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事の始まりは私が24歳、2つ歳上の妻が26歳の時だった。
当時、私は特殊な技能の資格があり、会社から東北支社への単身赴任を命ぜられた。
一見、地方への左遷のようだが、社長、専務、常務、そして私を高く買ってくれてる直属の上司である部長が、帰って来たら役員待遇で迎えると約束してくれての移動だった。
ある大きな現場での監督で期間は約一年だった。
当初は妻も働いていて、直ぐには移動できないとのことで仕事の引き継ぎが完了次第、行きますということだった。
しかし、一ヶ月しても妻は来なかった。
2ヶ月後にまだ来られないのか?と訪ねたら、上手く引き継ぎができないからもう少し待ってということだった。
3ヶ月してやっと本社に帰り、仕事や現場の状況を報告し、一泊だけ妻の待つ家に帰れた。
その夜は血気盛んなヤリたい盛りの若者で当然、妻を求めた。
しかし、妻は引き継ぎが上手くいかないことで疲れてる・・・そして生理中を理由に断られた。
我慢できずにトイレでシゴキ、ベッドに戻ると妻は私に背を向けて寝た。
その時私は、妻が生理でお腹痛くて苦しんでるのに私だけトイレで処理して来たので怒ってるのかと呑気に思っていた。
翌日東北に戻り、その2週間後に妻から東北支社に封書が届いていた。
私はその封書を開封して驚いた。
中には妻の署名捺印された離婚届の紙と短い手紙があり、別れて欲しいと書いてあった。
何度も電話し、メールを送ったが妻からは音沙汰が無かった。
精神的におかしくなりそうでその日は全く仕事にならなかったのでその夜、支社の上司に事情を話して妻が待つ家に帰ろうとしたら、やっと妻から電話が来た。
『ごめんなさい・・・別れてください・・・』
私が何を言っても妻は話しにならなかった。
話の途中、理由を聞いても、怒りに任せて怒鳴りつけても、今度の休みに帰るからそれまで待ってくれと言っても一切ムダだった。
妻からの応えは、『もう、決めたから・・・お願いします・・・別れてください・・・。』
だった。
私は『ちゃんと応えてくれないと納得いかない!・・・他に男が居るのか?・・・好きな人ができたのか?』
と、語気を強めて聞いた。
すると妻は渋々、『そうです・・・。』
『今も一緒に居るのか?・・・その男に抱かれてるのか?』
と聞いたら正直に『うん・・・。』と応えた。
絶望だった。
今なら子供も居ないし、その男と一緒になりたいと言われ、家庭を棄ててもその男とは離れられないとまで言われた。
最後に『いつから?』かと聞いたら『あなたが東北に赴任する半年も前から会社の飲み会で知り合った男と深い関係になった・・・』と応えました。
そして、一度カレの子供を妊娠して堕胎したこともあると衝撃的な話しもしました。
衝撃が大きかったのに妻は尚も、
『それでもカレとは別れられない・・・愛なんてもんじゃない・・・カレが居ないと死ぬ・・・それでも私を好きならどうか別れてください・・・。』
とまで言われました。
次の休みに自宅に帰ると既に妻はその家には居ませんでした。
『その男に寝取られたばかりか、今はその男と同棲し、ラブラブの新婚さんか・・・』
ムダに独り言を呟きながら家を見渡すと殺風景ながらキチンと片付けて掃除がされていることが、妻はもう、この家には戻らないという意志であり、妻の荷物だけが無かったのがリアリティーでした。
その在りように、一方的に棄てられたんだな・・・と改めて思い知らされましたが、それでも吹っ切れることができずに未練がましく、できるなら直に妻と話がしたい・・・もしかしたら妻が思い直してくれるかと期待さえしていました。
でも、空しくその期待は粉砕されました・・・。
今日、自宅に帰って来てることをメールするとまもなく返事が来たので一瞬、喜んでフォルダを開くとそこには宛先不明の『error』で戻って来たメールでした。
たまらずに電話すると既に私の番号は拒否されていて話中と同じ、プープープーの電子音が響きました・・・。