一つもないから中は暗がりだった。土間から一段あがった居住部分は一枚引き戸でしっかり締まってその下に先生の靴と赤いズックが脱いであった。話声も聞こえず妙に静閑としている、と想っていたとき中で人が動く気配があり少女のよろこびの声があがった、すぐにうめき声ももれはじめた。板壁の節穴に目を当てて窃視みた、居間の方には窓がありカーテンが引かれてはいるがこちらよりはかなり明るい。腕や脚、頭腹胸、素っ裸の二人が絡み合っていた。