ぼくは小学校に行くようになってから、だいたい「あいもっち」といっしょ
に帰ってる。
あいもっちは、相本さんという女の子のあだ名です。
学校ではあいもっちとしゃべったり、遊んだりすることはめったにない。
あいもっちは勉強がようできて、大人しいコやから、ぼくと基本的に色がち
がうねん。
けれど、ぼくとあいもっちはいちばん学校から遠い所に住んでいて、
その辺に住んでいる、ぼくと年の近い子供が、あいもっち以外におらんから
なんとなく、ずっといっしょに帰ってるというわけや。
学校と家の間に「みます」っていう、ボロいお店がある。
スーパーマーケットというとかっこええけど、実際はただの古い何デモ屋
や。
なぜか、あいもっちは「ちょっとまっといて」といって、いつもそこのトイ
レにおしっこしにいく。これが日課や。
たぶん、あいもっちはおしっこが近い。
授業中になんかソワソワして、必死でがまんしてるときがようある。
でも、あいもっちは大人しいから、先生おしっこいきたいですって、ようい
わんみたいや。
そんで、ぼくらが4年生のときにちょっとした事件が起こった。まあ、事件
というほどのことでもないけど。
あいもっちにとって重要なおしっこ休憩ができる「みます」がつぶれてもた
んや。
「いやあん、トイレいかれへんわー」
あいもっちは、閉まったままのシャッターをみて、小さい声でいうとった。
「あいもっちが何も買わんと、トイレばっかり使ったから赤字になったんか
なー」
そないいうたら、あいもっちは機嫌を損ねたみたいやった。
仕方ないから、あいもっちは家までおしっこがまんしたみたいや。とちゅう
でニワトリみたいな変な歩き方になったり、
ズボンを無理にひっぱりあげたりしとった。
それからしばらくしてや。
そんときも、あいもっちはニワトリ歩きになっとった。ぼくはなんで学校で
おしっこしてから帰らへんのやろうと思った。
あんまりしゃべらへんあいもっちは、その日とくにしゃべらへんかった。た
ぶん、しゃべるどころではなかったんやろな。
ふと、あいもっちの気配がなくなったような気がして、後ろを振り返ってみ
たら、
あいもっちが道のわきでズボンとパンツおろしてしゃがんどった。そして、
「見んといて~」
といいながら、おしっこしはじめた。
見んといて~言われても、女の子のおしっこなんてあんまりみたことがない
から、じっくり見てもた。
じゅううう……みたいな音がおしっこするときに出るんやな思った。
おしっこはすぐに終わって、あいもっちはあわててパンツはいとった。
そのとき、パンツがぬれているのが見えた。
たぶん、がまんの限界が来てパンツの中にちょっと出てもたんやなと思った
が、
そこだけ見んといてやることにした。
それから、ときどきあいもっちは学校の帰りに外でおしっこした。
どうも家までがまんでけへん日があるらしい。でも、ぼくはあいもっちのお
しっこしてるとこ見るの、なんか好きや。
ちんちんがないから、全部脱がなおしっこでけへん。
ぼくでいうたら外でうんこしてるみたいなもんや。相当恥ずかしいやろな。
ほんで気がついたことは、あいもっちのパンツはいつもまたのところが黄色
おなっとる。
最初はおしっこチビってるんかと思とったけど、そうでもないみたいや。
あいもっちがおしっこしてるところ見てると、おしっこ終わっても、
ワレメとか、そのまわりはおしっこだらけや。
ほんで、そのままパンツはくから、残ってたおしっこがしみこんでしまうん
やな、と、気がついた。
なんや、女子ってまたのところションベンくさいんや、と、思うとちょっと
おもしろかった。
あいもっちも最初は「みんといて~」いうて、恥ずかしがったのに、
だんだん変わってきて、
「お外でおしっこするほうが、なんかトイレより気持ちええわ」
なんていうとった。
ぼくもたまにおしっこした。ぼくは男やから立ちションでよい。
あいもっちは「おとこってええなあ」と言ってなんかうらやましそうやっ
た。
そんとき、ぼくは女は立ってでけへんのか? と、聞いてみた。
あいもっちはお風呂場とかやったらしたことある、言うとった。
なんや女でも立ちションできるんや。それやったら、全部脱いですわってせ
んと、立ってしたらええねん。
ぼくはそう思った。
そして、次にあいもっちがおしっこするときは、立ってしてもらおうと考え
た。
これは大発見であるにちがいない。女子も立ってするようになったら、
いちいち大便用のところに入らんでも、かんたんにおしっこできるやん。
「なあ、立ってやってみて」
ぼくは率直に言ってみた。
「そんなん、うち女なんやから、できるわけないやろ」
あいもっちは反対した。ぼくはお風呂場でできるのになんで他のところやっ
たらでけへんねんと、さらに反論した。
あいもっちはしばらく考えて、ズボンとパンツを男みたいに前のところをず
らして、ワレメをだしてみた。
「えー、なんかちがうわー」
「このへんからでえへんのか?」
ぼくがあいもっちのワレメの、男ならちんちんがあるあたりを指でつっつい
たら、
あいもっちは「ひゃっ」っていって、体をのけぞらした。
「さわらんといて!」
そういってスネてしまった。考えてみたらぼくもちんちんを触られたら、い
い気はしない。
「ごめん」
ぼくはあやまった。
よく見てみると、あいもっちのパンツが黄色く汚れているのは、もっと奥の
方や。
たぶんあのへんからおしっこがでるんやろうなと想像したら、おしっこした
らパンツがびしょびしょになる。
なかなか女子が立っておしっこするのは難しそうや。
社会の窓が前やなくて、太ももの間くらいにないとあかん。
そんなズボンはこの世にないのであいもっちに立っておしっこしてもらうこ
とはあきらめた。
つづく