あの時、別の選択をしていたらと未だに思い出すこと。
習い事の後、街の小さな古本屋に寄ることがあった。
店内は狭く、棚の間隔も人がギリギリすれ違えるくらい。店員もエプロンをしたやる気のないおじさん一人。
空気も埃っぽいし、薄暗い。怪しい雰囲気が漂っており、少しワクワクした。何より、ビニールは被っているが、エロ漫画が買えた。
当時はネットもそこまで進んでなく、ガラケーで画素の粗いヌードを見るのがやっとだったし、量も少なかった。
オカズ入手先としては貴重なルートであった。初めて買った時は怒られたら逃げようと思っていたが何もなくサクッと買えた。
店に行くと、少ないお小遣いから一冊だけと決めて買った。
大体は巨乳ものかお姉さんものが多かったかな。個人的には熟女趣味もあったが漫画はあんまり無かったと思う。
ある時店に行き、鼻息を抑えながらアレでもないコレでもないと本を物色していると人の気配がした。
すれ違えるよう身をかわすとふわりと石鹸の良い香りと、背中に柔らかな肉の感触が通り過ぎた。
心臓が固く鼓動した。女の人だ。思った時にはズボンの中ではち切れんばかりに主張が完了していた。
緊張して、女の人の方はチラリとしか見れなかったが、20代半ばくらいだったと思う。
当時の自分からしたら一回りも上のお姉さんである。興奮したが、そんな自分を悟られるのに怯えてその日は何も買わず帰ってしまった。
家に帰ると思い出して猿のようにシゴいた。何度吐精しても鎮まらなかった。
その店に行くたびに、お姉さんがいないかドギマギするようになった。いないと分かると、キッパリ忘れて漫画を漁った。
しばらくした日、アレコレと漫画を吟味していると人の気配。振り向くと、いた。あのお姉さんだった。また近くを通る。興奮した。だけでも嬉しかったが、通り過ぎ様「いつも真剣ね」と小声がした。鼻で笑うような吐息も感じた。
えっ、と声が出た。そのお姉さんはもうレジに向かったようだった。カシャーン、とキャッシャーの開く音、ガサゴソと袋詰めする音。聞き取れるかどうかの「ありあとあしたー」というおじさん店員の蚊の鳴くような声。
何か声を掛けたい、そう思っただけで、実際には何も出来なかった。臍から下が痺れたように、血の気が引いていた。
それ以来そのお姉さんには会えなかったし、その本屋も潰れて、今では老人を集めて健康食品を売りつける会社に様変わりしていた。
なぜ話しかけてきたのか、そもそもお姉さんの声は妄想だったのか。あの時もし話しかけていたら。何か楽園のような淫猥な展開があったのだろうか。そう思うと未だに後悔が止まらない。